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十八話 それは俺の仕業です

「見えてきたぞ! やれやれ、大変だったな」


 ゴブリンたちを倒し、ノルド村を旅立ってから約三日後。

 さらに二つの村々を巡った俺たちは、いよいよ行商の旅を終えてノースフォスへと戻ってきた。

 久々に見る城壁の姿に、御者をしていたトトさんが嬉しそうに声を上げる。

 この一週間、山賊に襲来に始まりいろいろなことがあったからな。

 彼が街を見て安心するのも、当然である。


「む、もうそんなところまで来たか……。早かったな」

「それだけ、コーデリアさんが集中してたってことですよ」

「できるだけ早く、魔力制御を習得したいからな。まだ少しかかりそうだが」


 そうは言いつつも、コーデリアさんの顔はどことなく満足気であった。

 何か手掛かりを得たのだろう、最初のころと比べてずいぶんと余裕がある。

 実際、多少なりとも魔力を感じ取ること自体は出来ているようだった。

 この分なら、魔力制御を習得して鎧が着けられるようになる日も遠くはない。


「そこの馬車、止まれ!」


 正門の前に差し掛かると、衛兵たちに呼び止められた。

 彼らは荷台を覗き込むと、その隅々まで調べ上げていく。

 車輪の裏に至るまで、嫌に仕事が丁寧だ。

 

「身分証を出してくれ」

「ずいぶんと物々しいな。町に何かあったのか?」

「ああ、いろいろとな。詳しいことは話せないが、厳戒態勢なんだ」


 俺たちがいない間に、いったい何が起きたというのだろう?

 少し戸惑いつつも、身分の証である短剣を見せた。

 するとたちまち、衛兵の表情が緩む。


「ふむ、夜明けの剣の冒険者か。通っていいぞ」


 ギルドの信用というのは、なかなか大したものである。

 こんな時でも、ちゃんと短剣が身分証として機能してくれるらしい。

 こうして無事に街の中に入ると、すぐさまトトさんの馬車を降りる。


「いやあ、今回はお世話になったよ! いずれまた、よろしく頼む!」

「はい、こちらこそ!」

「じゃあ、この依頼書を持って行ってくれ。報酬はギルドに払い込んであるから」


 依頼書を受け取ると、そこには大きな赤い判子が押されていた。

 よし、これで護衛依頼は達成だな!

 軽くガッツポーズをすると、パーティ全員でうんうんとうなずき合う。


「やれやれ。ようやくひと段落着いたな」

「疲れたのですー! お金も入ったですし、おうちでゴロゴロしたいのですよ」

「その前に、報告だけ済ませてきちゃいましょう。ゴブリンのこととかもありますし」

「そうだな。あれだけの大ごとだ、早めに報告を済ませておいた方がいいだろう」


 コーデリアさんの言葉に、俺たちはうんうんとうなずいた。

 こうしてギルドへ向かうと、何やらずいぶんと人が集まっている。

 この前に来た時の、ざっと二倍ぐらいはいそうだろうか。

 その割に酒を飲むものなどはおらず、漂う雰囲気はずいぶんと物々しい。


「何でしょうかね、これは……」

「もしかすると、緊急招集がかけられたのかもしれんな」

「それ、ちょっとヤバいのですよ!?」


 青ざめた表情をするファリスさん。

 どういうことなのかよくわからない俺は、すぐさま尋ねる。


「緊急招集って、何なんですか?」

「強力なモンスターの襲来とか、そう言った時にマスターが自らの権限で招集をかけることなのですよ。これが出されたときは、だいたい大変なことが起きるのです……」

「前に出た時は、はぐれワイバーンの討伐だったな。私たちは援護を任されたのだが……地獄だった」

「あの時は……ええ。思い出したくないのですよ」


 何やら遠い目をし始めるコーデリアさんとファリスさん。

 この二人をここまでネガティブにさせるとは……相当大変なのだろうな。

 俺はたまらず、ごくりと唾を飲む。


「ま、まあ聞いたわけではないですし! さっさと報告を済ませて、お暇するのですよ」

「そうだな! 早くしよう!!」


 コーデリアさんたちに急かされ、俺は急いでカウンターへと向かった。

 するとここで、ロロナさんが奥からやってくる。

 彼女は俺たちの姿を見つけると、ほっとしたように笑みを浮かべた。


「エイトか! 無事に戻ったのだな!」

「ええ、まあ。そっちこそ、いったい何があったんです?」

「うむ。これからそのことについて、皆に伝えるところだった。そなたたちも聞いていくがいい」

「……わかりました」


 マスター直々にこう言われてしまっては、もはや逃れるすべなどありはしない。

 俺たち三人は近くの椅子に集まって腰を下ろした。

 それを確認したところで、ロロナさんが咳払いをして言う。


「三日ほど前、ノルド村周辺で大規模な魔力爆発が起きたという情報が入った。詳細はまだ不明だが、ジークたちが調査している森の異変のこともある。我が夜明けの剣は、ノースフォスの安全を守るために総力を挙げてこの事件の調査を――」

「ん? ノルド村?」


 ちょうど、俺たちが行商で立ち寄った村である。

 しかも三日前と言えば、ちょうど山賊がゴブリンを率いて攻め込んできた時だ。

 それで魔力爆発と言えば――


「俺の魔法じゃないか……!」


 恐らく自分の魔法であろう報告に、俺は頭を抱えるのだった――。


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