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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第六章 試される時間
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陽だまりエントランスその1

この作品も投稿初めてのんびり5年が経とうとしている事に恐ろしさを感じています。

 他の人からの視線が僕は小さい頃から苦手だった。

相手からどんな感情を向けられているのかが分からないから。

怒っているのか、馬鹿にしているのか、僕にそもそも興味がないのか…

感情の機微はともかくして、自分が他者からどう思われているのか、考えるだけで頭がぐしゃぐしゃになった。


出る杭は打たれるし、短過ぎる杭はそもそも使われない。

あいつ生意気だと嫉妬とか羨望の目で見られるのも嫌だし、あいつ使えないんだよなとか嘲られるのは僕の中でもっと嫌だった。


だから僕は普通の人でいたい。

量産型だろうと廉価版だろうとそれは僕にとって問題じゃない。

誰かの真似でいい、誰かと同じでいい、誰かの代わりでいい。

僕は何でもない誰かで別にいいんだよ、誰かの何かになろうとするのはこの世の中じゃとっても難しいからね。


ぼくだって(ちまた)に溢れる誰かの代替品に過ぎないんだよ。


なんて、こんな風に僕が考える様になったのに理由は特に無いんだけど、機会があったら話してみようかな…


僕のことなんかよりももっと話すことがあるからここら辺にしておこう。


なだらかな上り坂を天辺まで登っていった先の丘に位置する学校は中学から大学までまとめて巨大な敷地を持っている。

台地の上に聳えていた古いお城の跡を再利用して、住宅街の中で急に開けたと思ったらマンモス校がその姿を現した。


自分の目の前の学校の校舎が後7個もあるのかと思うと気が遠くなって来るけど、僕は今日からこの学校に通うんだと思うとまだ現実感が湧いてこないな…


飾る必要は無いと言わんばかりに大銀城址学園の名前が彫られた校門が僕らを待っている。


いよいよ…いよいよだ。

嬉しいとか舞い上がっているのとレイピアに聞かれたら僕はそれをきっと肯定するだろう。

だって、僕はこの学校の門を叩く為にどれだけの…


「すっごい広そうだね、涼くん」

実際のところ広いんだよレイピア、僕がここに来たのは数回だけだけどこれはね…東京ドーム何個分になるんだったかな?10個分位?


「ねえ涼くん、涼くん…東京ドームって私知らないんだけど、それってどのくらい広いのかな?」

東京ドームはね…東京ドームは…あれ?どのくらい広いんだっけ?

よくテレビとかで聞くから考えたこと無かったけど結局は幾つくらいの広さなんだろうね?


「涼くんにも知らない事はあるんだねー」

それはまぁ…僕にだって知らない事の一つや二つどころじゃ無いよ、どう足掻いて背伸びしたって僕らはまだ中学生でしか無いんだもの。

「なるほどなるほど、涼くんは違いが分かる子供なんだね」


違いが分かるかどうかは分からないけど、自分の身の丈が小さい事位は知ってるつもりだよ。


「私はそんな事ないと思うけどなー」

レイピアがそう言ってくれるのは嬉しいんだけどね、僕の自分に対しする評価ってすっごい低いから仕方ないんだよ。

「ふーん、涼くんも色々大変な事を持っていそうだね」

校門前までそんな話ばかりして、変にかしこまって硬くなり、自分達は周りとは違うんだとみせたいちっちゃな誇大な自尊心を披露してしまう僕だった。


今のところ、あの燕尾服を着た執事の姿は無い…か…

流石に校門前を見張ってるとかそんなのは僕の考え過ぎだったのかもしれないね。 


そっと胸を撫で下ろして僕らはいよいよ学校の門を潜った。

何かある訳でないし、ただ学校の敷地を跨いだだけだけど、


周囲を不安そうにキョロキョロと見渡す人、仲の良かった子との再会を喜ぶ人、学校の敷地を跨ぐと僕らの同級生達が十数人、校舎の入り口の前でたむろしていた。

見たことある人もちらほらいるけど、僕らは端の方でこじんまりといれれば良いかなー。

あの人達だって旧交を温めたり、自分の感情に向き合う時間が必要なは「あっ!ゆっうかー!」


…僕の気持ちは確かに僕だけのもので、共有ができるものではないかもしれないけどさ…


「レイピアさん!それに北村さんも、こんにちは」

来宮さんは先日と同じ様に柔らかい口調でこっちに微笑みかけてくれる。

「うん!こんにちはー!」

ちょっと、レイピアあんまり大きな声出さないで?

「えぇ、良いじゃーん!出しておいて損は無いよー!喧嘩になるしね!」

目立つし、レイピア分かってる?この話をあの人が聞いてるんだとしたら声でバレるちゃうって。


「もーだからー、いい?涼くん。楓がこの入学式に潜入するなんて考え過ぎだよ、いくら楓だってそこまでしないって」


それなら…いいんだけどね。

僕と散々にレイピアと僕は意見を交わしたけど、これは僕の問題じゃないから、

だから最終的に僕の慎重論はレイピアの楽天主義の前には対抗意見にすらならなかった。


でもあの日の久井楓に会っているのは僕だけだし、僕から見たらレイピアの為ならどんな事でもやりそうな雰囲気の人だって感じたんだけどな…


「あ、あの…北村さんはこの前と比べて難しい顔をされていますけど何かあったのですか?」

ほらー、来宮さんに気を使って声をかけてくれたじゃないか。

人の事を気にしてくれる人は優しい人だから、僕は来宮さんに悪い気持ちになってしまうんだよ。

だから嫌だったのに…


「ちょっと緊張して昨日いまいち眠れなくって」と来宮さんにさも純粋そうな言い訳をして僕の中に泥を撒いた。

「えー、涼くん昨日寝れなかったのー?涼くんってば、以外に子供っぽいとこあるんだね~?」

ちょっと待って、その台詞はレイピアにだけは言われたくないんだけど?


なんでそんな得意げな顔してるの?その顔はやめてほしいんだけど…あのレイピアさん?止めてください?


「北村さんとレイピアって仲のいい兄妹みたいですね」

いいえ来宮さん、赤の他人ですよー?

マリアさんとマスター以外には親類の子って設定で通しているけれど、レイピアが仲が良いフリをしてくれているから成立するんだよーなんて言える訳無いよねー。


「そうそう、何を隠そう実は生き別れた双子なんです!」

またそういう何にもならない嘘を言って…

「えぇ!?そうなんですか!? わ、私の知らない場所に一体何があったんですか!」

小さく驚いて僕とレイピアを交互に見つめる来宮さん

ほらー、来宮さん素直だから信じちゃったよ?


「…優花ごめんね、さっきのは冗談なんだーでもそれっくらい仲良しでしょー?」


確かにレイピアは普段からこんな調子だけど、僕に何故こんなに警戒心が無いのか疑問は残っているんだよな。


「同級生の幼馴染の様な関係って事ですよね?良いですよねー、そういうの憧れちゃいます!」

ええ…なんか来宮さんが誤解の広がりそうな解釈をしているんだけど…

いいのレイピア? 流石に親類の設定とか無理があるんじゃ無い?


レイピアはそんなに良いものじゃ無いよーとは言ったけど、それ以上は何も言わなかった。


大丈夫かな…小さな嘘をつき始めると嘘を上塗りしていくしか無くなるんだよ。最後に苦しくなるのはレイピアだけどそれで本当に良いの?


「そういえばですけど北村さんとレイピアのクラスは何組でしたか?下駄箱の前にクラス名簿があるので確認してきた方がいいかもしれません」


ここで人だかりが出来てたのはもしかしてそういう事か…なるほどね。

にしてもクラス分けか、これからの一年間を左右する閉ざされた環境は一体どうなるんだろう。

隣にいる座敷わらしさんとは同じクラスにならなかったら僕の心労は少しは軽くなるかな?


何にしても先ずは…15学級ある所から区別をしなければいけない事だ。

高校から受験した学生の中でも指定校推薦枠とAO入学以外に非推薦で勉強して試験をパスした人達に分かれている。


中学校からのエレベーター式で上がってきた人達は、

一から五組、指定校とAO入試枠の人は五から七と振り分けられている訳だけど…さて、そこから除いた枠が8クラスある。

8クラス分の名簿があるのはいいけどこれは…調べるの大変だよこれ…


八組から十五組は流石に見きれないと思うから事前に通知とか欲しいよね、うん。事前に郵便とかで欲しいよ。

「あ、あの北村さん」

来宮さんが少し恥ずかしそうに僕に話しかけて来た。

えっと僕?

「は、はい。実はですね…先に私の方で学級名簿を見させていただいてまして…実はお知り合いの方々がいらっしゃれば良いなーと北村さんの名前を探してしまいまして…」 


レイピアは気になって名簿を熱心に眺めている。

僕は出来ればクラスとかあんまり好きでは無いけど。

「実は北村さんと私は同じクラスであると分かったのです…」

こっそりと来宮さんは僕にクラスを教えてくれた。、


あ…そっか、それならこれからよろしくね。

僕はちょっとしたネタバレをされた気分だったけど、まー僕にとっては少しだけ安心できる要素が増えたから良かったかもしれないね。


ちょっと待ってよ、レイピアとかあのコートの微風とかあだ名みたいな自分の名前を変えてる人の本名で書かれているのかな?もしかしてレイピアの本名を見つけるチャンスなのでは?


同じクラスかも分からないけど、来宮さんが教えてくれた自分達のクラスから順番に見ていこうと思った時だった。

「あったーー!」

ここでそんなに声あげるのってさ、受験番号があった時くらいじゃ無い?なんか一ヶ月くらいズレてない?


レイピアが大きな声を出すものだから、周りが騒ついたの仕方ないよね。

だからレイピア、そんなに大きな声を急に出さないのっ、さっきも言ったよね?


「だ、だって…私の名前とおんなじクラスのところに涼くんの名前があったから、びっくりしちゃって…!」

驚いたのはこっちもだよ。

僕のクラスの名簿は…十組で…レイピアは一体どんな普通の名前になってるのかなー?


これで山田花子さんみたいな名前だったら少し面白かったし、オチがついたのかもしれない。


けれど、僕と来宮さんの名前とともに明記されていたのはどう見ても片仮名でレイピアと名簿には確かにそう書かれていたのにはさしもの僕も目を疑ってしまった…え、本当にレイピアってそういう名前なの?


両刃剣とかかいてレイピアとかなの?それとも鈴陽亜とか書いてレイピアって読んだりするの?


謎は一向に深まるばかりなのだった。


次回へ続く!

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