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15話

「おお、ここが……」


 時刻は昼を過ぎたころ、ミツキはアイリスがいたアルテナという町にやって来ていた。

 そこは中世ヨーロッパ風の建物が並んでいて、さらにファンタジー世界で定番のケモミミっ子たちやドワーフなどもいるようだった。


「本当にファンタジー世界なんだなぁ」

「まあ、私たちからしてみれば日常だけどね」


 ミツキが感動しているところに、〝人化〟の効果で身長150センチくらいの大きさになったアイリスが苦笑しながらそう言う。

 髪の色や瞳の色がどちらも赤に近くなっていた。これは紫というのが不吉なものを表すと言われているからということだ。


 この姿もまた美しくて、思わずミツキは見惚れてしまった。ちなみに胸も非常に大きくて、思わずそちらに視線が言ってしまうのを今もミツキは我慢していたりする。


「まあ私としては、あまりこれを日常としたくはないのだけど……」

「ん? どうかした?」

「いえ、なんでもないわ」


 ふとアイリスがそのつり目がちな瞳に悲しさを映したような気がしたミツキだったが、すぐに首を振ったので「そっか」としか言えなかった。


「……それにしてもアイリスの転移の指輪はすごいな」


 少し不思議な沈黙が発生したのを気にしたミツキが話題として、人に変身したアイリスの右手にある指輪を見る。


「これ?」

「そう、それ」


 ものすごく綺麗なというほどではないが、確かな品を感じさせる銀色の指輪には複雑な模様があって、この模様が銀色の指輪に特殊な能力をもたらしている。

 それは──


「まさか転移する能力があるなんてなぁ」


 ミツキはしみじみとつぶやく。


 そう、実はアイリスが付けている指輪はマーキングをした場所に転移できる能力があったのだ。この二人がこのアルテナという街にいる理由はこの指輪の能力を使ったからである。

 このような特殊な力を宿した道具は魔道具として有名だが、アイリスの持つ指輪はいくつかの制限はあるものの非常に強力で、市場に出れば一般人が何十年かけて稼いだお金全てを使っても、足りないくらいの金額がする。


 そしてその指輪を作った本人たるアイリスは褒められてうれしいのか、「ふふん」とその大きな胸を張る。


「まあ私にかかればこれくらいのことはできるわよ」

「そうか~」


 ミツキとしては生産系やアイテムでチートする物語があったりするから、その能力が実に羨ましいと思う。

 その分尊敬が強くなったりして、余計にアイリスの機嫌が良くなるので、案外この二人は相性がいいのかもしれない。


「あれ? それがあれば魔王城から速攻で逃げられたんじゃないの? 気絶なんかしなくても」

「うっ、そ、それは、あんなに急に魔王城に呼ばれてしまったらそれは流石に驚いてしまうでしょう? 私からしてみれば魔王の強さなんてそれこそ嫌なくらい知っているから、あの状況で驚くなという方が無理な話よ。ついでにあなたのクラスについても狂人が多いんだから、そんな人物が近くにいたら終わったと思うしね」

「そ、そうだね」


 アイリスが少し気まずそうに怒涛の言い訳を行なったので、ミツキはただ頷くしかなかった。


「さて、じゃあそろそろ冒険者ギルドに行きましょうか」

「うん、そうだね」


 若干頰が赤いアイリスがややテンション高めにそう言って、冒険者ギルドへと移動を開始した。


「そういえば、あなた武器は持ってるの?」

「え? 武器?」


 冒険者ギルドに向かっての道程の中で、ミツキが町の防具屋とか雑貨屋、武器屋などを遠目に眺めているところでアイリスから突然そんな質問が出てきた。


 なんでそんな話に? という顔をしているミツキに、アイリスから説明が入る。


「冒険者になるためには一応最低限の試験があるのよ。もちろん戦闘試験がね? だから道具が必要でしょ?」

「貸し出したりとかしないのか?」

「そんなの、冒険者っていうのは戦う職業なんだからちゃんと自分でそろえるようじゃなきゃダメでしょう? それに新人の冒険者は良く絡まれるのよ。だから、せめて自衛の意志を出しておく必要があるわ」


 ミツキが小説で呼んだ知識から質問するも、そんな答えが返ってきてなるほどと納得する。──が、そんなミツキの反応を見ながら、アイリスはニコリと笑ってさらに付け加える。


「まあぶっちゃけてしまうと、いい道具を手に入れる能力とかも試験に絡んできたりするのよ。世の中にはそこまで身体能力が高くなくても、巧みな道具の扱い方とかそういうので有名な冒険者になったりする人もいるし、それにその人物がどの程度の資金力があるのかとか、そういうのもギルド側としてはある程度管理できると嬉しかったりするみたいだから」

「な、なるほど。でも自分は大丈夫だ、それと貴重な情報ありがとう」

「どういたしまして」


 そんな裏話的なものを出してもいいのかとミツキは思ったが、情報自体は非常に有益だったので素直に受け取る。


「でもなんでそんなことを知っているの? だいぶ裏情報的なものだよねそれ」


 ただ何となくその情報がどこから来たものなのか気になって質問するミツキだったが、これがとんでもない地雷だった。


「そりゃあ私が道具の力で上位の冒険者に食い込んだ張本人ですもの」

「え?」

「今は冒険者ギルドの本部でマスターをやっている人間が試験官だったんだけど、その人物を道具の力だけでぼっこぼっこにしてやったのよ」

「ま、またそれはどうして」

「そりゃあ、当時は頑丈な肉体こそが正義というような考えを持っていたバカが私に絡んできたから、身の程を教えてあげただけよ」

「へ、へえ~。まあ脳筋は良くないよね、うん」

「あら、ミツキとは話が合いそうね」

「そ、そうだね」


 結構過激な過去をお持ちなアイリスにちょっとだけ怖いとミツキは思ってしまったが、出来る限り取り乱すことの無くそう答えた。もちろん内心ではアイリスは絶対に怒らせないようにしようと思っている。


 そんなヒヤリとするような会話があったものの、その後は終始穏やかな会話(と言っても冒険者に関する情報なので、それが穏やかというのは怪しいが)を展開したり、仲良く出店の商品を買い食いしたり(もちろんミツキはお金がないのでアイリスのおごりという形だが)しながら二人は冒険者ギルドの大きな建物の前にやってくる。


「おお、ここが」

「さ、さっさと登録を済ませるわよ」

「あ、うん」


 その建物の大きさに感動していたミツキはアイリスの言葉を聞いて中に入るのだが、


(さて、テンプレ的な展開が起こるといいんだけどなぁ。目立てるし)


 実に残念な考えを胸中に秘めていたのだった。

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