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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第五章 ツツジの執事と座敷わらし
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番外編〜レイピア初めてのおつかい〜その3

はい、3回でまとまると言いましたよね…あれは嘘です。


 レイピアはそこまで物事を考えてないと自分ではそう思っている。

考えたところで立ち止まっていては仕方ない。

やらずに後悔をするよりはやって後悔したほうがいいと考える、行動力の高い女の子だ。

なので周囲にはストッパー役となる人がいると丁度いい。

そこで涼やマスターのような人物に出会えたのはある意味で幸運だったといえるだろう。

ただ、彼女は家から逃げ出して来た女の子である。

タガが外れてしまった結果なのか、はたまた入念な計画を立てた上での行動か…

一緒にオムライスを食べる涼は知らない話なのだ。


 談笑もそこそこに頼んだ料理を口に運んでゆく二人、美味しいものを食べると話が弾むのかもしれない。


「きょうのお夕飯どうしよっか涼くん、また来る?」

それは流石に勘弁してほしいよと涼はぼやく。

ディナーメニューで一人1000円とか取られたら…その調子で贅沢をしていると普通にお財布に穴が開きそうだからそのお誘いは魅力的だが断らせてもらう。


「あるもので何か作れそうなものあったかな…冷凍のうどんとかあったからそれで作ってみよっか」

涼がなけなしの料理の腕を振るって出したものが果たしてレイピアの舌に合うのかは分からないが、口を出して来ないから大丈夫なのかもしれない。


「レイピアってどんな料理が好きなの?」

オムライスにナポリタンと西洋料理に見せかけた日本製西洋風料理を食べながら涼はレイピアに聞いてみる。

お互いの事を知る必要があるのかとか、どうでもいいじゃんと切り返されればそれまで。

だけど折角食べ物屋に来ているんだからと涼はそんな質問をしてみた。

えー、そうだなーとレイピアは少し考えながらパスタをくるくると巻いている、

「うんとね…食べてて好きだなって思える味はイチゴの味かな?今日はセットに無いから頼まないけど」


確かにレイピアは冷蔵庫に紙パックのイチゴ牛乳をストックして置くほどに好きなんだろうなーと涼は気づいていた。

「苺がやっぱり好きー…うん、なんで好きなんだったっけ?」

え、それは僕には分んないかな…レイピアが頭を捻って思い出せなければ無理だと思うんだけど、と涼が言うのでそう言えば…と自分の記憶をちょこっと遡ってみるレイピア。


「うーんとねー、確か小さい時に酷い風邪の引き方をしちゃってさ、栄養をつけなきゃって色々食べたんだけど何にも味がしなかったんだよね。」

もう全部砂を舌の上に乗っけてるーみたいな感じでさーとレイピアは笑いながら言うが笑い事じゃないでしょそれと涼がツッコむ。


「うーん、そーっだったかもしれない。あの時は何にも食べられなくなって意識が半分ふわふわしてるなかで…あーなんか私駄目かもなーって思いながらお水飲んでる時だね。」

風邪を引いて寝込んでいるときに見上げるお部屋の天井ってなんか走馬灯みたいなの見えてくるよね。幽体離脱ってあんな感じかもしれないよねと涼は返してレイピアの話に戻る。


「そうそう、それでね…確か楓が持って来てくれた苺を半ば無理矢理食べさせられた気がする…」

え、無理矢理…? 涼が聞き返す。

「うん、体とかだるかった時に上半身抱えられながら食べさせられてたんじゃないかな…

でもね!でもね!その時に食べた苺はね、すっっごく!美味しかったんだよ!!瑞々しくって、甘くってね!!苺のお陰で風邪も次の日には治ったんだよ。 それからだよね、苺が好きになったのって」


そんな事があったんだ…、確かにレイピアは苺の事になると…目の色が変わるよね。

この前スーパーマーケットに行った時、入って直ぐの所に苺のパックが積んであったのを見たとき、レイピアの目はきらーんって感じで輝いてたよね。


「えっ!?気づいてたの!?ホントに!?ええええええええええええ!?」

涼の言葉に驚きと恥ずかしさが顔に湧き出てきたレイピアは、さっきからフォークに巻き付けて大きくまとまったパスタを、照れ隠しにそのまま口に運ぶ。


そんなにいつも頬張って食べないのに無理をして食べようとするものだから、ケチャップは口に周りについてるし、飲み込むのにものどに詰まってしまって顔が真っ赤になってしまった。


「だ、大丈夫?レイピア」

涼が声をかけるが中々咳が治らないので、彼はレイピアの背後に周って背中を軽く叩く、

「う…ん、ありがとうね涼くん」

空咳を数回してレイピアは落ち着いて涼へ礼を言う。


「ううん、僕がなんか驚かせちゃったのが悪いから」

と涼は謝るが、レイピアはウインナーをフォークで刺して食べながら口が汚れているのに気づいていない。


「そっかー、ばれてたのかー。それならいっその事おねだりしておけば良かったよー」

強請られても恐らく買ってはあげないけどねと涼は返し、レイピアは「えー」と不満そうだった。


「…レイピアはさ、学校でやりたい事とかあるの?」

素朴な涼のから質問にレイピアはパスタをくるくるしながら考え込む。

「そうだね、涼くん。私は学校で友達を作りたいんだ。一緒に勉強して、遊んで、喧嘩したりする友達…ともだちじゃなくても…私とおんなじ目線で話をしてくれる人が私は欲しいかな」


レイピアの純粋な願いを聞いて、涼はそれ以上深く掘り下げようとはしなかった。


彼はそんな事でいいなら僕がなってあげよっかなんて浅はかな台詞を頭の中で考えて、勝手に気持ち悪くなった。


軽く、部活がやりたんだーとか、文化祭とか凄かったよねー!とかそんな回答を期待していたのに、触れてはいけない地雷をすんでのところで回避した、そんな気分になった。


「そっか…色んなこと出来るといいね」

無責任な台詞を吐いている。僕はもうこの子と関わってしまっているのに、何も知らないフリをして逃げ回るつもりなんだ。

無知なふりをして責任を回避する、だから僕は自分の事が我慢ならないんだよ。

こんなことを考える涼は心の中がまるで穏やかでは無かった。


「分かんない。やった事のないことばっかりだから多分失敗はすると思う…でもその時に誰かそばにいてくれたら、私はとっても嬉しいなって思うよ」


そばにいる誰か、か…それは学校が始まってからの友達とか、家の問題が解決した後の執事くんとかだね。

あくまでも涼は自分を勘定に入れずにレイピアに言った。

「それは違うよ涼くん、私は涼くんの事を言ってるんだよ」

涼が遠回しに誤魔化したことをレイピアはズバリと言ってのける。

何時も口角と眉が吊り上がってニコニコとした印象のレイピア。

そんな彼女が見せた真剣な顔に涼は気まずくなってしまって話題をそらそうとする。


「お使いだけど気をつけてね、レイピア、

道に飛び出さないでね。左右の確認とか、周りをちゃんと見て動くこと」

まるで小さな子供に言い聞かせる様に涼は言うので、レイピアには不評だった。

はーい、分かってるよレイピアは適当に返事をして飲み物に口を付ける。


「お二人とも仲がいいんですね」

一通りやることが済んでしまったのか、マスターがウイスキーのグラスを拭きながらゆったりとカウンターの中にやってきた。

レイピアは少し声を上ずらせてそうかなー?と恥ずかしがったが、涼は複雑な顔をしてレイピアに突っ込まれる。

「なんで涼くんそんな顔してるのよ~、私傷ついちゃうんですけど~?」

涼は自分たちの関係を知っているマスターの前でそんな事を言われてもねとため息を吐いて見せる。

「どーしてオジサンみたいに力の抜けた溜息なんて私の前で吐くの~、ねぇ!」

「まぁまぁ、お二人とも落ち着いて下さい。ほかの方もおりますから」

マスター眉一つ動かさずに二人に話を掛ける。

「マスター聞いてよ~、涼くんがね、私には買い物出来ないんじゃないかーなんて心配してるんだよ~、ほらっ、地図なんて用意しちゃってもーぅ!」

レイピアは文句を言っているように見えて内心どう思っているかはマスターには分りかねないが、少なくとも子供のような扱いをされて怒っているといった具合ではなさそうだ。

隣でオムライスを頬張る、地図を描いた張本人も特に言ってこないので、いったい何を見せられているのか、マスターには分らなかった。


ちゃんと買って来れると良いですねとマスターは言って、話を続ける。

「当たり前だと思っている事が一番無くなった時に困るものですからね、私も先日それで痛い目を見ましたからお二人には是非何事も変わるときは一瞬であると思いながら生活していて欲しいですね」

いったいどんな失敗をしたんだろうとレイピアと涼が予想しているが、マスターからすると別に大した話ではないので話す気はなかった。


「マスターさんは何か失敗をしたことがありますか?」

こう聞いたのは涼だった。

マスターはレイピアが一週間近くここで働いていたので少しは知っているが涼に関してはあまり知らない。ある意味初めてやり取りをするかもしれないですね…と思いながらマスターは落ち着いた低い声で話をした。


「失敗ですか?大小数問わず私は失敗をしていますよ。今日も日替わりのメニューを半ば間違えて作ってしまったことがありまして、そこまで忙しいわけではないのでよかったですが、私のお昼ご飯になりましたね。この職業ですと曜日の感覚を失いやすいので日替わりランチをたまに間違えるんですよね」


この手の職業の人ではよくある話なのだろうか、涼は分からなかったがマスターは話を続ける。


「私からは失敗を恐れるなとは言いません。リスクを理解する事は必要ですし、過剰な自信は傲慢と周囲に間違った印象を与えますから気をつけて下さいね」


涼にそんなアドバイスをすると、他のお客さんからのオーダーを取る為にマスターはカウンターを出て行った。


涼より先に料理が来たレイピアはもうそろそろ料理を食べ終えるところで、涼もそろそろと言ったところだった。

「さて、レイピアもそろそろ食べ終わるし僕も食べきっちゃおうかな」

涼はどうやらレイピアやマスターと話しながら食べ終わるタイミングを合わせていた様だ。


「うん!そだね、食べ終わったらお買い物は私に任せて涼くんはたまにはゆっくりしてるといいんじゃないかな!」

レイピアからすると、いつも涼はあれをしよう、これをしようと考えて動き回っている様に見えていた。

だから買い物をかって出たと言うわけだ。


「たまにはね…うん、お言葉に甘えて夕方位までぼーっとしようかな?」

課題も全部終わったし、何かラジオでも流しながらうたた寝でもしようか、涼はそんな事を考えてレイピアと一緒に昼食を食べ終えて来た道を戻って行った…


ここからはレイピアの一人旅…とは言っても近所をぐるっと回って買い物を揃えるだけなのだが…

「よーし!がんばるぞー!」

本人のやる気は高いので空回りしない事を祈ろう…


次回へ続く!


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