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0話

 桜舞う春の季節。


 とある学校では毎年恒例の学校玄関前の部活勧誘が行われていた。

 この部活勧誘は新入生にとってはハッキリ言ってうざい部分もある。


 何故なら多くの場合そこまで人気のない部活が必死に勧誘に来てゾンビのように群がってくるからだ。

 人気がない理由はそこに魅力がないので、強く勧誘するのも分からなくも無い。しかし人気がないぶんその行動がうざったくて、逆に印象を下げるということもあるのだから残念ではあるが……


 ともあれ学校ではしばらく部活勧誘で玄関前が忙しくなり、新入生たちはどんなに息を潜めても必ず誰かに捕まる。それが日常だ。


 しかし、そんな中にただ一人、新入生でありながらなぜか誰からも部活勧誘をされない人間がいた。


「はぁ……誰も俺に勧誘してくれない」


 ため息をついて誰も勧誘してくれないことに嘆いているのはこの学校に入学成績2位で入った朧夜(オボロヨ)満月(ミツキ)


「俺、新入生だよ? 赤いネクタイだよ?」


 なんだか小学8年生が喜びそうな名前をしているミツキはひたすらに自分が新入生であることをアピールしている。

 この学校は男子はネクタイ、女子はリボンの色で学年が分かるのだが、新入生は赤なのだ。それ故にミツキからしてみれば自分は赤いネクタイをしているのだから、新入生であるというのははっきりとわかることだと思うのに、と文句を言っているのである。

 実際、ミツキ以外の新入生は見事にゾンビたちに捕まっているのだから、普通は分かるはずなのだ。


 しかし残念かな、ミツキは何故か誰からも注目されないという特性があったのだ。

 それこそ目の前にミツキがいてもまるで気がつかないなんてこともザラにあった。


 何故かは分からない。ただそれが厳然とした事実なのだ。

 過去のこの特性が発動した経験を上げてみると──


 ──小学校の入学式後の初ホームルームでの自己紹介でミツキだけスルーされる。

 ──中学校の卒業式で名前を呼ばれなかった。

 ──部活の集まりで遊びに行くと必ず忘れられる。


 などである。はっきり言っていじめが発生してるのかというくらいひどい。しかもこれがわざとじゃないというのだから、なおひどいのだ。


 ミツキ本人はガンガン勧誘してくれるのを望んでいたくらいなのに、誰もミツキを見てくれない。


「はあ……今日も学校中の面々からスルーされるのか……」


 思わず出てしまったつぶやき。

 ここ最近毎日言っている言葉だ。

 これだけでもミツキが普段からどれだけ無視されているのかわかるだろう……実に残念なことだ。


 ──だが今日はその言葉が果たされることはなかった。


 ピカアァァアア!


 ミツキがちょうど校門と学生玄関の中間地点に到達した瞬間に足元が輝き始めたのだ。


「なっ!?」


 ミツキが驚いて固まっていると、人気のない部活のゾンビの一団の一つが声をそろえて言った。


「「「「「こ、これは! ──魔法陣!」」」」」


 息ぴったり。ずいぶんと暢気な事である。

 そしてそんなゾンビ軍団のふざけた言葉が出た瞬間には、あたり一面を光が包み込み、当然のごとくその中央にいたミツキも巻き込まれるのだった。

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