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33話

「なっ! こ、これは!?!?」


 エミリーさんの驚きの声が冒険者ギルド内に響く。


「はっ! す、すみません、取り乱しました……」


 見た目はおっちょこちょいな雰囲気でありながら、実は非常に冷静で落ち着いた性格をしているエミリーが声を出したことによってギルド内にいた多くの冒険者たちから注目を集めるが、すぐにエミリーが気を取り直して謝ったので、視線がそれる。


 実はこの冒険者ギルドで一番人気のエミリーだが、とある事件の時にその存在の恐ろしさを見せつけた要因があったために不用意な視線や態度などはとらないようにしているのだ。冒険者ギルド内での暗黙の了解である。


「いえ、別に問題ないですよ」


 ミツキはその辺りの事情は知らないが、日本人だけに基本的には(・・・・・)丁寧な対応を心がけているのでこのような返答になる。もちろん驚くのは無理もないだろうなというのもある。というのも──


「まあゴブリンキングとオークキングの魔石が出てくれば驚くのは当然ですよ」


 ミツキは自分が今回持ってきたものを見ながらそう言う。


「いえ、こちらも取り乱して申し訳ありません」


 ミツキの言葉に対してもエミリーは首を横に振って否定するが、それでもやはりモンスターの中でも〝キング〟がつく存在がいたというのは驚きだろうし、仕事をするうえでも大変だろうとミツキは判断している。もちろん、その判断はラノベやネット小説からきている。


 エミリーの否定に対してミツキも日本人の性質上「いやいや」とか「別に……」などと言いそうになるが、これでは話がまるで進まないのでぐっとこらえて、


「とりあえず、依頼の完了手続きをお願いしてもいいですか?」

「はい、わかりました。ただ、一度この魔石の件についてはギルドマスターと話をしたいと思っていますので、しばらくお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

「了解です」


 さすがは一番人気の受付嬢というところか、その後は冷静に仕事を処理していくエミリー。


(あの人メチャクチャ仕事できるよな。こういう人はギルドマスターを考えると副ギルドマスターとかやってそうな感じだ)


 ギルドマスターの執務室がある二階に消えていくエミリーを見ながらそんなことを考えるミツキ。


「ああ、エミリーは受付嬢だが副ギルドマスターでもあるぞ。よく気がついたな」


 ミツキはその後しばらくして呼ばれた執務室内で告げられた。


「へ、へえ、そうなんですか。それってものすごく仕事が多そうなんですけど何か理由があったりするんですか?」


 あっさりと告げられたエミリー=副ギルドマスターの情報に、戸惑いながらも質問を重ねる。


「受付嬢をやることで冒険者の現状を秘密裏に確認するのがエミリーの仕事だから、これが副ギルドマスターとしての仕事になるだろうな。それ以外の事務作業なんかは他のメンバーが優秀だから特にやることもないし、俺も副ギルドマスターとしてのエミリーもほぼ飾りみたいなもんだ。まあハンコを押す作業は多数あるけどな」


 ガハハハッと笑いながらギルドの内情を説明するモットー。そんなことをペラペラと話していいものなのだろうかと疑問に思っているとベチンッとなかなかにいい音をモットーの輝く頭が鳴らす。


「……私がいない間になぜそんな簡単にギルドの内情を話しているのですか」

「おう、戻ってきたのかエミリー」

「無視ですか。全くこの人は……」


 実は先ほどまで依頼完了の手続きのためにエミリーは席を外していたのだ。


「ミツキ様、依頼完了の処理をしましたのでギルドカードをお返しします。それとこちらは報酬となります」

「はい、ありがとうございます」


 ミツキはエミリーからギルドカードを受け取る。


 このギルドカードはギルド内で依頼を完了すると、その完了した依頼の内容などを専用の機械で記録しておく機能が備えられている。例えばミツキの場合はゴブリン討伐、オーク討伐、薬草採集が記録されている。


 このため、別の冒険者ギルドなどに行った時も、ギルドカードを解析することによってその冒険者がやってきた仕事内容などが分かるため、それをもとにして受付嬢が依頼を凱旋することが出来たり、あるいは自分の功績を偽ったりすることを防止したりすることが出来るのだ。


 ちなみにこの情報は製作者のアイリスから聞いたものである。他にもギルドカードの偽装防止機能などももちろんついているし、そのほか非常時には探知機能までついているというのだから非常に恐ろしいことである。ミツキがアイリスのものづくりのレベルの高さに改めて戦慄した瞬間だった。


「さて、じゃあ本題に入ろうか」


 ミツキがギルドカードを受け取った瞬間にモットーの雰囲気が真剣なものに変わる。この雰囲気の瞬間的な変化は流石は【到達者】と言ったところだろう。


 ミツキとしてはこの落差に少々ついてこれないが、それでもこのギルドマスターの執務室に呼ばれている時点で、今回の話題がそれなりに重要であろうと予想していたためにすぐに思考を切り替えることが出来た。


 そしてその肝心の本題とはもちろん、


「まずは俺がゴブリンキング、それからオークキングと出会った話から話しましょう」


 そう、ミツキがゴブリンキングと遭遇したあと、ミツキはなんとなく一週間ほど常時依頼をぶっ続けで完了させていったのだが、そこでさらにまたオークの巣でも同じような事態に陥ったことが問題だったのだ。


 まあ、オークキングもあっさりとイザヨイたちに屠られたので、むしろミツキはほとんど働いていなかったりするのだが……


 ともあれ、これは冒険者たちからしてみれば由々しき事態だ。

 今回はミツキがいち早くこの問題に気がついてすぐに殲滅できたから良かったが、もしもこのまま放置してしまっていればどんどんそれぞれのボスが戦力を集めていき、モンスターの大氾濫などが起きた可能性もあったのである。


 そういう理由からミツキは素直に話をしたが、


「うーん、突然モンスターが強くなった、か……」

「何か問題が?」

「いや、事例がないだけに警戒すべきことかなと思っただけだ。と言っても現状ではわからないことが多過ぎて対策の取りようがないがな」


 と、結局何もわからずじまいで終わってしまった。


 その後、


「あ、そういえばなんで一週間も受付に依頼完了を伝えずに依頼を続けてたんだ? 驚くだろう?」

「え? なんとなく受つけに何回も行くのめんどくさいなぁと思っただけですけど?」

「…………」


 そんな一幕はあったものの、盗賊の依頼の方がどうなっているかなど真面目な話をしたミツキは冒険者ギルドを出ると、そこには1人の待ち人がいた。


 その人物とは、


「待ってたわよミツキ。一緒にご飯を食べましょう?」


 なんだかものすごく可愛らしい格好をしたアイリスだった。

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