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帰還への熱意

 銃口を向けられたミュウルは一度怯えた様な表情を見せたが、やがて銃口を睨みつけた。

 明らかに虚勢を張っているが、精いっぱい向き合っているようだった。

「どうしても、クリアして叶えたい願いがあるんです」

「それは、なんだ?」

「帰還です」

「なに?」

「私たちがなんでここに連れてこられたのか、知りたい。私、ここに来る前は教会のお手伝いをしていたんです。私がいなくなって、心配も迷惑もかけているはずです。神様が何でここに私を送ったのか知りたいんです」

 ある意味ではみんなが抱いている願い。しかし、その理由があまりに珍しかったせいでクロンは呆けてしまった。

 やがて、クロンは思わず笑いだし、銃をしまった。

「くっくっく……悪い、悪い。了解した。じゃあ、いつ行く? これたぶん誰も参加しないから、ええと……うっわ、あと18時間しかないや」

 クエストには掲載時間が何故か記載されていて、それまでに受注する必要がある。また、受注後にもクエスト遂行時間が決められていて、タイムオーバーになると自動的に失敗となる。

 また、クエスト成功報酬プラスギルドからの報酬がもらえる。便利な制度だ。

 基本的にこれらクエストで生計を立てる職業を戦闘職もしくは攻略組と呼ぶ。

ライムのようにハイエンドなクエストのみを攻略対象とするのをトップ攻略組もしくはハンターと呼ぶ。

ミュウルは今のところ攻略組の卵というところだ。

「あの、私、つい最近まで別のユニットにいたんですけど……追放されてしまって」

「ありがちだな。初心者に誰もやりたがらない魔術師をやらせるっていう。ミュウルの場合、職業適性がきっと高かったんだろうな」

 魔術師。かつて塔矢だった頃やっていたゲームではかなり強かった。だがこの世界で魔術師はあまりに不利だ。

「ステータスを見せてもらっても良いですか? ミュウルさん」

「あ、はい。それと、敬語は不要ですよ。恐らく同じ歳位ですし」

「くすっ、じゃあ、ミュウルさんもよ」

「あ、そうですね……そ、そうね……すみません慣れません!」

 天然なのかな、とクロンもまた苦笑した。

 頭を下げながらステータスを開く器用なミュウル。


――――――――――――――――――――――――

名前:ミュウル

職業:魔術師【S】

ランク:S

レベル:5

HP:200

MP:200

筋力:100

敏捷:200

スキル《魔法倍加》

――――――――――――――――――――――――

「Sランってことは、あのスキルが特別ってことかな」


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