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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第四章 路地裏と宣戦布告
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路地裏と大百足2

 常識の枠組みから大きく外れてしまったものを見ると物怖じというのかストレスを感じるものだって個人的には思っていたんだけれど非日常というもよりかそれ最早日常だよねとボク個人としては思う。


目の前で起こっている出来事であっても無関係ならば無関心でありたいし首を突っ込んで藪から蛇で痛手を受けては割に合わない、「危ないから下がってて」なんて言われてしまってはどうにも見守る他にないけども心の何処かに引っかかった針が昨日からずっと違和感を僕に与えていた。

信じれば救われるのであるならば僕はもっと楽天的な性格をしていて厭世的ではないはずだよ。


「慢性的な社会不安と将来展望の無さと言えばもう既にそれは人の手に余るものなのですよ!!我々は一人で立ち続けられるものだろうか!?いいや違う、我々は藁にでも縋らなければ生きていけないものなのだ。

そしてそこに貴方が保護している凡庸で凡俗なモノとは違う、貴方は…この世界では生きてはいけないんデショウ?」


僕は普通に今まで生きてきたからそんな台詞を聞いたところでまるでピンとこないのだけれど柊さんは男に対して苛立っている様子だった、声も少し上ずっている。


「なんだってカミサマなんて信じなきゃいけないの?

それに何?貴方の言い草だと私がカミサマのナンタラって言うじゃない、真っ平御免よ誰かに妄信的に信じられるなんてお金を幾ら積まれたって引き受けるもんですか!!」


先程知り合った女の子が薙刀を構えて路地裏で自分の背丈を優に超える赤黒い百足と対決しているだなんてなんの冗談だって言うんだ。

薙刀って言ったってあくまでその扱い方を学んだり競い合ったりするもので真剣同士の決闘をするわけじゃないから僕は柊さんにこの状況の対処を任せてしまったのだけれどそれ本当に大丈夫だろうか…


「はっ、自らの行動に責任も持たないでしょう男の説法なんざ聞いたって三文にもなりゃしないわ、芝居ならもっと見たくない。口ばっかり達者だって仕方ないしあんたはそもそも外面から勉強してきなさいな」


百足は半身を立ち上がらせながらその毒牙で柊さんを狙うものの彼女の身のこなしは真っ直ぐはっきりと刃を走らせて百足をあしらうのだった。


「貴方は「神子」になれるやもしれない貴重な存在なのですよ!?それを憎っくきあの男に奪われて…どんな卑怯な手を使って貴方を騙し誑かしたかは存じませんが貴方の目を覚まさせていただき更に私はあの男をこの力で撃破するのですよ!」


第三者から見ると昼間から酒に酔ったニートに絡まれた可哀想な学生なのだが本当に不自然な程に男の視線と目線は此方を向いていなかった。

一人芝居で自分の演技に陶酔するとか可哀想な人だと適当にスルーも出来るんだけど何かあってからでは遅いし流血騒ぎになったら僕は躊躇無く青い制服の人を呼んであげる。

なんの責任も持てないけどもしもの時の為に僕はこの場を離れる決心を出来なかった。


「…はぁ、何を言うかと思えばそんなゴシップ誌並みに下らないこと言うもんじゃないわよ。あの軽薄で調子の良いひねくれ者がそこの多足生物なんかに負ける奴なもんですか!私にすら傷一つつけてないくせに何を言いだすかと思えば…!」


彼女の挑戦的な口調は強がりには聞こえなかった。

穏やかだった日差しは雲と風をいつのまにか連れてきて辺りはどうも不穏な雰囲気になっていく…


「…貴方らしい良い口上ですね。あの場から去ってしまったのがやはり惜しい、しかし空白の時間は幾らでも埋めて差し上げますから安心してください、ここからは貴方を満足させてご覧に入れましょう!!」


男が胸のポケットから取り出した手帳から何故か黄色に発光する。

「何をしたって無駄よ」と言いかけていた目の前の彼女は百足の変化に気づいて余裕がある表情を崩し面倒ねと言わんばかりに息を吐き薙刀を構え直した。


「あくまでも抵抗する気ですが…お労しいことですね、それでは…行きなさい!!」


男の命令を知ってか知らずかとぐろを巻いていた巨体がアスファルトの上を藪の中を走る様に音を立てながら此方へ向かってくる、ただの突進だとしてもこの狭い路地でそれはかなり有効だ。

「何ぼさっとしてんのよ下がった下がった!」

僕は柊さんに急かさせて路地裏を元来た方向へ逃げていく、逃げた先に何がある訳でもないし助けとか求めたところでアレに対処出来るかも怪しい。


「巻き込んじゃってごめんなさいね、これ私が巻いた種だから貴方は私が忘れた筆箱を届けてくれたからもうokよ」


女の子の腕一本であんなの相手出来るわけないよと言いかけたがここ2日でレイピアにD51を見てきたらもしかしてこの人も…と思って前へ出る様なことはしなかけど、漫画の読みすぎかな?

「はぁこれ嫌なのよね、あんまり長いこと使うと危ないから…!」


何に驚いたって爆発音と共に柊さんの目の前が真っ赤になったことだよね、アクション映画とかで見たことのある派手な爆発が起きててそれを目くらましに柊さんが回れ右して路地裏から大通りへ逃げの一手を打った事にも少しだけ驚いた。


「無益で疲れることは基本しないって決めてるのよ、さあ走った走った!!」

恐らくその言葉には少しだけ嘘が混じっていたと後から考えて思うのだが口調から察するにしてやったりといった気持ちが前のめりに出ていたのだろう。僕らは大通りへと急ぐ、あのデカブツを多くの民衆に晒す度胸はあの男には恐らくないだろうと柊さんはこの時思っていたのだという。


「いけませんよそんな群衆の中に身を置いては、貴女が輝ける場所は用意されているのだから!」


百足が僕らの行く手を塞ぐようにビルの壁を器用に這いずり回り前へ出ようとしたのを見越して柊さんはビルへ向けて薙刀を振り上げと思ったら刀部からマッチ棒でも擦ったの様に朱い意思が飛び出して飛んでいきカサカサと蠢く脚の何本かに燃え移った。


「勝負ってのはなんでも使うもんだしどれだけ仕込んでるかだったりするの。過程は大事けれど結果が出なきゃ話にならないって、てっぺんを夢見ずに山に登る人いないわ」

話は少し見えてこないがここまでの展開を予想の範囲内としていたのだろうか…?

「大事なのは勘と流れの把握、試合展開と文脈…勝ちの旗色はその時によって色を変えるの…なんちゃって私にこの道を教えた人のオマージュなんだけどね?」

此方にはにかむ柊さん、いやいやそれどころじゃなくて僕は色々説明が欲しいのだけど、

「それはそれとして…さっすがに硬いわね」

柊さんの顔は依然として曇ったまま百足を睨み思考をやめない。

考えて実行できる人は僕みたいにはならないんだだろうなどと無関係で無愛想な事を考えて背後でしたり顔をする男を柊さんに教える。

彼女の顔はまた曇りを通り越して砂糖の入っていない珈琲を飲んでしまった時の様な顔をして薙刀を払ってライターに火を灯すが如く当たり前に火を放つのであった。

危ないから間違っても人に刃物と火とくしゃみは負けちゃダメだよ、涼君からみんなへのお約束!!最悪人間関係が崩壊するぞ!


「こんなもんじゃ抜けないか…はぁ、いい加減にして欲しいわねストーカーさん、私はあんたらみたいなのと連むのは札束で頬殴られてもゴメンな人間なのよ?最も世の中にはお金が一番だって人もいるだろうけど…

特別な人間なんてごまんと居る、別に私なんて血眼になって探す価値なんてまるでないんだから」


パチパチと柊さんの周囲で火花が挑発的な音を立てる、本格的なやり取りはどうやらここかららしい。いや早く逃げよ?


痩せぎすの男へ向けて走り出した柊さん、百足を操る相手をとっとと取っちめてこのいらない件を終わらせるつもりだが百足が思いの外主人思いらしく素早く反応して戻ると膠着状態を作ってしまう、焦りこそないものの苛立ちは双方に募るばかり…

「あれだわもーいい、まどろっこしいの飽きてきた、ダメなのよそーいう無言タイム、私をおしゃべりさんと言いたいならそー言うがいいわ!」

刀身が走った空に火線が張り巡らされて焼け落ちていく、燃え移らない様に本能なのか反応なのか百足もそれを器用に避けるので彼女は面攻撃を止めて直接的に攻撃を開始する。


距離を詰めて振り下ろした一撃は百足の硬い甲殻を金属音に近い音を立てて削っていく、

「こんなもんじゃあいつはおろか私ですら捕らえられないわよ!!」


百足の節の一つがぐしゃりと振り下ろした薙刀によって潰される直前に百足の尻尾が彼女を捕らえようと包囲を企んだがコンクリートの上でそれは飛びすぎでしょと言うくらいに柊さんは飛び上がりそれを回避するのであった。


「なんか人間離れしてるなぁ…」

親愛とまではいかないが仲の良かった中学時代の級友よ、ここはげに恐ろしき場所だ…

新学期すら始まっていないと言うのにこの先どんなトンデモが飛び出すのやら僕は不安でお風呂もろくに沸かせないよ。


「ふーん反応が良いわね虫なのに、でっかいしテラテラしてるしで気持ち悪いんだけど」


埒があかない訳ではないけれどもしかして僕が一緒にいる事で彼女の足枷なのかもしれない、その気になればあの百足に体に巻きつかれて簡単に人質になってしまいそうではある。

ただ殆ど見ず知らずの関係の僕は人質としての価値は薄いので

こっちに活路を求めるのは間違ってるからね?来ないでね。


「それくらいの火力でいいんだ、ふーん成る程送られてきたのは入りたての安いパシリって事ね」

それは流石に言い過ぎじゃ無いかな柊さん、幾らそれが現実的だったとしてもそれを客観視出来る人が正論としてそれを他人に叩きつけるのは残酷だよ。


「何を言っているのやら分かりませんが今度はこちらの番です!敬虔なる信仰の光でもって貴方方に救いの手を差し伸べてご覧にいれましょう!!」


大きく見開かれた目が男の不気味さを加速されてどうしてこの人はここまでになってしまったのだろう、と疑問まで感じる様になった。


「カミだかシンコウだか知んないけど存在定義もあやふやで人の作り出した都合の良いだけのものをなんで大事にできるかって話よ。無神論者は救われないなんて詭弁だわ、何かに属していることがそんなに大事じゃない。」

僕はあんまり自分の考えを表現するのは得意ではいないしそもそも自分の水溜りの様な小さく何処にでもある思慮が嫌いだから仕方のない事なのだけど


「でも、下らないと一蹴するのは簡単だけどそれしたら負けなのよね、それは思考停止で自分の可能性を自ら閉じているのと同じだからさ…私はそんな事はしたくない、目を瞑る事は簡単だけど目の前が真っ暗でも暗闇に慣れれば少しづつでも見えてくるから」


「迷い」なんて彼女には似合わない言葉だと僕はその時思った。

彼女を構成する要素の一体何がこうさせるのかは分からないけどこの人は決めたらテコでも動かない人だ。

そして目の前のものを敵性と判断したという事はそれを全力で排除しにかかるだろう。


「遊んでいる暇とか余裕があった訳じゃないんだけど待たせてる人がいるのよ、笑う火の悪魔カルシファってあんたら呼んでるって聞いたけど…まったくたかが私もあいつもアンタも人でしかないんだから気にしたって時間の無駄よ?」


柊さんの後ろに立っている僕へ柔らかく暖かな風が吹き下ろしてきたが春先の一番の様な荒々しいものでは無くてもしかしたら彼女が起こしたものなのかと僕は思う。


小さく火花が弾けて連鎖を起こして大火は唸る蛇の様に走る、毒牙を掻い潜りながら外殻を次第に削り・焼いていく、常軌など当然逸していて恐ろしいと思うけど剣道の掛け声で柊さんが相手を恫喝する大声を出して踏み込むので正直なところそっちの方が怖かったです。


「有段者なめてかかると痛い目に遭うわよ、なんだってそうでしょ?ワインのソムリエに誕生日だからってワイン送らない…うーんなんか違うわねこの表現」


甲殻を熱と強化されているであろう筋力で削っていきながらも彼女は息一つ荒げていない、逆に百足の方が動きが鈍くなってきたと思える。

「ま、私も無敵って訳でもないし副作用出る前に片付けましょうかッ!」

男が何かを言い出した様だがそれよりも早く火花が百足の周囲で弾け仰け反らせ鋭い痛恨とも言える一撃を柊さんが食らわせる、

てっきり甲殻が割れて中身が少しグロテスクに出てくるかと柊さんも思ったに違いない、しかし出てきたのはほとんど同じベースの色をした黒い光沢のある甲殻だった。


「性格悪いわね、そーいうとこよ」

突いた薙刀を引き抜きそのまま空に振り下ろして振り返るその顔は冷淡で目の前で人が倒れていても何にも興味のないと言わんばかりだった。

そんな人じゃないなと感じたばかりだったのにどうした事だろう?

「何を言っているのです、貴方はまだその恩恵の片鱗しか見せていないのですよ! それではこの耐熱温度2000℃を誇るこの装甲を貫く事は永遠にできませんよぅ!?」

そんなに納得出来ないからって声を荒げなくてもいいんじゃないかな…

「それをぶっ倒すのは私じゃなくなったって話よ、まぁスコアとかノルマとかあんだけ啖呵切ったんだからあるんでしょうし…どうぞ公安委員会委員長による極めて政治的な正義の鉄槌を」


「何を言っているので」「差し出せ悪魔の鎮魂歌を、迎え入れよう天使の子守歌よ」

それは突如にして僕らの前に現れた。どこかで見た様な不変の笑みを携えて、右肩には刺々しい黒い羽根を左肩には冷たい白い羽根を広げてこの路地裏地に舞い降りる、何が起きたかなんて僕に把握できる訳もなく柊さんと降りてきた彼自身だけが知っている、


「何なのですか貴方は!! 私の記念すべき御子との邂逅を何を理由に邪魔立てするのですか!?」


謎の男は自信ありげな顔のまま百足に歩み寄ってそっと指先でそれに触れたように見えたが次の瞬間である、ずるりと百足がきれいに二枚に分断されて白い砂となりそのまま風に吹かれて消えていったのだ。

「なん……ッ?!」


百足をけしかけた男がいよいよヒステリーを起こす直前に彼は歩み寄ってその男に手を伸ばす、

さっきの百足の二の舞になると男は考えたのであろう、狼狽え崩された自信を立て直す事も出来ずに言葉にならない喚きを言いながら路地裏の影に消えていった…

「あのねえ、いくらなんでもその登場の仕方は無いと思うし勘弁して欲しいのだけれど、どう見たってあのままで自衛はできたでしょう?自称「旅人」」


元々からそこに居た様にやって来た、男はなんと先程まで図書館に居たはずの普通の僕の同級生だった。


何を信じていいのやら人は見かけ以上によく分からない。

そんなものだと更に僕を疑心暗鬼にさせたその自信ありげで何も語らないドヤ顔を柊さんは明らかに火花を立たせて威嚇しているのだった…


次回へ続く!!

レイピア「私の出番はどっこなのさーーー!?」

涼くん「まぁまぁ、レイピア後でお菓子あげるから

」「お菓子は貰っておくけど私は出番が欲しーいな!」「「せーの僕とな!?」」

涼くん「本当に超展開すぎてついていけないんだけど柊さんも何か力みたいなの持ってるの?」

柊さん「ここってそういう解説コーナーなのかしら、別に本編でちゃんと説明するわよ」

レイピア「そんな事よりも問題があります!」\ぴょっこり/

柊さん「どしたのよこの子急にでてきたけど涼くんの妹ちゃん?」「座敷わらしだよ!」

涼くん「はいはいレイピア投稿期間が空いたのは作者さんが一番分かってるから」

レイピア「本編に関しては半年だけど!」

涼くん「う…まぁ別作品と新作10万文字作成中だし色々忙しいからね?」

レイピア「怠慢は犯罪だよ!」

涼くん「クリスマスだけどねー、そのssとかそのうち描きたいけどねー」

柊さん「やけに息ぴったりね…」

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