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十三話 旅に出よう!

 翌日。

 朝の早いうちにギルドを訪れた俺たち三人は、無事に狙いだった護衛依頼を受けることができた。

 辺境の村々を回る行商人の護衛で、期間は約一週間。

 食事付きで、報酬は一人につき金貨一枚という契約である。

 取り立てて割のいい依頼というわけではなかったが、依頼人の評判が良いということでおススメされた。

 護衛依頼のような期間の長い依頼は、依頼人との相性も相当に重要らしい。


「うわ、どの馬車だろう……!?」

「これは困ったのですよ!?」


 お昼前。

 待ち合わせ場所に指定された広場にたどり着くと、そこはもう馬車でいっぱいだった。

 どの馬車も、これから街を出立するのであろう。

 それぞれに慌ただしく荷物の積み込みをしていた。

 指図をする商人たちの怒号にも似た声が、そこかしこから聞こえる。

 

「おーーい、こっちだーー!!」


 俺たちが周囲を見渡していると、一人の男が声をかけてきた。

 小太りで屈託のない笑顔を浮かべた、三十半ばほどの人物である。

 額に浮いた汗をぬぐう姿は、なるほど、評判通りに人がよさそうである。


「どうも、こんにちは! トトさんで間違いないですか?」

「ああ、そうだ。君たちが、ギルドから派遣されてきた冒険者さんだね?」

「はい! 俺はエイト、こっちがファリスさん。で、後ろにいるのがコーデリアさんです」

「よろしくお願いするのです!」

「一週間ほどだが、よろしく頼む」


 それぞれに頭を下げる俺たち。

 トトさんはうんうんとうなずくと、満足げな顔をする。


「こちらこそ、よろしく頼むよ。最近は護衛も人手不足でね、受けてくれて助かった」

「いえいえ。それより、どうして俺たちのことがわかったんです? 冒険者っぽい人なら、他にもたくさんいますけど」


 周囲を見渡せば、商隊の護衛らしき冒険者や傭兵がたくさんいた。

 顔見知りというわけでもないのに、あの中からよく俺たちを見つけられたものである。

 するとトトさんは、コーデリアさんを見て言う。


「そりゃあ、彼女がいたからね。結構有名だよ」

「あー、確かにわかりやすいのですよ。とっても!」

「……くっ! 魔力制御を覚えたら、絶対に鎧をつけてやるからな! ついでに兜もかぶってやる!」


 必死に身を小さくしながら、コーデリアさんがつぶやく。

 ……こうやって、恥ずかしがれば恥ずかしがるほど逆効果だと思うんだけどな。

 肩を寄せることで、いっそう強調された胸の谷間。

 その場にいた男たちの視線は、そこに釘付けになっていた。

 ちなみに、俺はほとんど見ていない。

 見ていないったら、見ていないんだ。


「さあ、出発するから荷台に乗り込んでくれ!」

「はい!」


 トトさんに促されるまま、馬車の荷台へと乗り込む。

 準備が良いことに、人が座るためのクッションのようなものがきちんと用意されていた。

 このあたりの気遣いも、ギルドがおススメしてきた理由なのだろう。

 

「出すぞ!」


 手綱が風を切り、馬がいなないた。

 車体がゴトゴトと揺れて、車輪がゆるゆると回り始める。

 こうして俺たち三人は、トトさんとともにノースフォスの街を出発するのだった――。


 ――〇●〇――


「むむ……本当に、私の中に魔力なんてあるのか?」

「ありますよ! しかもかなり多いです!」


 ノースフォスの街を出発してから、数時間後。

 俺はコーデリアさんに、魔力制御の指導を始めていた。

 ファリスさんと違って、コーデリアさんは魔法に関してまったくの素人。

 魔力を感じ取ってもらうだけでも、なかなか大変である。


「うーん、うーん……!」

「そろそろ、一度休憩にしますか? あまり根を詰め過ぎるのも、良くないですし」

「ダメだ! 私は一刻も早く、魔力制御を習得せねばならん!」


 休憩に誘ったのは、完全に逆効果だったようだ。

 コーデリアさんは眉間にしわを寄せると、ますます訓練に集中する。

 先ほどの一件が、どうやら相当に気に障ったらしい。

 

「これは、しばらくそっとしておいてあげるのがいいのですよ」

「そうですね」


 ほっと息を吐くと、俺は幌の外を見やった。

 すでに、ノースフォスの街は地平線の彼方へと消えている。

 草原と森の織り成す牧歌的な風景が、どこまでもどこまでも広がっていた。


「いい景色ですねー! 平和って感じで!」

「そうなのです? 田舎って感じで、私はちょっと退屈なのですよ」

「いやいや、これがいいんだ」


 俺が活躍していた時代は、魔王を筆頭とする魔族の活動が活発な時代でもあった。

 おかげで、こういった平和な風景はなかなか見られるものではなかったのだ。


「ところでこの馬車、いったい何を運んでるんですか? ずいぶん、荷物少なめですけど」


 俺は荷台の端に積み上げられた木箱を見やった。

 これから行商に出かけるという割には、ずいぶんと量が少ない。

 辺境の村々を回るというのに、まさか貴金属か何かでも積んでいるんだろうか?

 するとトトさんは、笑いながら答える。


「魔水晶だよ。それだけあれば、金貨五十枚にはなる」

「へえ! そりゃあ凄い!」

「けど、そいつを運ぶには多少のリスクがある。軽くて金になるから、盗賊どもに狙われやすいんだ。宝石と違って、流通量が多いから売ってもまず足がつかないしな」


 そう言うと、何やら警戒する素振りを見せるトトさん。

 ギルドでも、最近は盗賊の被害が多いって言ってたなぁ……。

 それもあって、俺たちが雇われたわけなのだけれども。


「被害が増えてると言っても、山賊なんてそうそう出るものじゃないのですよ。このあたりの街道は、定期的に見回りもされてますし」

「だと、いいんですがねぇ……」

「嫌なのですよー! そんなこと言ってると、ホントに出るような気が――」

「ヤッホーーー!! そこの馬車、止まれェ!!」

「はいなのですッ!?」


 いきなり、近くの森から響き渡った奇声。

 慌てて荷台から顔を出すと、そこには――


「さ、三人乗りですッ!?」

「たいした馬術だな……!」

「そこに突っ込むんじゃねェ!! 数が足りねえんだよ!」


 馬一頭に三人ずつ乗り込んだ、盗賊らしき集団の姿があった――。


週間五位まで、あと1000ポイントほどのところまで上がってきました!

より評価をいただけるように、頑張ります!

少しでも面白いと思った方は、下の評価欄をポチっとしていただけると幸いです。

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