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精霊の街   作者: きつねこ
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最終話

挿絵(By みてみん)

夕刻、街中は人影がなく、しん、と静まり帰っている。


教会はピザの箱や飲み物の空で酷く荒れていた。


金色に煌めく円の中心にはネモが今にも倒れそうにフラフラと青い顔で座っている。


そんなネモの頭を、カトレアが強く叩いた。


「こら!寝るんじゃないわよネモ!」


「・・・え・・・あ、あぁ。」


もう言葉を紡ぐことすらしんどいネモの頬をカトレアがつまむ。


「クレオが帰ってきたわ!」


「えっ!?」


ネモはその言葉を聞いて門付近の地図を見る


「ほんとだ。怪我もない・・・。」


ネモは安心して意識を飛ばそうとするが、その両頬をバンッとカトレアに叩かれ挟まれる。


「だから寝るなってのに!」


「クレオさんが?帰ってきたんですか!?・・・どんな状況なんでしょうか?」


カトレアはクロに、行ってくる・・・と口だけ動かしてその場から消えた。


門前にはラギ副隊長が立っていた。クレオは倒れた王子を馬上から地面に投げ捨てる。


「・・・こ、これはソコトラ王子!?」


「戻りました。ラギ副隊長。・・・重要なのはそちらではありませんよ。」


クレオは薬の入れ物をカバッと開ける。


「三千名分の薬です。・・・ただ、それでは足りないかと思いまして、ソコトラの衛生兵を連れてきました。」


門の外のソコトラ兵の馬に乗った衛生兵に、クレオは視線を向ける。

彼は青い顔で、歯をガタガタ鳴らしている。


「なんと、素晴らしい!!」


ラギ副隊長は興奮気味にクレオの肩を叩いた。


「おっかえりークレオ!大収穫じゃない!?・・・さて、締めの作業に入るわよ!」


カトレアに気がついたクレオは、それを見て少し微笑む。


「副隊長様、“彼女”からの伝達です。これから私がいう場所を優先して、薬を届けて頂きたい。」


「“彼女”・・・“癒しの精霊様”か、私もあってみたいものだ、さぞ、美しい方なのだろう。」


横でクスクス笑うカトレアを、クレオはちょっと睨み、「早く教えて」

と小声でまくし立てた。


※※※


街が落ち着いた頃にはもう夜中になっていた。


クレオは副隊長に断って、教会に向かう。

クレオの帰りに、クロは扉の鍵を開けた。


「ナニコレ、ゴミだらけじゃないか。」


「それだけ極限状態だったんですよ。」


消えかかった金色の街の地図の中には横になったネモが薄目をあけている。


「・・・もういい?・・・やめていい?」


「いいよ。ネモ、あとは隊員の人に任せて大丈夫。」


ネモはふうっと溜息をつき、教会は真っ暗になる。クロが急いで明かりをつけた。


「後は僕に任せて、お二人はお帰りください。あっ、司祭様もでした。」


「私もクロを手伝うわーお疲れさまーネモ、クレオ。」


「兄ちゃん、ホントに大変だったんだよ・・・カトレアも休ませてくれなくて。」


クレオに抱き抱えられてネモゆっくりと瞼を落とす。


「・・・良かった。クレオがなんともなくて。」


ネモはクレオのコートに顔を押し当てて表情を隠す。


「姉さんのおかげだよ。」


※※※


明くる朝


ポンポンという花火の音に、ネモは目をあけた。


「・・・ん・・・いっ・・・いたたっ!」


全身に感じる激痛に身動きが取れない。


諦めて横になり、顔を動かしてあたりを見ると、クレオがパジャマ姿で横でスヤスヤと幸せそうに眠っている。


「・・・まじか・・・。ベッド狭いんだけど」


たたき起こしたい所だが痛みで力が入らない。

クレオもかなり疲れているようで目を覚ます気配がない。


布団の暖かさに負けて、ネモはまた目を閉じる。


(・・・あれ?僕、パジャマだ・・・?)


クレオと同様に自分もパジャマに着替えているようだ。

かなり、汗もかいたはずが、体もベタベタしていない。


(僕が眠ってる間に、クレオがしたのか?・・・脱がせて、身体を拭いて?)


「・・・最低!」


ネモは渾身のちからでクレオのみぞおちに拳をぶちこんだ。


クレオはベッドから転げ落ち、うーんと呻いている。


「ふあぁ・・・だって、ネモがオレと一緒に風呂に入るってきかないから・・・」


「うっ・・・嘘!!」


「えー。だって、隊員の銭湯には行けるんでしょ?」


「・・・そんなことも言ったけど、・・・嘘だ、そんなっ!」


ネモは頭を左右にバタバタ振る。


「嘘だよ。見えるとこちょっと拭いただけだから、お風呂入った方がいいよ。・・・ネモほんと動かないから心配で離れられなかったんだよ。」


睨み付けるネモを横に、クレオは立ち上がりあくびをする。


ポンポンと再び鳴る花火に気がつき、窓の外に目を向けた。


「そうか。今日は収穫祭だったな。ネモ、副隊長には今日は病み上がりだからと警備は断っておいたからね。」


「・・・いつも、警備に入ってるの知ってたんだ・・・。不本意だけど・・・ありがと。」


布団に顔を半分うずめ、ネモは小さく答えた。


※※※


昼を回る頃、やっと動けるようになってきたネモは、屋上で街を見下ろす。


「病は完全に終息したみたいだな。昨日までこの街が滅びかけていたとは、皆、夢にも思ってないんだろうな。」


天気はよく晴れている。

昨日のサイレンのせいか、いつもより人数は少ないが、教会からは沢山の人々の笑い声が響いている。


「ネモ、もう動けるのか?」


両手にいっぱいの食べ物を抱えて、クレオが階段を登ってくる。


「街を歩いてたら、なんかもらっちゃった。」


クレオが大量の食べ物を像の下に並べる。


「僕、昨日のピザで胃もたれなんだけど。」


ネモは苦笑いしながら、それを見た。


「あと、コレ。」


クレオは腰から、クルクルと回しなから2本の、ダガーをとりだす。


「これのおかげで、王子を殺めずに済んだよ。ありがとう、ネモ。」


「そっか、それはよかった。」


クレオはダガーをしばらく見つめ、口を開く。


「ネモ・・・このダガー・・・オレにくれない?」


ネモは首を傾げてクレオを見た。


「いいけど、新しいやつ買ってきてよね。」


「・・・やっぱり、たとえ、オレが力を使いこなせるようになったとしても、ネモは辞めるつもりはないのか。」


クレオは深くため息をついた。


「だって、僕のライフワークだからね。嫌かな?」


悩むクレオを横目に、ネモはまだ痛む身体を伸ばす。


「そうだな。副隊長にも兄ちゃんのことバレちゃったし、次は二人で街をパトロールするのもいいかもね。・・・何かあったら、隣で僕を守ってよ。」


微笑むネモを見て、クレオは困った顔で笑う。


「・・・姉さんの頼みなら、なんでも。」


セントポーリアの時間は今日も緩やかに過ぎていく。


少し冷たい秋風に吹かれ、二人の談笑が途切れることはなかった。


あとがき


長いお話でしたが、ここまでお付き合い下さり

ありがとうございました。


キャラクター設定や、大まかな話は昔考えていたものです。

・・・イラストもかなり昔のものです。(;^ω^)


前世の話とかも考えてたのですが、なんか暗い話になりそうだったので端折りました。( ̄▽ ̄;)


余談ですが、キャラを考えるとき、この作品の場合は皆、植物から名前をとってます。

名付けはなんだかいつも凝ってしまいます。


ネモ→ネモフィラ クレオ→クレオメ

カトレア→カトレア クロ→クローバー

ラギ→柊 セントポーリア→セントポーリア

ソコトラ→アデニウムソコトラナム


クレオさんは、当初はもっと純粋キャラだったのですが、書いてるうちに、結構セクハラキャラになりました。(・3・)アルェー


また、次回作等で、機会がありましたら、読んでやってください。


ありがとうございました。


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