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3話

「な、なんのことですか?」


 いきなり雰囲気の変わったソウタにアリアと、ついでにミツキも戸惑いの表情になる。

 が、周りはそうでも無いようで、アリアをきつく睨みつけていた。


(なんなの? この状況は?)


 ミツキは戸惑うものの、ソウタは話を続ける。


「俺はここに来る前に神様に出会って、そして聞いたんだ。お前の目的は俺たちという大きな戦力を手に入れて、あんたが他の国々に侵略戦争を仕掛けようとしてるってことをな!」

「な、何をおっしゃっているのですか! そんなわけありません!」


 なんだか雲行きが怪しくなってきた……とミツキは戸惑う。

 神様、それもヤマトタケルノミコト様からの言葉ならかなり信憑性が高いことだろう。

 さらに言えば、ネット小説の異世界召喚ものも召喚した側が悪者というのはこれまたテンプレ的な展開だから、そのあたりも割と信用できる気はする。


(でもこのタイミングで言う必要はあるのだろうか?)


 ミツキはそこが問題だと思った。

 何故ならそれが事実だったとして、そこに今触れてしまえば相手が逆ギレして強制的に従わせようとするかもしれない。

 それにもしかすれば嘘なのかも知れないのだから、この展開はかなり危ないのではなかろうかと思ったのだ。


 だが、そんなことは心配していないとばかりにソウタが言う。


「まあ惚けてもいいさ。俺たちは勇者なんだ。勇者としてあなたを俺たちの力でねじ伏せて調べればいい。それに、もし君の話が本当なら、その辺りの証拠はないと見せてくれてもいいんですよ魔王様?」

「「なっ!?」」


 またしてもアリアとミツキが驚く。

 そしてミツキはそういえばアリアのステータスを確認していなかったとミツキが現段階で使える唯一の力でアリアの情報を確認する。


=====================================

[ネーム]ファウルハイト(男:??歳)

[クラス]《魔王Lv.58》

[スキル]怠惰

[タイトル]【怠惰の魔王】

=====================================


「──!?」


 なんという事だろうか、女性にしか見えなかったアリアが男だったのだ。注目すべきところはそこではないが……

 ミツキが驚きで固まっていると、ソウタが自信満々に話し始める。


「俺には〝真実の眼〟というスキルが存在するからたとえ姿なんかを偽装したってバレバレだよ。その姿も『幻惑の指輪』ってのを使ってるみたいだし。この場所も幻の空間のようだからね」


 ミツキが指輪を確認して見ると確かにその通りだった。オボロのこの〝真実の眼〟顔負けの鑑定能力には謎が深まるばかりだが、ともあれ相手が魔王だというのはわかった。


 そして魔王ファウルハイトは完全にバレていると諦めたのだろう。

 その見目麗しい出で立ちが霞のように消え去り、青い肌にくすんだ灰色のロン毛に髭も伸ばしまくりというとんでも無い容貌をした細身の男が現れた。

 広間も黒と紫を基調としたいかにも魔王城の玉座の間というような場所に戻っている。


「まさかバレるとは思いませんでしたよ」

「さっきも言ったろ? 俺たちは神様に会って話を聞いてきたんだって」


 自分は会ってませんけど、とミツキは内心毒づきながらも、この状況をどうしようかと思っていた。

だって異世界召喚されたと思ったらいきなりvs魔王様なのだ。

 他の武神から加護をもらった生徒たちならともかくザ・一般人といったミツキにはハッキリ言ってこの状況は最悪である。


「クククククッ」


 突然奇妙な笑い声が響く。

 もはや逃げることを選択したミツキはいったいどのタイミングで抜け出そうかと思っていると、突然魔王が笑い出したのだ。


「何がおかしい? お前はもう終わりだ。何せ、自分の懐に神の加護を受けた存在を54名も迎え入れてしまったのだからな。それに──」


 ソウタが目を閉じると、眩い光を放ってその身体を金を基調とした騎士のような鎧に包まれて、両手には二本の神聖な光を放つ剣が握られていた。


「このように聖剣もある。お前にもう勝ち目はない」


 まさに勇者というような雰囲気のソウタと、周りもどういう原理かそれぞれがそれぞれに適した格好に、いつの間に変身したのか変わっており、ミツキはこの急展開にひたすらに慌てながら、一つだけ思った。


(フラグを立ててるんじゃ無いよ!)


 ソウタの〝もうお前に勝ち目はない〟なんて発言はフラグ以外の何者でも無い。

 ミツキは内心「アホか!」と毒づいて、即刻この場を離れることを決意した。──が、逃げ出す前に状況は動き出してしまった。


「まあ確かにその剣で刺されれば私はひとたまりもないでしょうね。────でも、誰が私一人だと言いましたか?」


 そう魔王が入った瞬間足元にいくつもの魔法陣が展開され、その魔法陣から明らかに序盤に出てきていい奴らでは無いモンスターたちが出現したのだ。

 具体的に言えば、ミノタウルスやアラクネなどなど、他にも様々なモンスターたちがいて、その数は両手両足よ指では到底足りない数、はっきり言えば生徒たちの倍以上はいるだろう。


「あなたたちの相手はこのモンスターたちにしてもらいますよ」

「くっ、卑怯な」

「卑怯で結構。私は弱いですからね」


 鞭を取り出したファウルハイトはニヤニヤと笑う。

 ソウタは不機嫌そうな顔をしていたが、すぐに気を取り直したように右手に持った剣の切っ先をファウルハイトに向けて言った。


「まあいい、このモンスターたちを倒してお前も倒す! みんな行くぞ!」

「「「「「おおっ!!」」」」」

「クククククッ、楽しませてくださいよ」


 こうして召喚そうそう魔王との戦争が始まった。


 この時いきなり魔物たちに囲まれてしまったミツキはこう思った。


 ────ほんと、どこかよそでやってください。

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