山猫とキャラメルマキアートその2!
さらば我が愛しのもらとりあむ
些細な幸せによって繋がっていく人生だったなら僕はそれを幸せと呼べるのだろうか、当たり前だと感じてしまう「自分達の日常は当たり前に起こる奇跡の集合体である。」なんてことを気付いてしまってはこの先へ歩んでいくことも躊躇してしまって…思想ばかりが肥大化した失敗作へ成り下がり、社会の粗大ごみとして打ち捨てられるのだろう、
ここからの話は単純明快で僕なんて生きるのが下手なんだけど、こんなことをろくに考えるべきじゃないし普通は立ち止まる必要のないのは分かっているが人が現実を嗤い、幻想に埋もれるのにはそれを探すので十分だ。
穏やかな陽気に口元も緩んでしまったようで初対面の女性に対して印象操作や打算という彼らしいこともせずなんだかんだと話がのんびりと盛り上がっているだなんて、自分はどうもお調子者のきらいがあるから気をつけなくてはいけない、頭の隅で考えつつも世間話を中心に話を続ける。
「学校に行くのはいいんだけれどあんまり深く考えなかったおかげで長距離から通うことになっちゃったんですよ」「そうだったの?私もおんなじ高校の寮生だけど…幾つか学生寮あるからもう、どこがどこだか…」
話し始めたときは言葉数も少なく寡黙で冷徹かと思っていたら予想以上に話が弾む人で気を揉む必要性は薄そうだ。
「ひいらぎさん、学生っていてもひいらぎさんって…?」「え?あぁ、上級生とかだと思ったのなら残念だけど私やっとの思いで受験に受かったばっかりよ。意外に思えるのかもしれないけれど、春から高等学校一年生、「花の女子高生」貴方が上級生なのだとしたらごめんなさいと謝るしかないわね。」
偶然ってのは重なるもので入学式前日からまたもや知り合いが出来てしまって、これでレイピアを含めて皆同じクラスとかだったら笑える話だよね~、ははっ、まさか。
「それで貴方は幾つなのか教えてほしいんだけど…ね?」
あぁ、それくらいは僕だって正直に答えるよ個人情報保護がどんなに進んだとしたって僕は年齢を教えるくらいでとやかくは言わないよ。
「ひいらぎさんと一緒の年齢ですよ、同学年…この春から新生活をスタートするドッキドキの一年生です。」
僕としては正直に答えたつもりなのだけれどひいらぎさんは何か不満なのかその顔を少し曇らせながら僕の話を聞いている。
「えっと…ひいらぎさん?」「何かしら、続けて」「何か僕変な話とか勘に触ること…しましたか?お肉の鶏皮が苦手とか目玉焼きには塩をかけるとか…」
個人的な好みが合わない場合って結構ポイント低いよね。食べ方とか地方によって違うし変な先入観を与えかねないけど
因みに僕の好きな食べ物はハヤシライスと天麩羅だよそれに海老天よりもかき揚げが個人的には好きなんです。
「いや別に食べ物の好みの話がどうだって話をするわけじゃなくてなんかさ…かしこまった態度止めない?なんか北村に怖がられてるみたいで嫌なの」
いきなりタメ口が飛んできたのには驚いたがまさかそんな反応が待っていようとは僕は微塵も思っていなかった。
僕は何をひいらぎさんの何を怖がっているのだろうか、今僕はさぞかし面を食らって間抜けな顔をしているんだろうな…
人と仲良くなるためにまずは形から入るタイプなのか、それともあんまり深く考えは持っていないが僕があまりに遠慮しているから?
僕は素でも遠慮がちで自己主張はあんまりしないのでこれを今すぐ変えろと言われても困るし僕らは先ず持って初対面だからね、此処から先はWEBで!じゃなくて学校で!って感じで行きましょ、ね?
「ま、私の勘違いと言うことでこの話はしなかったことにしましょ…はぁ失言ね、気分を悪くしてしまったら…ごめんなさい」
素直に謝られた。
柊「さん」もこう言っていることなので僕も深くは言及する様な事はせずにすんなりと会話に戻ることが出来たが、彼女の言葉は僕の胸にしこりを作ったのだった。
「今日はどうして柊さんはここ(図書館)に?」
本を読むにしたってそこには色んな理由があるはずだと僕はその意味を込めて柊「さん」に質問を投げ掛ける、
僕への詮索はあまりしないで貰いたいのが本音なのだけど聞かれたらまぁ…初対面なのに不思議と緊張とか不安感も無かったので答えても良いかな?
「うーんそうね、簡単に言うなら暇潰しかしら。
勘違いしてほしくないのは目的もなくここに来たんでは無いわ、北村も苦労してるであろう事前課題にとどめを刺してやりたかったのも勿論あるけど一番は待ち人なのよある人を待っているんだけど用事が夕方まで掛かるって言われちゃって…あぁそうだ、部活動の募集期間ってGWまでなの知ってる?」
頷いた僕はあんまり部活については入ることを考えていなかったのであんまり感心はなかったけれど資料にあったのを薄っすらと思い出した、たしかここの高校部活動がいっぱいあるって話だったっけ?
「まぁ、それで中学の頃はやってなかった色々な部活に顔出したりしてはみたんだけどどうやら元鞘になりそうなのよいやぁ、飽きたとか思ってても久しぶりにやってみると案外と盛り上がるのよ!!
…ってのはどうでもよくって、それが終わって待ち人に連絡付けたら夕方まで空いてないって言われたから折角の空いた時間を有効に使おうと思ってさ、「time is money」時は金で買えるのよ」
最後にそんな名言のようで名言でもないことを言われても反応に困るんだけど…してやったり言ってやったりと得意げな顔をされても…それ間違ってません?それとも少しひねったのかな?
「「time is money」ってそんな意味でしたっけ?」
「そういう意味よ食品とかサービスって根音的にそういうことなんじゃない?材料を時間と労力を掛けて自分の好きな味で作るのと少し高かったりおんなじ味で簡単にレンジでチン!!ってできる冷凍食品とではやっぱり違うでしょ?」
うーん、柊「さん」の言わんとする事も分からないでもないけど…時間とお金が平等とは僕は思わない。
お金はたしかに大切なものだけどそれを手放してでも時間と経験ってのを積んだほうが僕らはその分幸せになれるんではないだろうか、しかし幸せなんて曖昧なものを追い求めたとて仕方ないと僕はあまりに卑屈すぎるのである。
「冷凍食品と手作りじゃそれは差が歴然過ぎないかな」
「なのよねー疲れてると外食がやっぱり一番楽だったりするのよ、でもそれを上回っていくのはやっぱり家族との食事かしら?」「う…んそうだねやっぱり違うよね」
レイピアといるときもそうだけどどうもこっちの真意を見透かそうとするような聡明であまり飾り気のない人を見ると自分の計算尽くで動くというなんとも卑しく映るのだけど柊も案外そっちの人だったりするなこれ…
「あ、もうこんな時間か…ごめんなさいねもう少し話がしたかったんだけどそろそろ駅で待ち合わせしてるから行かないとって思っているんだけど失礼しても良いかしら?」
柊は腕時計で時間を確認すると広げていた雑誌と勉強道具をしまい始めるというか帰る気満々じゃないか、別に止める理由も見つからないしいいけど
「そうだね、待ち合わせとか約束事とかはなるだけ守ったほうがいいよね。それを破るとすっごくお冠になる人ってよくいるから」「そーそー、人との関係ってどこで損ねるか分かんないから面倒に感じるときとかもあるけど…でも人はきっと一人では耐えられないように出来ているのだって私は思っているわじゃあね北村くん」
静かに立ち上がってPコートを羽織って薙刀の入った身の丈もある黒い袋と長髪をなびかせると、こちらに微笑みかけて少し急ぎ足で彼女は待ち人の元へ向かうためにこの場から去っていたのであった…
「…僕は別に一人が好きなわけではないんだけどね…」
負け惜しみでも何でも無いのだがふとそんな言葉を独りでに僕は口にしていたが苦い思い出は珈琲と砂糖を加えて飲み込んでしまうのが一番なのでここではその話はしないでおくとしよう、それよりもそろそろレイピア達のところに戻るとしよう、問題に四苦八苦することになるのは僕もおんなじだし…ね?
「あれ…これ誰のだろう?」
立ち上がろうとした矢先僕はこげ茶色のテーブルの上に擬態していた黒い犬をモチーフにした筆箱らしきものがそこでのほほんとした顔をこっちに向けている、あれおかしいな~これ誰のだろうなぁ~?
答えなんて僕のじゃないんだから真実は何時も一つ!!ってそんなことをしている場合じゃなくて柊「さん」を追いかけないとだね。
「まだそんなに遠くに行ってないといいんだけど…」
急いでお店のお会計を済ませて僕は図書館から出て彼女の姿を探すものの自転車とかでここに来たんだとしたら絶対に僕なんかじゃ追いつけないだろうけど…「あ、居た!?涼くん一体何処に」「ちょっとそれどころじゃないから少し席外すからじゃあね!!」
図書館から出てきたところを誰かに呼び止められた気がしたけれど図書館の通りの端に見えたあの長い薙刀の入った袋がちらっと見えてそれどころじゃなかったのだけどあの時僕が立ち止まっておけば色々と事態は多少なりとも良かったのかもしれない…が僕は背を向けて柊を追いかけるために走り出してしまったことは失敗だったんだけどこのときはそんなことは微塵も考えずに僕は追いかけていった…
路地を駅前に向って走っていく、あんまり体力には自信ががないんだけど相手は歩いてるんだし追い付けるだろうとたかを括っていたら信号機やらで時間を食って繁華街近くまで気が付いたら彼女をすっかり見失っていてしかもここはどこだか分からなくなるという始末、これなら素直に図書館の人に落とし物ですと言っておけば良かった…
駅の方向は大体分かっているのでそっちに向かえば間違い無いだろう、車通りの多い通りから一本裏の通りを駅に向かうと事務所や塾などが並んでいるビル街へたどり着くと砂利道と駐車場が左手に現れて視界が一気に開ける。
やっぱり駅までそこまで距離は無い様で機能性しか気にしてないのっべりとした高架線が空中に脚を伸ばしていたがあれは僕が乗ってきた列車の走る場所なのかなだなんて考えてる暇があるか、早く駅に行って柊にこれ(筆箱)を届けなくては!!
駅の方向へ進むと今となっては珍しいアーケード街が広がっている、渋さと懐かしさがこみ上げるここらへんに確かマスターが営む純喫茶「ゆずのき」があったんじゃなかったかな?
肩で少し息をする僕の目線の先に数分前に見かけた黒く隠された刀身がちらっと見えて僕は息を整えるとその曲がり角に向って勢い良く走っていく、やっと見つけた…と思ったのもつかの間で僕は曲がり角を曲がったところで薙刀の入っている袋の先が僕の首元に来た時には驚くというより呆気にとられて息するのを忘れてたよ。
「アンタね尾行するんならもっと上手くやんなさいよ変質者、その脂っこい視線がってあれ…えぇどうして貴方がこんなところにいるのかしら?」
それはこっちが聞きたいところなんだけど柊何でこんなところにいるの?
「なんか図書館を出た後でなんか嫌ーな視線感じてあっちこっちで撒いたと思ってたんだけどここに来て追いついて来たから自分の身は自分で守れってね、変質者は悪・滅・斬首よ」
何時からこの世は刑死が個人の範疇で行われるようになってしまったのか…涼くん悲しいよ、
「それ、聞く人にとってはかなり危ない人に聞こえますから冗談を言うにしても人を選んでくださいね柊さん?」「だからさんは余計よ北村」
ストーカーの正体が僕で安心したのか柊「さん」は小さく息を吐くと
「そんなことは分かっていなきゃこんな発言できないわ、冗談も通じない人とは話していてもつまらないし、貴方はそんな人じゃないでしょ?」
柊最初は冷淡無情な人かと思ってみたらどんどん優しそうな人柄が出てくるけど人は見かけによらないってことなのかな?
「あ、それ私の筆箱じゃ…あっちゃ~また忘れてたか~」「また?」「私忘れっぽいのよ物事っていより忘れ物が多いの、しまい忘れとか…ドジなとこどうにかしたいところなんだけど…あぁあ…またやっちゃた」
切り替えが早いけどうっかりして置いてきぼりにすることもあるって感じかな?
「それにしたって視線がずっとつきまとってきているときてるんだけど北村アンタファンとかいるわけ?」
そんなわけ無いでしょ柊「さん」僕がひとに好かれるようなことを進んでする人かと思っているなら買いかぶりだよ、ぼくはそんな人望を集める質じゃないし目立たない道端に生えた雑草くらいにどうでもいい人だからさ…
「そこの電柱の影に隠れられると思ってるわけ?そうしたら随分とまた思い込みの強い奴なのね、あんまり勿体つけてると小物に成り下がっちゃうけと良いのかしら?」
電柱の裏って思いっきりストーカーとか危ない人だよね、柊「さん」何か恨みとか変な気を起こすようなことしたの?!
「北村、何か誤解している様だけれど私べつに誰にでも優しくするとか出来ないわよ、計算と打算で愛想を振り撒く器用な真似なんてごめんだしね。」
柊「さん」は持っていたバックを僕へ突然放り投げてくるものだからびっくりして取り損ねて落としてしまうかと思ったよ、
袋から取り出したのは木製の長い彼女が言っていた通りの薙刀で勢いよくそれを取り出すとストーカー(容疑者)へ警告のつもりで
「おやおやぁ、気付いていたようでこれは重畳、わが主上の君が微笑んでくれたのでしょうねぇ?」
電柱の影から姿を現したのはやせぎすの男だった、前屈みに長髪で目元を隠しこちらに表情を隠している。
「おおやはり貴女でしたか御子よ、その姿を隠されてから我々はこの日を待っていました!さあ有るべき場所に至りましょう?」
いきなり出会い頭にこの人なに言い始めてんだー!?
どこからストーカーしてたか分からないけどこの人あれだよとっても危ない人だよ、昼間からお酒とか飲んでハイになってきっと心にも無いこと言ってるんだと思う、そうじゃなかったら…
「貴方…どこの誰だか知らないけれどこの御時世、粘着質な男の人は嫌われるわよ。それに私宗教とか信じない質なの、ごめんなさいねさっさと私の視界から立ち去って頂戴」
柊「さん」は静かにそしてはっきりと男に対して拒絶の意思を示して薙刀を頭上に構える、恐怖よりも怒りの方が上回っているというのは彼女の言い方と表情を見れば僕でも分かった、眼の前の男と何か浅からぬ因縁でもあるのだろうか、まさかね…
「我が身は何時でも火之御子ものへ至る用意はできておりますればさぁ!不滅なる輪廻のもとへ円環の虹は微笑まん!」
き、教義でも演説しているのかな、雄弁だね髪型とか乱れてるしほほコケて青白い肌が不気味だよ?
「うっさい…黙れ、リストカットさせてピラニア軍団のいる池にウォーターハザードさせてやるわ、これ警告のつもりだけどこれ以上は私を怒らせないことね、痴漢されたから正当防衛で後遺症が残らないくらいにフランベ差し上げましょうか?」
冷徹に激情を放っている柊「さん」に少し冷や汗をかきながら事を収めようと僕も動こうかと思ったが僕には関係ないしあんまり立ち入るべきではないだろうな。
「それは我が天上の君おける宣戦布告ですかなぁ? あぁ、あまりに愚かですねぇこの広い世界からすれば貴方などノミのそれ以下だと言うのに、これは、これはこれは! 善なる神であったとしてもゆるされることではありぃませんよぅ!!ああこれは罪ありき!つぅみありぃきぃぃぃ!!」
えっと…一人で演説しているところ申し訳ありませんが精神病院は多分このあたりにありませんよ?
異常とも思える金切り声と紅潮した表情に僕は寒気すら覚える、この人はあからさまにおかしいぞ。
「勘弁してくださいますか、どなたかは存じませんがこの素晴らしいこの陽気にその辛気臭くしみったれた根性を吐き出して下さいますな、憐れみをもって遠ざけましょうか行きましょう北村くん?」
こういうときばっかり僕を丁寧にに呼ばなくっていいからね、ほら僕も目的は果たしたしそろそろレイピア達のいる図書館に戻らないといけないしって距離を近くしないで巻き込まれたくないよ僕は!!
「ふあははは!!そぉですかそぉですか、それならば仕方ありませんねぇ!!悪しき者に惑わされ曇ってしまった愛おしき澄み切った心を取り戻さんがために私はこれからさながら大天使の如く迷える子羊を導くことに致しましょう!!」
なにか小声でブツブツと言った後で急に奇声を上げたとしても僕はほとんどもう驚かなくなっていたのだけれど、男の足元のマンホールから人の背丈をゆうに超えたムカデがニョッキリと鎌首をもたげて出現したのなんて全然驚き…モンゴリアンデスワームかな?
「いやいやいやまっさかこんな展開になるなんて誰が予想したことでしょうね柊「さん」!?」
ストーカーに絡まれた結果僕らは巨大な百足さんにこんにちはする結果となって一話前の展開へとつながっていくのである、次回は僕がまた変なことに巻き込まれたところから始まるよ!!
どうぞお楽しみに!!
「「せーのっ、僕とな!?」」




