暗がりの怖がりさん二
長らくお待たせいたしました。
次回、いよいよ学校がはじまります!
さて、レイピアは自らの歩みだす事を決めた…僕は陰ながらそれを見守る…
応援の手を緩まずになんとか良い形で解決できればなって僕は思っている。
しかし家に帰らないと決めた以上は彼女の父親を説得して結局僕の寮室で暮らすって事になるのか…
流石にそんなことにはならないよね…?
この状態を一先ず解決してほしいのは僕の本心だけどどんな方向へ向かうとしても丸く収まる事を願うよ。
「そっかー、涼くんは楓に会ったんだね。涼くんから見て楓はどんな人に見えたのかな? ねぇ教えて教えて!!」
教えてって言われてもレイピアと彼が鉢合わせしないかどうかで内心いっぱいいっぱいだったからね。
どう言ったら良いのかな…
「印象…って考えるならならなんていうか芯のある人って感じかな? 」
意志を持って動いて歩みを止めること無く、まっすぐ前を向ける人に見えた。
それを考えると僕みたいなのが咄嗟についた嘘なんてのはすぐに見破ってしまうんだろうけど。
「ふーん芯があるかぁ、涼くんにはそう写ったんだね…でも意外とお仕事中だけかもしれないよ~?」
含みを込めた言い方をレイピアはしたれどそうなると楓くんってどんな人なのか僕も気になるよね。
「うんうん、そうだねいい機会だしなにか楓にまつわる話でもしよっか涼くん」
そのまま紅茶のおかわりと共に座敷童子と透明少年はぽつりぽつりと膝を交え、肩を寄せ合い話を始めた。
レイピアが居た家のお話、思い出されたのは綺羅びやかでも無く、華やかでもない、ただの女の子の飾らない日々の話だった。
楽しいことは無いわけじゃないよとは言ったけれど、レイピア引き起こした悪戯や失敗談などが多かった。事あるごとに楓くんが彼女のストッパーとして登場している。
久井楓、あの人自分をでレイピアの付き人って言っていたけど
「大元を辿ると私の一家が本家で楓の家が分家って感じで位置づけられているんだ。
結構私のお家古い家系らしくって私歴史とかというか興味がないしあんまり詳しくないんだ…なんか有名人? みたいなのに届くみたいなんだよね~」
「古い家系ってどれくらい遡れるとかまでは知らない?」
「ぜーんぜんだって私には関係ないもん、思い出したら言うからね!!」
別に誰の出身がどうだからとか僕には関係ないのでこの話はレイピア思い出したらということにしておこう。
「でもだーんだん楓もそうだけど素っ気無くなっちゃうんだよね、最近はやれあーしてください、こーしてくださいって、どーして何だろう…」
それは…僕にも良く分かんないや。人の言う事を聞けばいいのか、それとも自分で考えればいいのか
レイピアは多分少しだけ他の人と話してきた時間が違うんだ。 楓くんとちょっとずれがあったとしてもそれが普通だと思うよ。
「涼くん、大人ってどうやってなるんだろうね」
ぼーっとレイピアは僕にそんなことを尋ねてきたけど僕はその質問に直ぐに答えることができなかった。
そーだねー、僕も大人になるやり方は知らないな。 どうやってなるんだろう?
「でもさー私達さー子供っていうのも何か違うんじゃないかなーって」
それは…僕たちの場合少年とか少女とかもう少しすると青年って呼ばれたりもするよね。
そういうことじゃ無いの? …そういうことじゃ…ないって?要は考え方の話って事?
「そうなのさー、お酒ーとか煙草ーとか大人になったから出来ることはそれなりにあるしもしかしたら楽しいのかもしれない…
でも、私にの周りにいる大人の人達は子供の私に興味が無い人だった。
他の人は愛想の良い顔ばっかり私に向けて何にもしてくれなかったんだよ」
そうなんだ…それはまた随分と偏った大人達だね。
でもマリアさんとかマスターはそうすると今までとは勝手が違ってたんじゃない?
「そうそう、マリアとマスターってまだ会ってそんなに時間経ってないし、全部が全部分かった訳じゃないんだけどね。
そういえばレイピアは昨日シーツ被って部屋を暗くしてたけどあれはいったいどういった意味があったの?
気になっていた事をこの際だからと聞いてみた。
「えっ?! あれはそのー…い、いいじゃん~ベつに何でも」
白いシーツのあの可愛らしいお化けににもう一回会ってみたいなー?
なんて冗談を言ってからかいう僕とジタバタするレイピア、僕はこの子に少しずつ心を許しつつあった。
「あの時はね!マリアから一昨日一緒に映画を見る約束してて、部屋を暗くして待っててって言われたから、驚かそうと思って…」
マリアさん…確かあの時間何にもないって言っていた気がするんだけど…でも僕がこの寮に初めて来たとき事前に報告してたわけだし…あれ?
「そしたらすっごい涼くん驚いてたもんね、びっくりしちゃった」
あれは誰でも驚くって、不可抗力だよ不可抗力。あんまり言いふらさないでよお願いだから、
「え〜? どうしよっかなぁ〜?」
にっしっしっしーなんて悪戯っぽく笑うのはいいけど本当にやめてね?
「しょーがないなぁ、いいよー」
あ、良いんだ…それよりも僕の事はあんまり触れて欲しくない本から僕は話題を変えることにした。
「えー、もうちょっと涼くんの話させてよー」
レイピアは僕の話を聞きたがるけど僕は自分についての話はしたくないんだよね。
なんて言うのかな…自分の薄っぺらさ自覚して少しでもよく見せようとする…僕は僕が嫌いなんだ。
このまま話をそれとなくマリアさんとゆずの木のマスターに向けて逸らす、穏やかで落ち着いているよねあの二人。
雰囲気が似てて愛想がいいからご近所さんとかと仲いいんだろうな、あの二人こそ大人しく大人って感じだよね!!
マスターのところで寝泊まりしていた時の数日間の話、お客さんに気のいい大人がいてこんな人もいるんだって驚いた事、働くってこんなにも疲れるんだね。 そんなことをレイピアは話してくれた。
「でもでもあの二人は怒らせちゃいけないタイプの人だよねー、なんていうか爆発しそう」
「爆発するんだよ」ば、爆発?
「どっっかぁぁぁんって!!」
…何故それを強調するかは聞かない事にするね。
そうだ、ねぇねぇレイピア、君から見て僕ってどんな風に見える?
自分のことを誰かに聞くなんて僕にしては珍しい事だと思いながら彼女に聞いてみた。
少し間があってレイピアがなんて答えたと思う?
「涼くんってどんな人…どんな人…そーだねーまだ私には分かんないけど…悪い人じゃ無いんじゃないかな」
ってそんなふうに君が思ってくれるなら、少しは自分をマシだと思えるよ。
普通の人になれたら良いのにな。
「どーしたの涼くん、落ち込んでる?」
落ち込んでる訳じゃないよ、いつも通り…いつも通りの瘡蓋剥ぎだよ、
「あんまり自分の事を悪く言っても仕方ないと思うけどな…」
紅茶を飲み終えて部屋の明かりを点ける時にレイピアがはっきりと僕に向けて呟いたのが聞こえたけど僕は柔らかく聞き流した。
僕が我慢すれば良いことだね、うん任せて…僕はそういうのには慣れている。
「さーてと、私はちょっと疲れちゃったから一回部屋に戻るね」
お皿とカップは僕が片付けるよと言う前にレイピアがそそくさと片付けてくれた。
「涼くん、わたし嘘とかつくの苦手なんだ。
思った事は声にすぐ出ちゃうし…でもそれが素直な姿だからせめてこの部屋の中だけでも…わがままでいたいなって思うんだけど、いいかな?」
それ位なら…でも僕も未来のロボットじゃないから
不思議なポッケや十万馬力は持ってないんだ。
古いランプの精でもないから願いは叶えられないけどいいのかな?
「うん、いいよ! 私のことちょっとだけ見ていてくれればいいからね!」
襖を閉めて居間から自室(和室)に移ったレイピアを見送って一度呼吸を戻す。
すっごい緊張した…!!
自分でも何やってんだよって感じだけど本当これ心臓すっごいばっくんばっくんいってる…気付かれたかな?! うっわ、恥ずかしいんだけど…
レイピアには少しだけでもこの部屋にいる時間位、安心して欲しいよね。
旧家って言われても
久井 楓はレイピアを連れ帰るためにどんな手を考えるんだろう、もしここにレイピアがいることが既に分かっていたとしたら…わざととぼけてみせただけなのかもしれない。
考え過ぎなのかもしれないけれど僕にはこれ位が丁度いい。 すべての不幸が杞憂で終わればいいのに、予想もしなかった出来事ばっかりが降りかかってくるんだからもうなんだか全てが嫌になってしまうよね。
やらなきゃいけない事もある、課題とかさなんでやらなくちゃいけないんだろうね。
宿題なんてやったって意味ないって、絶対。
僕はやりたくない事でも別に苦と思わずにできるからいいけど、勉強ってなんでしなくちゃいけないんだろうな。
不思議なこともたまに起こったりするけど僕はレイピアの話を基本的には信じている。
これで嘘だったら良く出来た嘘だと思うしかないよ。
学校が始まる日の天気をラジオはおおむね晴れるって言っていたけど、僕は明るく大らかになる気には全くなれず、もやもやと晴れない気分が溜まっていくだけだった。
うちの部屋の座敷わらしをどうしたらいいのか、僕には全然いい考えが思いつかないまま時間ばっかりが過ぎて行ってしまった…
次回へ続く!!




