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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第六章 試される時間
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陽だまりエントランスその2

春はあけぼの

 自分も信じていないし、僕は他の人も基本的にはあんまり信用もしていないんだよね。

自分の能力には底があると知っているし、一つのことやり続けるだけの最低限の努力もできない人だということも分かっている。

けれど、僕が分かった気がしているだけでまだ自分が手を尽くしてやるべき事が見つかっていないだけなのかもしれない。


高校生活の中で少しでも見つかれば良いんだけどな…

淡い期待をしても何も起こらず、結局は僕自体が変わらないと何も始まらないのかもしれない…


さてと、来宮さんの話によるとレイピアと僕、そして来宮さんは一緒のクラスらしい。これも偶然なのかはたまた運命なのか…いや、偶然なんだろけどさ。


クラスにはほかにどんな人が居るのだろう、僕の今のところ知っている同級生は何人かいる訳だけれどその人たちとは同じクラスだったりもするのかな?


一年十組の名簿に見知った名前が無いかと探してみたけど、名前は結局乗っていなかった。


「他にお知り合いの方などはいらっしゃいましたか?」

来宮さんが名簿を眺める僕に話しかける。

ええと、そうですね…僕はこっちが地元では無いので知っている名前の人とかは特にいない感じですね。


「寮に入っていらっしゃるとお聞きしていたと思いましたけど、やっぱり大変ですか?」

えぇ、まぁ…色々と新しい事ばかりで全く思う様にならず、困った事もありますね。


そう答えた困った事の半分はレイピアの事なんだけど、流石に親類という設定はいえ同居してますとかは色々と誤解を招きそうなので言わないでおこう。

家事を覚えていかないといけないのでどうしても初めは困ったことが多いですね。


「そうですよね。いくら寮生で、管理人さんが手伝ってくださるとは言っても何かと大変な事もありますよね?」

掃除と洗濯のタイミングとか1日のスケジュール管理が割と面倒だし、手間なんだよね。

気温とか天気とか気にしてご飯決めたいし、これは手間だと僕は思う。


「そうですよね。一人分の食事とか作っても、具材が余ってしまって結局具材分作るんです。

しかし食べきれずに日を跨いでしまうと料理の味が落ちゃうんですよ」


確かに一人きりだとそうなっちゃう事は結構ありそう…(僕の部屋には自称座敷わらしがいるので足の速いものが駄目になってしまうことは今の所ないけど)


「私も最初は一人で何でもやろうとして手が回らなくなってましたねー」


それならどんな風に来宮さんは一人であのお社を管理しているんですか? 工夫とかしてますか?


「ふーむ、そーれはですねーあるコツがあるんです」

少し得意げに片目を瞑って見せる来宮さん。

なるほど、どうやら来宮さんは秘訣をお持ちらしい…

これは是非とも教えて貰いたいよね。


「それはですね…完璧を目指さない事、そして程よく手を抜くことです!」

な、なるほど? 手抜きをするのが良いんですか?


「そうですね、最初はなんでも言われている事を全てこなそうとするんですが、それが勘違いなのです。

初めは出来ないことが多くて時間もかかりますからね」

一理あるかもしれない…

「でもですね、これはあくまで出来なかった時の自分に対する言い訳です。

最初からやるべき事を諦めたり、すっぽかす理由にはなりませんので気をつけてくださいね」

来宮さんて前向きなんですね、僕からしたら羨ましく思えるよ。


「何何、涼くん。優花と何をお話ししてるのかなー?」

僕らの教室がどこにあるのか調査しに行っていたレイピアが戻ってきていた。


「あ、レイピアさんおかえりなさい」

「うん、ただいまー」

「今、涼さんと一人暮らしのコツをコッソリとお教えしていたところなんです」

なるほどねー、とレイピアは相槌を打った後僕らの教室の場所を僕らに話す。

「向こうのね、二つ目の校舎の方みたい!」


え…レイピアさん、それは情報があまりに少なすぎじゃない? もう少しこう…地図とか案内の人がいたとかじゃないのかな?


「北村さん、北村さん、今は知らない場所の方が多いのですから、探検という事で良いじゃないですか?幸いな事にどこの入口からでも入って良さそうですから」

来宮さんはゆっくりと僕を諭す様に言う。

レイピアを責めるつもりは僕には無いのでそうですねと返事をして目の前の入り口から校舎に入っていく事にしようか。


「よーし、れっつごー!」

道案内をレイピアにお願いして僕らは第三棟入口と書かれた場所から校舎内に入った。


教室に着いたら一旦待機して集合したら担任の先生の話を軽く聞いた後、式をして、教室に戻る。

多分そのあとは書類の回収とかをして今日のところは解散だろう。


課題も事務書類も揃っているし、僕は大丈夫。

うーゆ、はじめての場所はやっぱり少し緊張するな…


「どーしたの涼くん、キョロキョロしちゃって」

ちょっとね。どこに何があるのかな、覚えておかなきゃなと思ってね。


「北村さんに残念なお知らせなのですが…中学校舎と大学のキャンパスも一部兼ねているそうなので覚え切って活用するのは難しいかもしれませんね」


来宮さんの言う事もあるけど、僕は全部を覚えるつもりは無いから大丈夫。 どこに何があるかとか道に迷わない様にしたいだけだから。


校舎内は白を基調とした明るい学校らしい感じだ。

この校舎の一階はどんな教室に当たるのだろうと思いながらもレイピアが校舎に入ってすぐの階段を上がり始めたから詳しくは見れなかったけどね。


校舎間を移動するには二階の渡り廊下を歩いて行くみたいだ。

「えっとねー、どっちだったかなー?」

4階立ての校舎がいくつもあるし、左右の景色はそこまで変わらない。

はじめて来た場所でこうも似たような場所だと、自分のいる場所がどのなのか分かんなくなるよね。

「えっと、多分こっち!」


レイピアは何故か指さした方向が校舎外で指さした方と逆を指さしたのには少し戸惑ったけど、来宮さんがそれを言ってくれた。


「あっ…えへへ、間違えちゃいましたーてへ?」

レイピアって自分でも言ってたけどやっぱり方向音痴だったりする?

「そ、そんな事ないよーだ、ちゃんとお使い出来るもーん」

あー、はいはいそうでしたね、レイピアさんはお使いも出来るいい子さんでした。

「なにさー、その気の抜けた回答はー? もー、涼くんのすけこましー!」

す、すけこまし? え、それってどう言う意味の言葉なの?

「だーかーら!すーけーこーまーしー!」

だから何なのそれ? 今度意味調べてあげるからちゃんと覚えといてね?変な言葉とかだったら怒るから。


「ふふっ、お二人とも本当に仲が良いですねー」

僕らの会話を聞いている来宮さんは特に気にしない様子だけどさ、やっぱり不自然だと思うんだよね。

仲がいいフリとかしているの…口にはしないけど。


「こっちの棟に行くには上に上がんなくちゃいけないんだってー、階段はーあっちだねー」

入ってきた棟の端まで行ったと思ったら今度は階段を上がらなくちゃいけないみたいだ。


「教室も色んな使われ方をされている様子でしたし、覚えるのにひと苦労しそうですね」

来宮さんの言う通りだ。

棟から見える景色も校舎が六角形に並んでいる真ん中の方に廊下がある。

なので外の景色だけだと自分が今どの位置にいるのか分からなくなってしまいそうだ。  


レイピアは何故こんなに僕に懐いているのだろう…

懐いていると言う表現が正しいのかどうかも僕には分からない。

いくら親類という設定だって言ったって他人なんだし、そんなに仲良くする必要ないと思うんですよね。


なんて事を考えたり、来宮さんと話をしながら僕らは

第二棟の三階に位置している教室の前に到着した。


「高等部普通科十組」と教室の扉の上には掲げられている。

「ほら、私の言う通りに来たらちゃんと教室に着いたでしょ?」

「そうですね、レイピアさんありがとうございます」

レイピアは少し嬉しそうにはにかんで教室の扉を開いた。

さて…僕らの教室でこれからどんな物語が繰り広げられる事になるのだろうか。

物語というには事足りない何気ない事かもしれないけれど、もう少しお付き合いいただくとしよう。


「む…そこに見えるは北村さんと…座敷わらしさん?」

教室には先客がいたようで、僕らの知っている声がした。

黒いコートを着た長身痩せ型の男…怪しい者ではなくて、微風が既に教室の窓際で佇んでいた。

やっぱりコート着てるんだ…でも今日も結構陽気がいいからもしかして暑いんじゃない?


「ふふっ、ふふ、ふははははは!…あつい」

キャラ付けとかも大事かもしれないけどさ、別に後からでも良いんじゃない?


微風はまたコートを脱いで自分の机に投げ捨てた。


次回は続く

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