__CALLING
<FROM eyes認証ユーザー Rise_MIKAGE_368K5521d4>
<TO eyes認証ユーザー Kaede_SAGARA_341G6772w6>
__ON
「あ、カエデ、ごめん。今、時間平気?」
「うん、平気だけど、どうしたの!? 大丈夫!?」
「え、大丈夫だよ?」
「リセがコール掛けて来るなんて、珍しいからさー。何かあったのかと思って。心臓飛び出るかと思ったー」
「え、驚かせてごめん。何かちょっと、珍しい事してみたい気分だったから」
「何それ」
「ふふ」
「部屋、用意する?」
「ううん、音声だけで良いよ。私、自分のアバター、仕事用のしか作ってないし」
「ほんと、リセはズボラなんだから」
「あはは」
「で? 学校出てから初使用でしょ、アイズコール。それ程の事件って?」
「え、卒業してから使ってなかったっけ、私」
「うん、あれから初めて」
「そっかー。あ、じゃあ、大学の卒業旅行の時のが最後かな?」
「そ。あれからもう三年以上、リセからコール来たことありませんよー」
「あー、そんなにかぁ」
「で?」
「あ、そう、それがね。カエデにはいち早く教えたくて。今日ね、あの後、例の少年と話したの!」
「例の少年?」
「前に話した子、覚えてる?」
「ああ、あの、リセにしか見えないっていうストーカー少年?」
「そう! あ、だけど違う!」
「ははっ。ちょっと何、どっち?」
「ふふふ、ごめん。前に話してた少年っていうのは合ってるんだけど、ちゃんと普通に存在してたの。勘違いとか、幽霊とかじゃなかった」
「行く先々に現れるストーカーってのは?」
「それは――、半分正解? かもしれないけど」
「はははっ、何それ本当?」
「ほんとだって」
「会ったこと全部、リセの妄想とかだったら、流石のあたしでも引くよ?」
「そんなことないもん。ちゃんと手繋いだ時、感触あったし、すっごいあったかかったし」
「何? 手繋いだ? 何でいきなり、そんなことになってんの?」
「それはうーん、話すとちょっと長くなるんだけど」
「えー、気になる。なら、次のランチの時のツマミは、リセの妄想話で決まりだね」
「だから、妄想じゃないって」
「はははっ」
「その子に、素敵なバーも紹介してもらってね」
「え、子どもにバー?」
「あー、その子の、知り合い? の人がマスターさんで」
「へー、何て店?」
「あ」
「どうしたの?」
「これって、言っちゃいけない事だったのかも」
「何それー」
「うーんと」
「ん?」
「カエデ、誰にも言わない?」
「あたしは言わないけど。大丈夫? 何か、話しにくい事だったら」
「ううん。そんな深刻な話じゃないんだけど、うん。お店の名前ね、“黄泉比良坂”って言うの」
「ヨモツヒラサカ? あ、黄泉比良坂か」
「うん、U市の駅から、そんな遠く無いとこ」
「聞いた事無いなー。U市はよく行くのに。黄泉比良坂、あれだよね、死んだ人の世界との境目? みたいな」
「うん」
「確かリセ、前に仕事で取材してたよね、現物。あたし、記事見せてもらった気がする」
「――うん」
「リセ?」
「ううん、ごめん。今度、カエデにも紹介するよ。あ、でも、勝手に友達連れてったりしたらダメなのかな?」
「ちょっとー。やっぱり妄想なんじゃ」
「違うよー」
「はははっ」
「一見さんお断り、みたいなとこで。今度、マスターさんに会ったら聞いてみる」
「はいはい。楽しみにしております」
「あー、やっぱり信じて無いでしょ、カエデ。絶対連れて行って、私の妄想じゃないって、証明するんだから」
「そんなこと言ってー、訂正するなら今の内――」
「カエデ?」
「あ、ごめん。仕事先からかな? コール入った。切るね」
「うん」
「また近い内に連絡する。次のランチの計画立てよ。じゃね」
「うん、じゃあね」
__OFF