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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第五章 ツツジの執事と座敷わらし
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番外編〜レイピアはじめてのおつかい4〜

 自分に自信があるかと聞かれたら、レイピアは少しだけ自信があるよと答える。

だって、自惚れでもナルシストでも、自分を何時も褒めてあげられるのって自分だけじゃない?

空回りでも空元気でも取り敢えず、壁にぶつかる迄はやってみるのがきっと自分にとっていいんだと少し前から考えるようになった。


元々の自分は…あんまり他の人には話したくない位に捨て去りたい過去なのだという…

「うーんと…ここを右に曲がれば、通りの奥に薬局が見えてくるのかな?」

レイピアは涼とゆずのきで別れ、駅の近くにあるという薬局を目指して歩いてきた。

そろそろ、一つ目の目的地に着くはずとレイピアは思っているのだが涼が言っていた特徴の建物がなぜか見えてこない。


涼君と話しながら来た時と、家を抜け出してきた時以来でこっちに来るのは二回目だけど…

一人で行動するってのが違和感がすごいんだよね~、世界がなんて言うのかな、よそよそしいっていえばいいのかな?


レイピアは学校に行ってた時も含めてほぼ毎日、執事として赤髪に燕尾服の久井楓がそばにいたので、一人で何か目的を持って一人で行動するという体験は、初めてだ。

新鮮と言っても良いかもしれない。何にしても初めての事と言うのは自分で予想ができない事が多く起こるため緊張するもの、レイピアもご多分に漏れずそわそわしながら歩いている。


周囲の人に変に思われたら嫌だなーとは思いつつも、そわそわときょろきょろが止まることを知らない。

涼くんの書いたメモもざっくりとしてるので、本当にこの場所に行けば言われたものがあるのかレイピアには少し不安が残る。


僕たちがが使う駅から目と鼻の先にある乗換駅からみて目と鼻の先の薬局にあるよと買い物メモには書かれているけど…

目と鼻の先が二回使われてるんだよね! すっごい近くに両方ともあるんだなってことは分かるんだけど、その表現の仕方の他に何か無かったのかなって私すっごく思うんだけどな!!

あ、すごいって二回言っちゃった…涼くんのこと言えないや。

メモには私達が使う駅の目と鼻の先にある駅ってかいてあるけど…? そんな雨後の筍みたいに駅が何個もある訳ないじゃん!!


通学で使う駅は四両か三両だけの電車がのんびり走っているけど、ここら辺って要するにそれくらい田舎なのかもしれないよね。

試しにレイピアは唯一知っている幸谷と書かれている駅の改札口からあたりを見てみることにした。


線路が一本しかないし、人の姿はそれなりにあるものの、皆ここでは一息ついているとそんな気がする。

レイピアはここだけ時間の流れがゆったり流れているんじゃない?と思いながら改札口側から路地の先を見ている。


そもそも、私だって頼まれたもの位買いに行けるもんね! た、確かにちょっとみんな違って世の中の事には疎いかもしれないけど!

薬局で買うように言われたものは、何かとあると便利なものやじょうびやく?らしい。

リストには歯ブラシ二本と歯磨き粉、綿棒等々数種類が書かれている。

ぼーと路地の先を見ていると奥に少し高台になっているところをごぅーーーっ!と大きな音を立てながら何かが猛スピードで走り去っていくのをレイピアは目撃した。

ビクッと体が驚いてしまったのは、本人の希望で書かないおくことにするが、レイピアが見た限りではさっきのはこの駅に止まる電車よりももっと早く、そして長いやつだ。


なんだったの、さっきのビュンビュンってのは!?もしかしたらあっちに涼くんの行ってた駅があるのかもしれないよね。レイピアは興味の向くままに路地の先へと向かって行く。

路地を抜けるとさっきの場所やゆずのきがある場所よりももっと賑やかな場所にレイピアはたどり着いた。

第一、車道と歩道が分かれているし、ビルも沢山ある。レイピアは実はここまで来るのは二回目なのだが、その時は周囲の事を気にする様な余裕は全くなかったので初めて来たといっても過言ではないかもしれない。


目の前にタクシープールといくつかのバス乗り場が広がっており、その奥にはこちらの方向に延びる高架線と先ほどの高台にホームらしきものが置かれた駅が視界に入ってきた。

駅からは世話しなく人が吸い込まれては吐き出されを繰り返している。

レイピアは暫く繁々とあたりを見渡していたが、おつかいの事を思い出して指示された薬局を探す。


「ええっと…黄色と紺色のカラーリングをしたお店で、人の名前お店の名前です…?」

なにそれ、そんな変なお店がある訳ないじゃない! 涼くんったら私を騙そうたってそうはいかないんだかね!!

本当、何かの冗談かとレイピアは思っていたのだが、この地図を描いた涼くんの性格上、嘘だったりふざけたりはしないんだろうなと段々気づいていった。


その上でキヨシと片仮名黄色と紺で書かれた看板のお店を見つけ、びっくりしたのはレイピアだけの秘密である。 本当に薬とか売ってる場所なのかな…?

疑いながらレイピアはお店に入っていく。


涼からお店は薬局と聞いていたけれど、ドラッグストアに来た事のないレイピアにとっては物珍しいかった。


お菓子や清涼飲料、カップラーメン等が薬局で売っているのをレイピアは初めて見たし、薬の種類だってまさかこれだけの棚を使って何種類も並べられているとは思わなかった。


レイピアは買い物かごを待つと、メモと棚に置いてあるものを睨めっこしてお目当てを探していく。

あの涼くんの事だから、余程的外れな間違いをしない限りは怒ったりはしないだろう。


けれど、頼まれた買い物も出来ないと涼くんにそう思われるのは心の底から嫌だ。

今の自分は居候でしかないし、人に迷惑しかかけてない。

レイピアには彼女なりに思っている部分はあるのだ。


さて、順調にメモしてある通りのものをカゴに入れてゆくレイピアだったが、一つだけ売り場を見渡して見つからなかったものがあるのに気がついた。


涼の書いたメモにはビニール紐と書かれている。

でも困った事にレイピアはそれが一体どんなものなのか知らなかった。 しょーがないじゃない、使った事ないんだもの。


このお店に果たして置いてある様なものなのだろうか…けれどメモにはこのお店にどうやら置いてあるらしい事は書かれている。


どうしよう…見つからない。

ぐるっと一周、レイピアは売り場を回って商品を探してみたけれど、糸はあっても紐を取り扱っている風には見えなかった。


もう一回…もう一回、商品が置いてある棚を全部見たら分かるかな? ビニールの紐って本当に商品名?


涼くんが間違えて書いてしまっただけで本当は下のスーパーマーケットに売ってるんじゃない?

一度混乱すると良い目に遭わないのは分かってるけど、それなら私はどうすればいいのかな?


別のお店で探してみる? 一度涼くんに連絡を取って聞いてみる? それともこの紐だけ諦めて帰る…?

ああもう駄目だよ、そんな事を考えちゃ…こんな時は

誰かに聞くとかすれば良いんじゃないかな?


その手があったねと頭の中で合点(がてん)がいったレイピアは店員に声を掛ける事にしたところまでは上手くいった。


問題は意気込んでだレイピアが店員に話しかけられないと言う点を除けば完璧だった。


店内をうろうろするばかりで売り場を巡回して商品を補充する店員や、レジの側まで来ては思い出した様に戻っていく。

これじゃいつまで経っても帰れないじゃん!?

何事でも無いの様に、サラって聞けばいいんだよ!

「あのー、すみません。ビニール紐って何処にありますか?」って、その一言が切り出せたらそれで済むのに…


たった一歩踏み出すのがこんなに難しいなんて…思ってもみなかったよ。

レイピアは自分が存外と人見知りな事を思い出した。

涼と話している時とお屋敷にいる時と全く勝手が違う。

今必要なのは明るくて無邪気なレイピアと、古屋敷の令嬢とどちらでもなかった。


後もう一歩前に進んで声を掛けるだけなのに…気恥ずかしさと遠慮が邪魔をする。

商品がどこにあるのか分からなくて、しかも作業している店員の邪魔をしてしまうのもレイピアには嫌だった。


でも、この位は出来ないと涼くんになんでも任せきりになっちゃう…そんなのは嫌だよ。よし、台本を作ろう。

「すみません、ビニール紐の売り場はどちらになりますでしょうか」

そうそう、こんな感じ…よーし、行くよー!

決意はしたし、台本を作って話す事も決まったのだが…レイピアは結局店員に話しかけられたのかと言えば上手くいった。


どもってしまったことや、ビニール紐が殆ど目の前にあった事を除けばおつかいをレイピアは無事にやり遂げる。


問題は意気込んで出て行ったレイピアが買い物を無事に終えた後、帰りの道がよく分からなくなってしまい、迷子になってしまった事だった。


寮室に帰ると涼が心配そうな顔をして迎えてくれたけどレイピアはにっこりとして買い物が入ったビニール袋を誇らしげに手渡しする。


レイピアにとってもこれは小さな事かもしれないが、それでも胸を張って自信にしたいと思う彼女だった。



番外編 完

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