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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第四章 路地裏と宣戦布告
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番外編 空色ターコイズ その一

 話せない事が沢山あるけど話したいこともまた沢山あるんです。

そんな私はただの高校生、でも今はいろんな事があったのでいっそ自分は座敷わらしとかだったらいいなって思ってみたりしてます。


ちょっとした反抗期のつもりなんです。

離れようとしても何故か付き纏ってくるしつこい親の手へNOを突きつけてみたくなって…

思い立ったが吉日でその日の内に準備を整えて家を黙って出てきちゃった。


きっと間違った事をしている自覚は家を出てから三十分足らずで芽生えてきていた。そもそも世間知らずなんだ。


私は住んでいる屋敷の外へほぼ出たこともなかった。

だから、私の知っている事なんて世の中の全然なくていっぱい道に迷ったし、私が一人でなんにも出来ない事の証明になってしまいそうで焦って、不安で堪らなかった。


それでも世の中捨てる神あれば拾う神あり…なんて私にだけ都合の良い事には全部なるわけじゃなくて、縋り付いた先が良かっただけなんだろーな。


本当にありがとうございますとしか言葉が見つからない相手が短い間にすっごく増えた気がするよね。



「それでもさー、涼くん課題はまだ終わんないのー?」


私が話しかけたのは奇妙で奇天烈なルームシェアのお相手、私と同い年の高校一年生北村涼くんだ。


入学式まであとそんなに時間は残っていないのにあと少しで終わるからって言いつつも初めて会った晩からずっと勉強している気がする…


「うーん…まだもうちょっと掛かるかな~」

それさっきも聞いたよ~もう、折角何も無い日なんだから遊びに行ったりしようよ~ゆずの木いこー!!


「はいはい、これ終わったら全部課題クリアなの、レイピアは良い子だから待っていられるよね?」


えー、何か扱いがぞんざいな気がするよ涼くん!!私は涼くんのなかの優先順位の改善を要求しまーす!!

女の子をあんまり放ってくとね、後が怖いんだよ!!


「僕は学校に入学して早々に課題もやらずに先生に目をつけられたり一学期の成績を落とすところからスタートする方がよっぽど怖いよ」


ぐぬぬ…それはそうなんだけどもう少しかまってくれても良いんじゃないかな?!ね!

お昼ごはんの時もなんだか上の空だったし、涼くん昨日やってた分で最後だって言ってたよ!


ぼふっとソファに勢いよく座り込む、テーブルでやらなきゃいけない事と睨めっこする涼くんは溜息を吐くだけだった。


構って欲しいと言うつもりじゃないんだけど!ちょっと順応しすぎなんじゃないかなって! えっと…慣れるの早過ぎない?


涼くーん? 何か欲しいものとかあるー?

「え、欲しいもの…そうだねこの世界の半分とか?」

私に頼んでもそれは流石に無理なんじゃないかな…?

叶えたとしても手に余ると思うなー、世界の半分とか。私がもう片っぽ持ってて「世界征服」なんて出来たら良いね。


「僕たちの世界なんてここから見えてる範囲位で充分だよ、それも既に誰かさんの手によって半分にされているしね」

半分こ…ま、まあ涼くんと私は一心同体みたいなものだからね!


「あのさレイピア、僕と居ても詰まらないでしょ?」

え、だって涼くん今勉強してるだもん。 私の話なんて半分以上聞いてくれなくても大丈夫だよ。


大事な事はちゃんと私を見てくれる事だから、頭の片隅にでもちょこんと置いておいてくれればいいよ。

なんて面倒な子だなーわたし…

なーんてね!思った事は迷わず口にしようと心掛けているけどわたしにだって分別くらいはあるからね!

自分の事を悪く考えてる言葉は屑篭にポイだよ!ポイ!


「うーん、でもわざわざレイピアに教えてもらうって内容でもないんだよね、今の範囲って中学校のやつだから教えてもらう事は無いしなー、どっちかって言うと思い出すって感じ」


あー、思い出そうとしてたから時間掛かってるんだね、でも涼くん学校でやったことって覚えてないの?


「それがあんまり…受験が終わってから勉強しなくなったからさ」

学校が無いと確かに勉強とか運動ってよっぽど好きじゃ無いとやらないよね、うん分かる!


「答え見ちゃえば早いんだけど、それじゃあ宿題の意味もないし…でも時間もないしどうしよっか」


涼くんいい質問だね!私なら十秒考えて分かんない問題はもうやり方も覚えてないんだよ。

いっその事ごめんなさいして赤字で答え書いちゃうよね!


「ほうほう…レイピアならそうするんだね? 分かった、やってみるよ」


本当なら中学校の時の教科書を持ってきて勉強し直すのがいいんだろうけど持ってきてないよね涼くん?


「うん…そもそも家に今あるかどうかすら怪しいよ」

え、そうなの?教科書とかっててっきり取っておく物だと思ってたよ…わたし


「それよりもレイピア、もしかしてなんだけど…全然間違ってたら違うよって言って欲しいんだけどね」

涼くんが何か改まって言いたそうにしてる、私は人の話を聞ける子なので涼くんの言葉を待った。


「レイピア、さっきから少しそわそわしてる様に見えるんだけどもしかして…」

もしかして?

「何かやる事となくて時間がある感じ?」

そーだね、私の予定は空いてるよ涼くん!

「僕はご覧の通り…残念だけど一緒に何処か行くとか出来そうに無いや」

えー、もうちょっとで終わるんでしょー? 頑張って終わらせちゃおうよー


涼くんはペンを置いて私に悟らせる様に話す、

「いいかいレイピア、出掛けたいって気持ちすっごい分かるんだけどさ…色んなことを考えると僕は止めておいた方がいいかなって思わなくもないかなー?」


私はそうは思わないよ!!

涼くんは困った顔をしていたけど私は即座に意見を否定する。


だって勿体無いじゃん! 昨日も一日お休みしてたし家事も教えてくれれば何でもやるよ!

学校始まっちゃったら上手く時間作れるか分からないから、夕飯までに帰るならいいでしょ!


「僕と出掛けても面白くない思うんだけど…」

もー、またまたそう言うこと言っちゃってー私は涼くん、君と出掛けたいんだよ?


「そういう台詞は真顔で言われるとどう返したらいいか分かんなくなるから聞かなかった事にするね」


この後の涼くんは黙々と課題に取り組め始めちゃったので私は夕方くらいまでには帰りまーすと伝えて寮室を出る事にした。


私にとって世界はやりたい事に溢れていて楽しんでいけるはずなんだよ。

慣れない鼻歌なんて吹きながら私は足元の暗い影から目を逸らして出掛けていった。


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