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疾風と覇王の戦い

「おい、ナギハ」

「はいはーい。っと、クロンちゃん、こんちゃー」

「ああ、うん。こんにちは」

 ピンク髪のツインテ。インテリ風の眼鏡をかけた背の低い少女。赤チェックのポンチョにピンクと白の柄ニーソ。靴はわざわざローファーと言う、防御力を殺した装備のオシャレっ子。

 彼女の名前はナギハ。絶賛ライムとクレナの頂上戦を賭け試合にしている。おまけにドリンクも売っている。

「あの……クエストの時間がもうそろぞろ危なくないですか?」

「ああ、ごめんな、ミュウル」

「おろ、クロンちゃんの新しいこれ? やるねえ」

「違うって。小指立てるのやめろおっさんか。ったく、2人もなんでこんな大事な時に喧嘩を」

「クロンちゃんがそんなだからだよ」

「お前が写真を売るからだろ。いつ撮った」

「他にもいろいろ情報を売ったよ。ライムっちにはクレナっちと君が一緒にいたって情報。クレナっちにはライムっちが君と一緒にいたって情報。戦争はこうやって起こるんだね」

「何もかもお前の計画ってことかよ。どうすんだよ。もう知ってんだろうが、これから忙しいんだよ」

「じゃあこれあげる。杖。そこの子にあげてよ」

「おいナギハ、ドリンク4つ追加!」

「あいよー! じゃ、また帰ってきたら酒でも飲もうよ」

 風のように去っていったナギハに声すらかけられないまま、クロンはため息を吐いた。

 取り敢えず、貰った杖をそのままミュウルに渡した。

「い、良いんですか?」

「良いだろ。それより大詰めかな」

 2人は互いにソードダンスを打ち出すタイミングを狙う立ち回りを取り始めていた。

「2人とも、中々決めませんね」

「決められないんだ。ソードダンス後はディレイがある。だから先に受けきられたり避けられると一気に不利だ。特に剣どうしの戦いだと」

「そんな……」

「それに、一撃必殺がある筋力特化のライムと、二刀流スキルでソードダンスが両手で発動できる敏捷特化のライム。君の将来的なステータス振りをここで決めてみるといいかもね」

「クロンさんは、どちらが勝つと思いますか?」

「スキルやソードダンスを使うためのMPが圧倒的に足りない上にこの場で職業スキルが使えないライムが不利だ」

 結論を出しながらも、クロンは笑んだ。ライムを馬鹿にしたわけじゃない。逆だ。

「そろそろ、決める!」

 両手に持った剣をくるくる回して交差。赤いオーラを身に纏う。

 ほとんど同時に地面を蹴ってソードダンス。

 あまりの速度。あまりの連撃。刃を伴った風、疾風刃が炸裂する。

 しかも両手での運用によって×2

 そう簡単に受けきれるはずもなく、ライムもソードダンスで応戦。

 身体強化系のスキルを使いまくった上にソードダンス。ライムのMPはない。

 ぶつかり合った後、2人とも僅かに体力を残したが、クレナの方はMPをたっぷり残している。

 ディレイでの硬直。観衆も一様に固まり、固唾を飲んで見守った。

 ディレイ解除。すぐにクレナが動いてソードダンス。

 ライムが笑み――ソードダンス発動。

「な……」

「腕輪のお陰!」

 攻撃がぶつかり合う瞬間――

『Battle Finish』

 2人の動きがぴたりと止まり、最初にいた場所に戻された。デュエルが強制終了された。

「そこまでだ。クレナ君。なんでこうなったか、教えてもらってもいいかな?」

 白銀の鎧に金髪の青年、アーサーがゆっくり言葉を落とした。

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