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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第二章 夜の静寂に火花も舞う
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桜色の不安

またひとりになってしまった。

以前からあまり活気が無かったもののこれ以上は様々なことに支障をきたしかねない…

溜め息をついても仕方のないことだと分かってはいるけれど後から後から自然と出てきてしまうのがなんとも恨めしい。

周囲に誰もいないという感覚ももう慣れたものであり、気軽で身軽で手軽なので「楽」なのであるが「楽しい」ものではない。

季節は四月、出会いと新たな生命の芽吹く時期本来ならば喜ばしいものなのだろうが自分にとってはあまり関係無いと感じてしまう。

ある人はここへやって来て「そのうちに君を訪ねてくる人が来ると思いますからそれまでこの美味しいお茶でも飲みながら待っていてくださいね」

だなんて言ってくださいましたがそれはもう慰み程度にしかならない事を分かっているでしょうか…

 

「はぁ…徒然なるままに…カタクリの花に水をやる…」

少女が一人湯飲みを片手に縁側で溜め息を青い空へ吐くのであった…。


さて、うって変わってこちらは老若男女が密かに緩やかな時間を楽しむ喫茶店「ゆずのき」

我らはレイピアさんがデザートを食べ終わりそろそろ出陣のときを迎えていた…

この口調もキャラ付けもある意味味を出すためなのだ、少しだけ目をつぶってほしいと思うぞ?

因みに我は巧みに悪企み Gentle breeze である!!


 「本日はご来店ありがとうございました、次回も純喫茶ゆずの木をご利用下さいませ。

それでは皆さんのよい午後をお過ごしください、それと北村くん道に迷わない様に無事にたどり着くことを御祈りしておりますね?」

ブランチも食べて食後のデザートまで食べたレイピアがご機嫌でないはずがなく、マスターの依頼を二つ返事で受けて僕らは微風を加えてゆずの木を後にしよう、

僕に拒否権が無い訳ではないけれどまだ僕はこの地に来てからまだ間もない。


未知の場所へはどんどんいきたい放浪癖の持ち主なので構わない、マスターに渡された地図はこの見てみるとゆずのき(ここ)から少し郊外に出るようだ。

どんなところにしてもここら一帯の土地勘がまるでないし僕は彼女らに従うのみである。

「やれやれ、我をパーティーに加えて一層知性がましたのではないかなぁ?!」

…反応に困るなぁ、微風(この人)のキャラクターというか僕とレイピアだけならば会話は弾むはずなんだけど彼はレイピアにとってまだ知り合ったばかりの人で多分警戒しているんだろう、彼女から…いつもの軽快なトークが飛んでこない。


「知性って言えばいいのかなぁあはは…」

といっても僕の彼をあまりに知らないので助け舟とか共通の話題とか出来ないのが惜しい所


「とはいえ地図を見る限り我も行ったことのないエリアに行こうとしているな、大丈夫かこれ」「迷ったら着た道を覚えて戻ればいいんじゃない?」「うむ…学校とは反対側だな」


不安がないわけではないんだけど

僕と微風が話すだけでレイピアの本来である人懐っこいキャラクターが表に出てこないのを少し心配しながらも道を進んでいくけどここの地区の中心となる駅前から南側に来ると賑やかであった雰囲気は大きく変わって、閑静な住宅街と畑が広がっていて、自然を敢えて残しているだろうか緑が多く残ってるのに加えてこの時期なので僕らはにわかに桜吹雪の猛攻撃を受けることになってしまった。


「おぉ…これまた圧巻だな」


桜並木の下にいるとどうしてもひらひらと舞い落ちるそれに儚さを考えてしまうのはこの国の人間としてのある種の性なのだろうか、

三人とも目に飛び込んできた光景に驚き微風の横で僕はレイピアが目を輝かせるのを見逃さない、決して人見知りすることが悪いと言うわけでは無いが折角なのだからレイピアと微風は会話を弾ませて欲しいので


「レイピア、綺麗だよ…」

だなんて小声で意地悪な言い方をしたのである、ゆずのきでは微風にお嬢さんキャラをつくっていたのでそれを僕は粉砕しようと企んだのである、上手くいくかは分からないけど


「え…り、涼くん何言ってるのさ…!?」

羞恥と戸惑うレイピアに微風が僕のとなりで「何事なるや?」とレイピアに興味を持って聞いてきたので僕の作戦は成功しそうに思えたが彼女は微風に対しては態度を崩さずにお茶を濁すだけだったのは残念だよね。


「それにしても春真っ盛りという感じではあるが我は多少なりとも花粉症を患っているので過ごしやすいと言えば嘘になるがな…課題さえなければ…課題さえなければのぅ…。」


微風は桜色のトンネルを抜けながらそのもっと向こうへ視線を向けているのだった。


「そうなんだよね~僕もちょっとまだあるんだけどレイピアって終わっているんだっけ、そう言っていた気がするんだけどなー気のせいかな?」


会話のテーブルにレイピアを僕が乗せないと多分この子は絶対に愛想笑いだけこの時間を乗り切るので無理矢理会話にくわえていこう、


「私…? 私は終わってるけど二人ともどれくらい残っているのですか?」


レイピア全部終わってるのかー

国数英理社の五教科少しずつ満遍なく出されてるから中々終わらないはずなんだけどな…?


「北村がどれほど課題を進めているかは我知らんが我が課題は自慢ではないがまるで終わっていないぞ!

具体的に言うと社会にはまるで手を伸ばしておらん!」


微風…そんなに誇らしげに言われても困るんだけどかく言う僕もあまり言えた質じゃない、

まだ終わってないことには僕も変わらないんだよな…

「なん…だと…? レイピアさんはすべての課題を攻略しているのか!?」

反応が遅いよ微風今更感有るからね、それにレイピアに「さん」付けするって僕はしないから何だか聞いてて新鮮だなー。


「そ、そうなりますね恥ずかしながら春季課題は出された際に手を付けてしまいました

やらなければならないことというのは配られた際ににとっととやってしまったほうが早いのですよ。」


それが出来れば苦労はないんだよねぇ…どうしても遊びたい気持ちが先行してしまって仕方ないよね。

多分微風は夏休みの宿題って最後まで貯めてしまうタイプなんだろうなぁ…

因みに僕は毎日分の量を決めてやるけど中だるみして3日前くらいに焦ってしまうタイプだよ。


「うむ…マリアさんの姪っ子凄いな君

中学校の問題を解けるのか~」

なんということだ、今日の暖かい気温が台無しになるほど僕の隣から冷気がやって来ているというのはなんとなくわかっていたんだ。


「微風さん、微風さん、少しお話したいことがあるのですがよろしいですか?」

あくまで口調と所作は変わらないものの残念ながら顔が笑っていないのを僕は見てしまった

女の子って年齢の話をしてはいけないと思っているけど年下に見られるのも嫌なのかとそう思わずにはいられない瞬間であった。

地図を見ながら先導する微風にもそれは伝わるのだろうか…

「う…む? 北村くん、一つお聞きしたいのだがレイピアさんどうしたんですかね

何か気の触ることでもしてしまったんだろうか?」

それボクに聞かずにあの子に直接聞きなよ、僕はさとりじゃないんだからさ

それに小声言ったつもりが他の人にも聞こえてるなんて事はよくあるもので


「微風さん、私が間違いであった申し上げたいのはですね事実の誤認と言うことなのです。

微風様は私を何歳であると思っているんでしょうか?」


レイピア様おこだね、目が笑ってないよー

これは彼女の機嫌を直すのに苦労しそうだけど僕が彼女を管理するとかそんな気は微塵もない。

僕はあくまでレイピアのサポーター位しか役柄的に務まらないと思っているので気にはしていないんだけど…


「あー、そうだな…我と同学年では無いのか?

受験が終わると大抵それまで詰め込んできた知識というのは何処かへ行ってしまうから課題を進めようとも中々進まないのだ、その点レイピアさんはすごいよな最後まで知識たっぷりだもの!」


その独特の表現の仕方はなんとかならないのかな微風…

僕はふとそんなことを考える、この付近は幹線道路などから少し脇道にそれたところではあるがわざわざ歩道が石畳にされている辺り落ち着いた街並みになっているようだ。

今歩いている並木の他にも中心部に比べてやけに樹木がある様な気がする、四月あたまなので葉をつけているのは針葉樹位だけど夏になったらここセミ凄そう…

さて、風景を楽しんだところでレイピアの怒り具合はどんなものだろうか?


「ふ…ふふっ、微風さんその物言いはわざとやっているんですか?」


と思っていたら全く怒っていなかったので彼女の面の皮はかなり厚いのと微風の様な言い回しは面白いと…なるほど


「いや…わりと面白いかなと個人的には思ってやっているのではあるが

これはあくまで仮初めのものであってやっぱりこれ無理矢理声を上げたりするのですこぶるめんどくさい…」


微風は一度溜め息をつくと胸を張るのを止めた。


「桜並木もそうですが並木道としては随分長い様な気がしますね、涼くん?」

僕に対しても敬語を使うとかどうしたのレイピア、微風は普通の人だからそんなに警戒なんかしなくてもいいのに…と僕は思うのだが。


「並木の両側も古そうな建物ばかりだがこれは…旧市街と言うことなのか?」

新しく開発されたのでは確かに無さそうで、味のある旅館モダンな料理屋等が軒を連ねている、

僕らが歩くには周囲から滲み出る年季が違う、

それこそ陳腐でちんけでチープな僕は不相応な気がしてしまうが目的の場所は微風の持つ地図を見た限りだとこの並木道の先の様なのでこのまま進むしかない。


「落ち着いてる雰囲気だよねここら辺、大人な感じというか若者が我が物顔で騒いで歩くには気が引けるというか…ね?」


派手な私服こそ持ってないので別にドレスコードのあるようなお店には入らないし僕はゆずの木で十分だよ。


「大人…か、北村くんよ勘違いしてはならぬぞ人は歳を取るから大人になるわけではない。

う…ん? 微風、成人には20歳になればなれるよ?


「レイピアさんや北村…くんも何故と思っているな、よしよし語ってやるとしよう

尚これは個人的な意見に基づくものでありこの意見を他言した場合に社会的に受ける影響の一切を保証致しませんのでご了承下さいなと一つ初めに申し上げておくぞ?

さて…大人というものはだな我に言わせてみれば大人と呼べるような人間などこの世には存在しないのだ、それはな人には必ず欠点とすることがあり自覚している場合にはそれに対していくら落ち着きがあり風貌、所作、精神を取り揃えているのだとしても意固地になるものだ、矛盾がない人間なんてそんなものはこの世に存在してなならないのだよ。

それは「改善」が終わってしまっている、生物としても人間としてもそんなものは「モノとして終わって」しまっているのだ、」


昨日僕はD51の話を彼と敵対しなければと否定をしながら飲み飲んでいたが微風の言葉はどこか演説めいていて一定の説得力があると僕は思う。


「年を取っても子供よりも意地が悪く己の持つべき責任を取らず無駄に頭を使って責任を転嫁していく連中を我は大人という存在に仕立て上げたくないな、却下だ。 


そんな輩には我はなりとうないしなるつもりもない、大人とは自分を知り相手を知りながらその領分を弁える者の事だ。


利益と利己のみを追及するものでは断じてない、彼らは不健全で不健康でふざけた真似して不言実行し適当なことを言いながらやることだけやってみせるのが我は大人だと不肖微風語らせて頂こう。

実際のところ一度きりしかない人生のなかで明確な答えなど探せるわけがないのだ、自分の持っている限りあるものの中から探すしかない。


なので教養は大事だという話にならなくも無いが…それはまぁ向き不向きあるのでな、我には知識は持っている方がよいのかそうでないかは分からんぞよ…

などと長ったらしく一人で話していてもつまらないのでお二人方の話もも少し聞きたいのではあるがあれか、我のこの長台詞引いたか? こいつ(僕私)と合わないわーと思ったら逃げろよー、合わない連中とつるむ時間は自分のリソースの無駄だからなぁ


あれや、思想とか思考が違うでなく向いた方向が違う人間だな。

なんちゃって我も人格者とかこれっぽっち目指してないからこれは私見だり話も寄り道しまくっているので文章化とかされると恥ずかしいにも程があるので古来にある憤死する恐れあるからな?」


微風の演説にも似た力説に僕らはただ圧倒されるだけである、全文をまとめてくれれば読み直してすべて読破するのだが…


「…こほん、そろそろ目的地付近に到着するので結びとしよう。

我は己の力量を弁えている者大人であると思う、その上で自分のすることに責任感を感じて何かを変えようとするものだ。

異論は認める、我の極々主観的な考えだから別段君らが我の今しがたいった話をどう捉えてもそれは自由だぞ?」


並木の終わるところで交差点の信号が変わりそうになったので皆で急に目配せだけで渡るか否か決めようと思ったんだけどそうこうしているうちに歩行者用の信号は点滅を止めてしまった。 


「あ、信号って右利きの人が多いし日本の車は右ハンドルなので注意を引かなくてはいけないから右側が赤信号なんだそうですよ」

 

レイピアこんな時に豆知識を紹介しなくてもいいと思うんだけど…

交差点の向こうに見えてきたのは今しがた歩いてきた並木より鬱蒼とした常緑樹が行く手に広がっているのを見て僕は少しずつ不安になっているのは内緒だよ。


「なるほど…それでは歩行者の赤信号はそれで下にあるのか」

「そういうことになるかもしれませんね」


あれ?案外と微風とレイピア仲良くやれるんじゃないか?

どうかなと少し心配していたのだけれどレイピアは人と打ち解けるのは案外と得意なのかもしれないな


「マスターの製作した地図によるとこのまま直進するのが一番の近道になっているのだが…?」

ここから先への道は道幅はあるのだが人気が一層無さそうだしなんというか昼間で天気も良く気温も春爛漫といった感じで微風もコートを着ていない程には暖かい…

しかしこの先は木々がさらに密着して住宅地の一角に森と呼べるほどの緑を形成していて道は薄暗く冷たい感覚が視覚的にも感覚的にも人寄せ付けない何かを発している気がする。

動物的直感というよりも霊感みたいな感じだ、不気味とまではいかないものの回りの雰囲気とはかなり違う、

いかないまでも違和感は拭えない。


「何やら不穏な気しかしないのであるが北村くんこれどう思う?」




微風も何かを感じ取ったようではあるものの地図の指し示すのは交差点を渡った先にある道のさらに奥にあるようで行くべきかあるいは引き返して先に図書館向かうというのも一つの手な気がするんだけど…


「それは…せっかくマスターが地図まで作ってくれたんですから、一度行ってみて何かあればその時は微風さんに図書館に案内してもらいましょう。」


あくまでレイピアの意見ではこの先に行く気らしいのだけど僕らは顔を見合わせ気が進まないまま森の奥へ恐る恐る入っていくのであった…。

この暗がりの先にあるものは一体なんなのか、マスターの書いた地図にも詳しいことは無いしこれ本当大丈夫なのかな…?



森の奥で僕らを待ち受けるものは一体なんなのだろうか…次回へ続く!







 


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