表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/54

Reスタート

新作投稿しました。

お読みいただけるととてもうれしいです

「つは――」

 少年が目を開けると、痛いほど白い空間が広がっていた。一面雪が積もったみたいだった。

 恐らく自分が床に座っていることは分かるが、それ以上は分からない。

「どこだ、ここ……ていうか、魔王は」

『お目覚めだね。クロン君。それとも、畔戸塔矢くろととうや君の方が良いかな?』

 どこからか声が聞こえてきた。懐かしい呼び名に彼は呆けた面を見せた。

「……ああ、すまん。本名で久しく呼ばれてないからわからなかった。ここは……ゲームオーバーかロード画面か?」

 少年――クロンは辺りをぐるぐる見渡して、声の主を探した。

 落ち着き払っている理由はただひとつ。今をゲームに例えている理由と同じだ。

 ついさっき、ようやくデスゲームが終わった。本来の意味での、死の『ゲーム』が。最初からこの混乱を受け入れていた。表情は冷静そのものだ。

『神経系にナノマシンを直接癒着させることで完成した、電子世界と脳が接続するVRシステム。夢の世界。

アニメやライトノベルの世界が実現された。その結果始まったのは何だい?

 ログアウトが出来ない。

 GMもいない。

 ゲームで死ねば本当に死ぬ。そして君はどうなったんだい?」

 ゲームウィンドウ、というより大きめのディスプレイが目の前で開かれた。


 画面の向こうでクロンは肩で息をしていた。剣を握っている手に力が入らないのだ。

 汗で軽く痛む目の前には、筋骨隆々な紫色の巨人が立っていた。

 巨人たちを睨み付ける幾人かの勇士たちもまた、一歩も動けないでいた。

 豪奢な鎧。剣。杖。身を固めた防具も手に握った武器も、まるで新品のようだ。

 巨体の斜め上に表示されたネームプレートには『The Endless』終わりなき者。

 皮肉にも、終わりなき者を倒そうとする勇士たちは、このゲームを終わらせようとしていた。

 そして、最後の最後、雄たけびを上げながら、咆哮に近い叫びと共に、彼らは襲い掛かった。


 最後の一撃を叩きこんだ――


 ゲームは終わった。クリアと言う最高の形をもって。

 しかし、ゲームを終えたのは……クロンではなかった。

 クロンは半ばで殺された。突発的な動きを取ったたった一人のプレイヤー。ゲームの解放者に向けられた攻撃の流れ弾によって。


『これが、君の最期だ。惜しかったね。かなり腕が立つ。

仲間を見つけ、彼らと共に戦い、一緒に旅をして、最後は生き残り戦った者が力を合わせて戦う。良いものだよ、青春というストーリーは何よりも最高の美酒だ。

でも残念だ。あと一歩だったのにね』

「……俺たちは戦った。仲間も……いいや、どうでも良いな。あんな世界でも楽しい時間はあった。信じてた。

 生きていれば、俺たちは自由になれるって。

 だが、一人ずつ死んだ。最後に俺が残って……

 いきなり横から入ってきたやつに全てかっさらわれた。俺たちの夢も希望も、横から」

『嘆かわしいね。じゃあどうする? 君は死んだが』

「天国には行ける予定か?」

『まだ早い。君は死んだが死にきってない。どうだろう、彼らの作った世界で二度目の人生を送るのは』

「二度目?」

『ああ。剣と魔法どころか、君がやっていたゲームで使っていた銃もある。人と言うのは愛らしい。銃は、中々センスがいい』

「銃があるのか? 面白い。だが、デスゲームはもうこりごりだぞ」

『特別な計らいをしてあげるさ。僕も神もどちらでも構わないが』

「特別……まあ何でも良い。んじゃあ、俺を生き返らせてくれるのか?」

『いいや、君は生まれ変わる。クロンとしてもう一度。条件はこっちで決めてもいいかい?』

「背格好は同じにしておいてくれ。射撃や剣で戦う時に体格は同じ方が良い。

あとは、普通にしてくれ。前のデスゲームの時、ゲームバランスを壊す力を持っている奴はとにかく目立っていた。俺たちもな。

 結果、どこからともなく出てきたやつに全部持っていかれた。目立たない方が良いしクリアも嫌だ」

『ああ、良いだろう。というより、君の人生だ。もっと条件を出せ。良いのか? 暗闇で宝箱を空けるようなものだ』

「わかりきった人生はもう、ゲームでもない。宝箱開けて死ぬならゲームだな。まさに」

『長くゲームの世界にいすぎたようだ。ああ、君たちにとってあそこは、もうゲームじゃなかったか。では、君をこの言葉で送るとしよう。ゲーム、スタートだ』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ