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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第三章 神住む森と紅い外套の男
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山猫とキャラメルマキアート

人生最後のはる休み

 路地裏というのは簡単に言えば繁華街等の明るい場所の陰であってこの場所には風水とか陰陽道的によくないものが彷徨きやすいだなんて勝手なイメージだとばかり思っていた。


ただゴロツキだとかヤクザ崩れのヤンキーなどがたむろするとかそういった意味ではなくて日陰というのはどうにも得たいの知れないものなんかもふらふらしてたりするようですがくすんだコンクリートと配管が張り巡らされて人通りもまばらなこの道を何かが疾走する…


「何でこんな目に!あぁぁぁもう、面倒なことこの上無いわ!

見てないけど今日の占いもしかして私最下位だったのかしらぁ?知らんわよ!!」


「はぁ…どうしてこうなるのかなぁ、やっぱり昨日の行いかなぁ…」「君のの普段いったいどんな罰当たりなことしてんの!!」


一組の男女が通りの端から姿を現して薄暗く寂しげなこの場所へ疾走してきたが、巨大な鬼にでも追われているかの様に案外と必死な形相である。

一体何が起きているのだろうか、事の起こりはそんなに時間を遡る必要は無いのでこのあとは我らが主人公に交代していくことにしよう、


 雑な投げられ方をされてしまったけれど僕に出番が回ってきたので話を始めるよ、準備はいいかな?


「僕はこれでも人見知りする質だから初めて会う人って存外緊張とかするんだよね、だからといって気分が悪くなったからという訳でもないんだけれど流石に色々と疲れたから休憩…」

足取りは少し重いけどまだ大丈夫、そんなに抱えていることも僕に背負いきれないものも最初から選択しないようにこれまでも切り捨てて来たじゃないか、だなんてネガティブなことを考えるのにここは丁度いい塩梅だ、この春の穏やかな陽気で穏やかに前を向ける。

ゆったりとした照明の下で一人で耳にこそばゆいひそひそ話は決して嫌いじゃない。 

別に本を探しているわけでもないのでふらふらしていると児童書のコーナーに行きついた、僕はあまり童話とか昔話を読まなかったので有名なものしか知らないのだけどあの手の話って教訓話みたいなのが多いよね、


「テケレクモクレン、テケレッツノパ!なんて唱えますとあら不思議枕元で不気味な鎌を研いでいた黒い男がすぅ…っと去って行ったではありませんか…」

児童書の読み聞かせコーナーで数人の子供に囲まれて金太郎らしき熊に子供が跨がった本を読んでいるのだけれど…金太郎にそんなシーンなんて有ったかな…?

あれれ、あの子どこかで見た覚えがある様な気がするぞ、あの真鍮を溶かした銀の髪は中々に忘れられるものじゃないよ。

声を掛けようにもきっかけが無いとね、別にいいか今抱えている問題を何とかしたいところだし、少しばかり自分一人で考えを整理するためにレイピア達から離れた。

昨日はそんなことを考える余力など微塵もなくて極度の疲労を感じて直ぐに夢の世界へ旅立ってしまったのでD51からの情報というのを総合してみるとしよう。

あの三人と一緒にいるとどうもそっちに気がいってしまってしかも気を使ってしまうね…

僕抜きでレイピアがあの二人といったいどんな会話をしているのか放っておこうか、今はあの子の事を考えよう。

「レイピアは座敷わらし系家出少女である」

とこの文言だけ聞いただけでもインパクトあるよね、そんなことがあったのは昨日の昼頃、僕の日常の中に転がり込んできた少女との出会い方は衝撃的だった一言に尽きる。

それは海を覗き込んだ藍い陽炎を目の前で女の子が纏っていたら驚かない人はいないでしょう?

物理的法則なんて度外視した現象はオカルト話として魔法だとか個人的に芽生えた特異性だとか、神様の与えられた奇跡だとか言われているけれどそんなことが本当に存在しうるのかな?

少なくとも僕はそんなものとは無縁な場所に居たのでまるで知らないのだけど…


それにしたって昨日のレイピアと今日レイピアではかなり態度が違うって思うのだれど…大人しいの一言では済まされない改まった態度はいったいどうした風の吹き回しなんだ?

彼女の真意は不明であるが僕の不信感を招いた事に気づいているのかなぁ?


 数学の小難しい本棚を見渡して少年は並んでいる数式の様に解を求めて貯めた息を静かに吐き出して深呼吸に変える。

予期せぬ出来事は起こりうるものだが今回の事は小説よりも奇なりといった具合に彼を混乱させる、共同生活などまるで眼中になくしかもその相手は女の子…もう勘弁して欲しいのである。


事情が事情なので受け入れる事はしたがこの状況が一体何時まで続くのか、家出した彼女を親は連れ戻す事を考えているだろう事は予想できる。

どんな方法を取るかは分からないが自分の身の振り方は考えておかなければなならない…

彼女の話したことを全て信用するのであれば許せないのは父親との関係である、義務教育をほとんど受けずに対人関係を学べない上に軟禁・束縛するのめろくな親子間係を築けていないというのは素直な感想でこんなふざけた話があるのかと憤りを覚える、


昨晩遭遇したD51の話では電話越しに自分と話したのは彼女の世話役でレイピアが昔からある旧家で大きな家の娘であるなんて漫画でしか見たことのない身分に呆れて笑みがこぼれてくる様だ。

幾ら恵まれた環境にあったとしてもそこがたじろぐことも許さない籠の中の鳥だとしたら外の世界へ羽ばたくことを夢見るのは分からないでもない。


あの家出少女は家の人のいさかいをいかにして収束・解決していくのかを考えていかなくてはならないけれど自分は彼女のために動くべきなのだろうか、冷静になればなるほど僕は損をするばかりだろうなと打算的に動こうと考える自分が嫌になって気分を切り替えようと図書館内に併設されているコーヒーショップへ向かう、


「近いうちに奴さん達は次の動きをとるだろうぜ、うちの学校へ捜索願いが出たんだから所在地の辺りは取れているんだろう。

遅かれ早かれ君は決断をする必要がある、これは助言になるんだろうが温かい居場所と言うやつはどうしても人には必要なんだ、承認欲求ってやつでね。

人は衣食住で争ったあとは精神的な安定を求め争うのさ、なんとも欲深く業がある生き物だとは思わないかい?

互いに認め合い、慈しみ合い…ってこれ以上は野暮になるけれど

もそんな仲睦まじい関係はいざというときに支えてくれるもんだ」


昨日の月が出た晩に三日月の笑みを浮かべたある人から聞いた台詞だがその助言を真に受けるだけでは始まらないんだよな…



カフェテリアに着くと昼間と言うこともあり周囲にすんでいるであろう主婦の皆さんやご老体のコミュニケーションの場になっていた、スッゴい混んでる…。


「いらっしゃいませー、はいただいま大変混み合ってますので~お持ち帰りで無い場合は相席になってしまいますがよろしいでしょうか?」


相席か…別に図書館の中でも飲めないことは無いみたいだけどどうせなら雰囲気がいいところで飲みたいよね?

はい、相手の方がよろしければお願い致しますと僕は店員さんに伝えるとかしこまりましたと柔らかい返事が返ってきた。

ホットココアを注文して案内された席には相席なので四人席で一人何か面白くなさそうにして先客が座っている。


さて、昨晩に現れたあいつがしたり顔を浮かべてジャージ姿で「そろそろ来る頃じゃないかと思っていたよ」とか言ってきたら回れ右をしてレイピアのところに戻ろうかと思ったけど流石にそんなことはなくって、座っていたのはトレンチコートに身を包んで…見た感じはそれこそ抜き身のナイフのような鋭さを醸し出しているようではあるけれど退屈を持て余す物憂げな表情が少し寂しい、僕よりも大人に見える女の人がいかにも甘そうな飲み物を飲んでいた。 


掛ける言葉も特には無くて小声で失礼しますとだけ言っておいて僕も席に着く、ふと外を見ながら本の続きを読み進めようとした時だ、斜め隣の彼女が不意にため息を一度ついて読んでいた雑誌をテーブルにうっちゃったのだ、読んでいた雑誌はどうやら流行の洋服やモデルのコラムが掲載されているファッション誌らしいが、お気にに召さなかったらしい。


「はぁぁ…流行り追いかけるの面倒なのよね…廃れるし」

独り言にしては棘のある言い方をする人がいるもんだ、勢いとか本当は買う気ではなかったのに手に取ったまま購入したもののコレジャナイ感があって後悔することって皆さんもありませんか?

多分この人今そういう状況なんじゃないかななんて…っとよく見たらこの人の隣の荷物に黒くて彼女の身長ほどはあろうという棒のようなものが目についたのだけれどあれは一体…何棒状のものとは言ったけれど先が反り返しがあるし…何ていうんだっけあの…


「やっぱり考えすぎても仕方ないし自分らしさってのを決めて、着こなしやすいのと予算と時間とを勘定に入れればいいわね…?」


自分の感性から考えがまとまった様で悩み事はしない人なのかな、だなんて人間観察するよりも僕は手にしている山猫バンガローの続きを読みながら考え事に耽るんだからさ…

あ、この人前髪の左側に朱色のヘアピン付けてるね意外とたくさんお洒落なポイントが有ったりする?

髪の毛はレイピアやマリアさんの癖っ毛とは違うストレートで少し茶色がかっているけどそうじゃない。

やっぱり近くに人がいるとなんとなく落ち着け無いな僕は、誰からもよくおとなしい性格とはよく言われるけれど内心は何時も穏やかに前を向いて何事にも毅然としているわけじゃぁないんだよね本当は、僕は結局他人にとって利用しやすいだけの無料のWI-FIみたいなものと思われているのかもしれないという僕の達観と諦観から来る変な妄想、

存在証明ができるほど僕は優秀ではないし自分で言ってはは世話ないが他人の足を引っ張る事も極力避けてきたせいか放って置かれても平気な部類の人間だし果たしてそれはこの世界で必要とされてい…あ、ココア飲み干しちゃった。

急に現実に戻った僕は近くのウェイターさんを見つけて

「「すみませーん、注文よろしいですかー?」」

あれれ…どこぞの奇術師の様に声が遅れるというわけではなくてですね直ぐ近くから僕とは異なる高くて雑踏の中でも良く聞こえそうなはっきりとした声が僕のとなりで…あっ、


「どちらのお客様からお聞きすればよろしいでしょうか?」

これはなんとも場の空気を読むKYの達人として名高い北村涼の失策だったよ、ひどいししかも

「あ、失礼しました、こちらの男性から先に聞いちゃってくださいな?」

なん…だって、自分自身考え事をしていたとはいえあの人より先にフォローをしようと切り替えた瞬間にやられた…!?

しかもなんだか大人の余裕を見せ付けられてしまって…


「えっと、あっはぃ、この伝票と同じものをお願いします」

だなんてレシートを店員に手渡す様なフォローの北村としてはなにやってるんだと言いたくなる落第点な切り返しをしてしまった。

「あーっと私はね~そ~だな~キャラメルマキアートの小さいサイズね」

仕草も目線もどことなく余裕を持っているのに言い方はなんだか子供のそれに似ている、

先ほど僕が聞いた刺々しい言葉は息を潜めた様で言った本人も店員さんが去っていった後で「失敗したわ」と開き直ってしまった様子でここで初めて品定めされているような視線が僕に向けられた。


「ごめんなさいね、ちょーど考え事が片付いてもう少しリラックスしてから出ようと思ったからついつい周りの人とか君を気にせずに店員さん呼んじゃって」


さっきまで退屈を持て余しているようだったけどあれは何か悩ましいことでもあったんだろう、自分の中で一応の決着を見たので彼女は気分を転換しようと思ったんだなと僕は勝手に予想した。


「いえいえこちらこそ、気になった本を読もうとここに来て少し煮詰まってついつい周りの人を気にせずに飲み物を頼んだのですけれど…すいません僕よく言われますよ周りの人とか気にしなさすぎだとか…」

見知らぬ人にまで卑屈になる必要もないだろうに何をやっているんだろ、と思った矢先にトレンチコートの女の人に聞こえるようにわざわざ大きく「自分に自信を持つってどうすればいいんですかね?」だなんて身勝手な事を聞いてしまってあぁもう何がしたいんだよ…と自己嫌悪が始まった。


「自分に自信を持つか~、どうしてそんなことを聞くかは深入りしないですけど質問に答えさせて貰うわね、うーん他の人と違う所があるじゃない?そいうところを人とのつながりの中で確認していくと私たちって案外単純なとこがあって互いにそこを知り合ってれば別に優秀ではなくても自分が前に進むのに理由はいらなくなるよ、自分の辿ってきた道を振り返ってカサブタを掘り返すのは意味がないからころんだ理由と転ばなかった理由を考えるべき、って少しそれちゃたけど…平気?」


何を聞いてくるのかしらとか面倒そうな顔をされるか思いっきり無視されるかと思っていたらちゃんとしたフランクな受け答えに質問した本人が面食らってしまったのに対して答えた彼女はくすっと頬を緩める。


「あなたぱっとみた感じ私と歳近いと思うんだけど…勘違いだったらごめんね?今年の四月で…」

「「高校生?」」高校生と考えてもこの人は今年三年生でしょ、きっと

「私は今日でこそこんな格好だけど何時もはもっとこう…年相応よ、あいつが着せ替え人形みたく色々着させるもんだから…それはいま関係なくって!!私今年でまだ15よ?」

え、そうなの!? 僕はてっきり…いや女性に詳しい年齢とか経歴を聞くのは野暮ってものだ、止めておこう。

「そう…だったんですか、大人びて見えたので僕とは歳が離れているのかなーって思いました。僕も来年ですけど学年は一緒ですのでもしかしたら学校でお会いするかもしれませんね」


「あ!遅生まれなのねぇ、なるほどそれはそれはーvery goodね入学式の前から知り合いが出来るなんてなんてそれはもう今後の学生生活勝ったも同然…」


僕はもう既に5人ほど知り合いがいるんですがまさかの六人目追加募集されるとは思っていませんでしたよ、

びっくりです、というよりこの人はさっきから何と勝負しているんだ…

「そうね…どうせなら自己紹介位はした方が良い?」「ど、どうでしょう?」「そう、なら私からあなたへ先に名乗っておけば返してしてくれるとgoodなのだけれど?」

この人結構話す精神的距離が近いのに僕みたいな人が嫌に感じないと言うのは不思議な話だけどそもそも僕にそんなに興味が無くて社交辞令としてなのか考えてしまうのはあまりに卑屈すぎるのでやめておく、


「私の名前はひいらぎみずほ、木に冬で節分で鬼を払う植物の柊で、名前の方はおめでたいことの意味で王ってかいて山に雨みたいな…あとはスイスって漢字で書いたときの瑞西の字の片方で後は…稲穂の穂

なんか名前負けしそうなんだけどね…」

柊瑞穂と名乗った少女は切れ長で少しつり上がった目を柔らかく閉じてバツの悪そうな顔をする、

肩に載せても余裕のある長さの髪がサラリと流れると枝毛でも気になったのか髪の先端に目線を向けて彼女は話を続ける、

「後は…小さい頃から剣道やってたんだけど今はこっちに興味を持ってます、薙刀っていうんだけど男の人って武器とか好きだし知ってそうだけどどう?」

あの黒の長細い袋に入っているのは薙刀だったのか、名前を聞いてやっと思い出した。

黒くて長細い袋となると昨日見たレイピアが持っていたあれとは大分違うよね当たり前だけど、

「僕にそんなに…でも少しだけですが柔をかじったことがあってそういう礼節みたいなものは叩き込まれましたね、冬の木の冷たいことこの上なくって…あ、僕の名前は北村涼、North Village coolを和訳して感じに直してもらえるといい感じになるよ~」

話のはじめにあった出来事について話すのは次回のお話にしようかと僕は店員さんが運んできたココアを受け取って静かに温まりつつ思うのであった…

次回へ続くよ~「「せーの、僕とな!?」」

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