2話
自分のステータスが嫌な感じに異常だったことにミツキは内心で叫んでしまった。
[クラス]はゲームでは職業や役職など、他のゲームでいうなら「ジョブ」などと同じようなものだ。
そして[スキル]はゲームではよく出てくる特殊な力を発揮してくれるもので、[タイトル]は称号に近いものだろうとミツキは判断した。
そう判断して見ると、ミツキはどこまでも影が薄いと突きつけられているのだ。
(なんだよこの〝存在希薄〟って!! スキルで評価されるほど俺の存在感はないとでもいうつもりか!?そんなにですか!? しかもなんだよこのタイトルたちは! なんで存在感についてこんなに罵倒されるわけ!? 【異世界人】でいいじゃん!! なんでわざわざ【影が薄い】って付け加えなきゃいけないんだよ! つか俺は神様にさえも存在を気づかれなかったの!? もうツッコミどころ多すぎてどうすればいいのかわかんねぇよ!!)
ミツキは全力で嘆いた。
しかもこのステータスの情報は選んだものをより詳しく見たいと思うとその情報が出てくるのだ。
例えばこんな感じ。
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〝存在希薄〟(オリジナルスキル)
存在感が希薄になり、他人に認識されにくくなる。また、周りに存在感の強い人間がいるときはその効果が強まる。常時発動型で解除不能。
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つまりミツキはずっと存在感が希薄であるということだ。
なお、ミツキが自分のステータスについて心の中で四つん這いになっている間に様々な説明がされていて、クラスやスキルなどはオボロの想像通りだったのだが、1つ問題が発生した。
それは、異世界人は何らかの特殊なクラスを持っているということだそうだ。
例えば先程から仕切り役をしている男子生徒は……
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[ネーム]ソウタ・ハヤカワ(男:18歳)
[クラス]《勇者Lv.30》《神聖剣士Lv.30》《異世界人Lv.30》
[スキル]二刀流・神聖剣・魔法剣・光属性適性・真実の眼・超成長・言語理解
[タイトル]【武神の加護を賜りし者】【勇者の系譜】【神聖なる者】【異世界人】
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もはやチートを通り越してバグである。
(なんか見たことあるスキルもたくさん持ってるし……)
レベル差もあってミツキでは比べるべくも無いような状態だ。
ちなみにミツキには何故かステータス全てが見えたが、通常は《鑑定士》なるクラスがなければステータスを覗くことは出来ないらしい。
何故自分はステータスが見えるのかミツキにも分からなかったが、今注目すべきはそこでは無い。
(これは俺、最弱として悪目立ちしそうだな……)
ミツキは他の生徒たちのステータスも不思議な力によって覗き見した結果ある事実を発見したのだ。
それはミツキ以外が【武神の加護を賜りし者】というタイトルがあるということだ。
そしてミツキは他の生徒たちの発言とこれらの情報から、他の生徒たちはこの世界に転移させられる前にヤマトタケルノミコトに会って、そこで加護をもらったのだろうと理解した。生徒たちの落ち着きようも、神様と出会って状況説明されたからだろうと判断できる。
しかし、どうやらヤマトタケルノミコト様はミツキの存在に気がつかなかったらしく、加護を受けられなかったのだ。代わりに【神さえ気がつかない存在感の男】のどという不名誉極まりないタイトルが付いているが……
そういうわけで、どう考えてもミツキは弱い方で目立ってしまっているのだから、これは小説などではイジメに発展するパターンである。
(うーん、目立ちたい俺からしてみればまあ、悪目立ちでも悪くは無いけど……)
さすがに能力に違いがあり過ぎてこの状況でイジメを受けるのは命に関わる部分があるだろう。
それ以前に目立つなら悪目立ちでもいいと思っているオボロの精神状態がやや心配であるが……
(そう考えると、おそらくこのあとやって来るであろう水晶かなんかのステータス確認は避けたいところだよなぁ……)
ミツキはネット小説の中でのテンプレ的展開を想像してナイーブになる。
もちろんミツキの存在感の無さなら最大限息を潜めて影にいるだけで、望んだ特性では無いにしろステータス確認は避けられると、不本意ながら本人自身が判断している。
しかし、それならそれで、その後にこの城に止めてもらえるという状況になった場合、認識されていないミツキはどの部屋にも泊まることは出来ないだろう。
(それにもしかすればそのタイミングでメイドさんが出てくるかもしれないし……)
ミツキもその辺りは健全な男の子である。
女の子が合法的にご奉仕してくれるメイドさんは男にとって夢なのだ。それだけは捨てられない。
そんな風に残念な方向でミツキが真剣に悩んでいると、圧倒的な強さを手に入れていたまとめ役のソウタがアリアに話しかけた。
「なるほど、力があるのは理解したよ。それで? 俺たちを呼んだ本当の理由はなんなんだい?」




