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16話

前話で、アイリスの転移の指輪についての価値を変更しました。

さすがに一般人でも手に入ってしまう価格設定はないかなと思ったので。

ただ、今の所物語に影響はないので、そこまで気にすることではないです。

 冒険者ギルドの中に入ると、そこは小説などのテンプレと全く同じような場所だった。

 具体的に言うなら、正面に綺麗な受付嬢さんがたくさんいる受付があって、右手には依頼の紙が貼られた掲示板が、左手には酒場が展開されていた。

 地球では未成年のミツキとしてはお酒の匂いが結構きついが、まあ仕方ないかという思いでまっすぐ受付嬢がいる場所に歩いていこうとする。


「ぐぇっ!」

「ちょっと、待ちなさいな」


 しかしなぜかアイリスに止められてしまった。うめき声をあげた理由はアイリスから与えられたミッドナイトブルーのローブのフードを後ろから引っ張られてしまったからだ。

 ちなみにミツキの服装はアイリスに一時的にひん剥かれた制服だ。一見普通の制服に見えるが、かなりの耐久力を誇り、一部が魔改造されている。

 その効果を聞いたときにミツキはちょっと冷や汗をかいてしまったのだが……少なくともこの魔改造の効果を発揮しないようにしようとミツキが思うくらいには恐ろしいものだった。


「……なんで止めたんだよ」


 ミツキが文句を言うと、アイリスは肩をすくめる。


「あなたが先に行こうとしたからよ。ここは私についてくる形が必要だから、黙って付いてきなさい」

「?」


 アイリスの説明にテンリはよくわからずに首をかしげるが、この場での常識を知っているのはどう考えてもアイリスなのですぐにうなずく。


 そのままアイリスについて行くと、アイリスはわざわざ受付の一番列が長いところに並んだ。


「なんで列が一番長いところに?」

「それはこの冒険者ギルド一の受付嬢に話を聞いてもらうためよ」

「?」


 冒険者ギルド一の受付嬢というのは一番美人ということだろうか? でもその人物に見てもらったとして何か得があるのだろうか? と首を傾げるミツキ。

 その様子にアイリスはあきれたように説明する。


「あのねぇ、冒険者は受付嬢と持ちつ持たれつの関係なのよ? いい受付嬢はその冒険者にあった仕事を凱旋してくれるし、そのおかげで冒険者の方はランクを上げて、たくさん報酬を獲得できるようになる。逆に受付嬢は冒険者がしっかり仕事をしてくれるとギルドの収益も上がるから受付嬢にもメリットがある。こういう関係が冒険者ギルドを運営させているのよ」

「つまり、いい受付嬢に気に入られると俺の目立つという目標に近づける可能性が高くなるということか」

「まあ、有り体に言えばそういうことね」


 どこの世界も誰かと誰かの協力によって世界というのは回っているのだなと感心するミツキ。

 二人はそんな風に会話していると、気がつけば順番が回ってきており、アイリスが言うこの冒険者ギルド一の受付嬢と対面した。


 そこにいたのは茶髪に茶色い瞳の素朴な印象を受ける可愛らしい18歳くらいの少女だった。一見するだけではどちらかと言えばおっちょこちょいな受付さんでは? という印象を受けるような見た目の少女に、アイリスが話しかける。


「こんにちはエミリー」

「は~い、こんにちはですアイリスさん。今日はどのような依頼を?」

「いえ、今日は依頼じゃなくて、彼が冒険者登録したいみたいだからお願いしたくて」

「彼ですか? 一体どこに?」

「へ? 私の後ろにいるじゃない?」


 なじみの二人なのか、途中までは流れるように会話していた二人だったが、エミリーと呼ばれた受付嬢がミツキを見つけられず、そのことにアイリスは戸惑ってしまう。

 ミツキは「あ~、またですか~」と思い苦笑する。これも地球でミツキが良く経験したことだ。例えば外食に仲のいい友人と5人ほどで行ったとき、「四名様ですか?」と聞かれることが多々あったのだ。

 ミツキは〝存在希薄〟のスキルに内心毒づきながら、エミリーさんに話しかける。


「えっと、自分が冒険者登録しに来たものです」

「え!? 今一体どこから──」

「最初からいましたよ?」

「そ、それはすみませんでした。冒険者登録ですね、少々お待ちください」


 この「最初からいたよ?」という言葉も残念なことにミツキの定番の言葉になってしまている。


(……もしかして俺、異世界でもこれをずっと言い続ける必要があるのか?)

「えっと、冒険者ギルドに登録するには試験を受けていただく必要があります。まずはこちらに氏名、性別、年齢、あとは得意な事などを書いてください」

「あ、はい」


 ミツキが内心で自分の影の薄さに鬱状態になりそうなところでエミリーから紙とペンを渡されたので、それに記入する。


(あれ? なんで俺この文字かけるんだ? あ、〝言語理解〟のおかげか)


 明らかに自分が見たことがない言語をあっさりと書けていることにテンリは不思議に思ったが、スキルのおかげだと気づき、まあ書けて困ることもないと判断してサラサラと適当に書いていく。


「はい、確認しました。それで試験なのですが……」

「ちょっといいかしら?」

「はい、なんでしょうアイリスさん」

「私から彼が〝ランク3〟にふさわしいと推薦をしたいのだけど」

「え? 〝ランク3〟ですか? わ、分かりました。ではそのレベルでの試験にさせていただきます」


 テンリから用紙を受け取ったエミリーは話を進めようとするが、そこでアイリスが割って入り、さらにアイリスが言った言葉に目を見開く。それでもすぐに反応して仕事を全うするのは流石この冒険者ギルド一の受付嬢と言える。


 ミツキとしては「どういうこと?」と一人ついて行けなかったが、


「さて、いきなり高ランク冒険者からのスタートのチャンスよ。戦闘試験しっかりやってよね?」


 アイリスのこの言葉に「試験で無双するパターンキタァ!」と期待に胸を躍らせるのだった。

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