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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第二章 夜の静寂に火花も舞う
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諸刃と半端

人生ハードモードとは程遠い

 時間というのは何時も誰にでも平等に流れる訳ではないと僕は思っている。

ただ無作為に何も考えず活動している時には時間というのは只々勝手に自由に流れていくものであるが

自分で有効に使おうと思って、設定した時間で動こうと画策してみたりすると案外あっという間に時は流れたりするものである。

集中しているときや感情が高ぶっている時には刺激が大量に有るため脳の処理がとかそんな身も蓋もない話がしたいわけではなくて、もっと精神的な話がしたいんだ。

みんながみんな自分の使いたいことに時間を使えるかって言ったら必ずしもそうではなくて端から目的意識が見つからなくて単純に目の前にある課題というのをこなしているにすぎないことだって有るんだ。


 そう考えるのであれば「これがしたい」と自分の存在理由を証明するためでも、「誰かのためになりたい」

と自己犠牲でも自己満足でも、自分のために時間を目的を持って使えるというのはある種の才能ではないだろうか。

自分の主張ばかりしても仕方ないのでは有るが僕は真っ向から否定されていることには慣れている、そういうやつ(真っ向から否定するやつ)というのは結局持論で相手をねじ伏せるしか能がないやつなのだ、此方の意見など聞く気もなく正論らしきものを並べてしたり顔を浮かべたいだけ…

なんでこんなことを言っているかというとここに来て僕が死にそうだから、

なんで死にそうかというとレイピアが突然抜いた日本刀(藍斬とか言ってた)を僕に向けて振りかざしたから。


レイピアの一連の動きは僕に有無を言わせない鮮やかなもので数時間の関係ながらも見事に騙された形となった、新手の殺人強盗としてこの子は僕の犠牲を糧にしてのしあがっていくのかもしれない、自分を育てることを放棄し怠慢した父に向けてのこれが精一杯の愛情表現となるのかは本人達すらも知らないことである…


「ごめんね涼くん」

この謝罪は果たして彼女の本心から来る謝意であるのか、僕にはもうすでに知るところでは無い、この狭い屋内で今更逃げ回ったところであの刃渡りでは無事で済むまい…

悲しいかな人間というのは僕の様にすっぱりとなんの見せ場も作れずに終わってしまう人もいるのかと改めて思うと何が起こるか分からないのが人生なんだなぁと走馬灯もろくに流れずにゆっくりとした時の流れで僕は思うのだった。

せめて痛みはそんなに無く終わって欲しいものだがそうもいかないだろう、しかしまぁ、数秒後に繰り広げられる自分の惨状を今更考えたところでどうなるというのだ。

諦めて来世に希望を掛けることだって大事…いやまてやっぱりまだ死にたくないなぁ…

まだこんな僕にもやれることとかあったんじゃないかと思うと少しだけ悔しいなー。



「         」



…あれ? おかしいな、レイピアは僕に向けて鞘から刀を抜いて振り上げていたはずなんだけど、あれかな?

狭い屋内で振り上げたものだから天井に突き刺さってしまったとかそんなオチが待っていたら少しは面白いかもしれないけれど…?


少しだけ様子を見ようと目を開いてみると…

「涼くんー涼くんー、どうしたの? 涅槃でコーランを書いたガブリエルみたいな顔をして」

なんだろうな、レイピアが突然目をつぶった僕を不思議そうに見ていたというのを先に言った方がいいのかそれともレイピアの部屋着がなぜか蒼くなっていたことを言った方がいいのか…

それは僕個人の感想なのだが一先ずさ…


「それは色々な方面に洒落にならない喧嘩を売ることになるからやめようか、レイピア?」 


「えー? グングニルで海をかき回してこおれこおれって島を作るんでしょ?」

「なにそのミックス神話怖いよ、そのうち神の前に心臓持っていって裁判とかし始めないよね? 心臓食べる犬とかいないよね?」


「れっつごーとぅ影の国! なんちゃってにっしし!!」

挿絵(By みてみん)

「あぁもう、前回のシリアス具合をここで一気に破壊してくれたねもう、

やれやれとか言うのを通り越して言葉が出ないよ。

変に勘繰った僕が馬鹿みたいに見えるじゃないか」

溜め息混じりにそんなことを言う僕は内心では少しだけホッとしていたのである。

それよりもレイピアのこの屈託のない笑顔というのは僕には眩しすぎるって、季節外れの向日葵でもみているようだった。

この年になってまさかこんな真っ直ぐな笑顔が見られるとは長生きというものはしてみるものじゃわい…


 レイピアとの会話はお互いに全く違う調子でするけれどすれ違う事よりもそのズレが楽しいと思うのである、というより気になるのはレイピアの知識の量なんだよね…家でどんな勉強をしていたらこうなるのだろうか…

ギャグがいちいち分かる人しか分からないネタを振ってくるからなー


「どーしたのー? 何かずっと考え込んでるけど」

何でも無いよと言いながら改めて依頼品を見てみよう、レイピアが突然引出した一振りである。

振り上げた刀をゆっくり下ろして恐る恐るレイピアの手に収まるそれを僕は改めて観察してみた、


「うーん、何だか違和感があるような気がするんだけどなんだろうか」


刀身がスラリと伸びているのだがレイピアが日本刀と言う割には何かが足りない気がする…

レイピアと僕との関係もまた致命的に何かが足りていないのだが

あぁ、そうだ僕は今までのこととは関係のないことを考えることは得意なんだよね、論点のすり替えとか言い争いを仲介して曖昧模糊にしてしまうとか、慣らしたものだよ。

さてレイピアの刀についての違和感だったね、そうだなー

「そうだよ、日本刀って確か時代劇とかで見たこと有るんだけどさ、振り回すのって大抵こう…何ていうのかな…」


僕はそこまで武器とか兵器については残念ながら詳しく無い、プロペラ機とジェット機の動力って何が違うのとかくらいでそのものについての歴史とか変遷まで調べたことはない、

ハルバートって何と聞かれても英語の番組に出で来る大っきいキイロイトリの亜種と答えることしか出来ない、ゼロセンなにそれ新しい鉄道の愛称なの? とある方面からパッシングを受けそうな知識量である。


「曲がってるというのは間違いだからえっと…」


ふさわしい言葉が見つからなくて言葉に詰まっているとレイピアが

「そうだね~涼くんはきっと「反ってる」って言いたいんじゃないかな?」


してやったりな顔をしているのが何だか僕の神経をを逆撫でする、僕も何か反撃するべきだろうか。


「あー成る程そういうことか…じゃあ僕からもクイズを出そう、

ホットケーキミックスやパンに使われるベーキングパウダーですが実はこの材料とある身近なものと材質は一緒なんですが果たしてそのものとは一体なんでしょうか?」

負けず嫌いなのは残念ながら僕も一緒なんだよね

と言うことで少しだけ雑学問題をレイピアに出してみたところ


「ベーキングパウダー? 殆ど使ったことないから何で出来ているかまでは分かんないなー」

レイピアは少しだけ首を傾げながら降参とも取れる態度で答える


「ヒントと言うより正解に近いのだけれど洗剤だよ」

少しでもこの問題の答えを知っている人は思い付くのではないだろうかと思ったのだけれど可愛らしく考え込むだけでレイピアからの回答は得られないのだった。


「あんまり大したことない問題だから別にそんな考え込まなくってもいいと思うけど」

レイピアは僕のヒント〈答え〉を寮室に置いてあるかどうか調べ始めたがこれ…ずっと探し続けるとかそんなオチは無いよね?

何度かレイピアが自腹で買い集めてきたと思われる紙パックの苺牛乳とプッチンしたりしなかったりするプリンを無言で手渡されたときは反応に困ってしまう、


「賄賂的袖の下は僕にとって効果を期待しない方がいいし買い物して帰ってきた時も思ったけどこの冷蔵庫わりかしちゃんとしたやつで容量大きいのに君がその好物ふたつを買い漁ってくれたおかげでその優秀な冷蔵庫が真価を発揮できずにいると思うんだけどどうかな?」

「そうだね~同居人である涼くんはきっと私が買い込んだものの消費を手伝ってくれればいいかなって思うんだけどなぁ、どうかな?」


どうかなもこうかなも僕には拒否する権限などは全く無いし別にそのおやつ2つは僕も嫌いではないからね、

「よーしじゃあ決定!!」

 さて、プリン・苺ミルク協定此処に締結されるのであるのだがさっきから話がそれまくっているのでいよいよ本題へ入るとしよう、


「脇道の話はさっさと本筋に戻さないと枝葉末節ばかり取り上げて揚げ足足取りに徹してしまうのはあまりにお粗末だからね、その諸刃の刃のことはもっと知りたいんだけど教えてくれないかな?

そうだなー君のことも含めて?」


まさかこんな中途半端なところで話を無理やり終わらせて半端に終わるなんて僕が許すとでも思っているのかい?

僕は試しに身を乗り出して少しだけレイピアに顔を近づけていく


「り、涼くんに迫られるならもう少しロマンス溢れる感じが良かったけどしょーがない、私のこの刀の秘密を教えてあげよう!」


レイピアは恥ずかしそうに僕から視線を外して立ち上がり言った。 


「おー、教えて~」


彼女が狙われる理由(わけ)は家出をしたのが勿論なんだけどレイピアが現在手にしている蒼い諸刃の日本刀もその一因なのではないかと僕はその刀の見た目から感じ取れたのだった。


「うん、教えちゃうよ~、それが重大な秘密だったりしてもいいよ別に! あんな家は好きでもなんでもないんだからさ!!」


大丈夫レイピア? なんだかやけを起こしてない?


「涼くん、私がまさか自暴自棄になるなんてことあるわけないじゃーん。

口は災いのもとだし、半端な感情を示して右往左往するのは子供っぽい証拠だよ?」

間違ってはいない気がするけどレイピアは子供っぽい考え方をするときと思わず感心してしまう時とかあって面白いよね


「この日本刀はね、涼くんに見せた様に蒼い炎を出すことが出来るんだけどこれ温度としてはそんなに熱くなくって、リンが燃えてるだけなんだと私は予想はしているんだけど良く分かんないや!」


え…その刀の持ち主として把握しておくべきことなんじゃないかなレイピアさん?


「だって! これには私にとってあんまりいい思い出が無かったし…でっでも不思議な刀であることは間違いないよ!? 少なくても普通の刀じゃこんな色は出せないし!」


確かに刀身が何か不吉に青みがかっている諸刃なんて普通じゃない、僕はそちらには全く素人だけど日本刀は大抵片方は刃が無いものであることは知っているので違和感を感じるのだった。


「まぁ、それはそれとしてその剣を持っていることは君の親が血眼になって探すことと関係があるんだよね?」


「うーん、そうなのかもしれない。

私はとにかくあの人の管理下に居たくなかった、自由に世界に興味を向けてみたかった。

どんなに世界が残酷だったとしても私は陽のあたる場所へ…」


まるで幽閉されてたみたいな言い方するなぁレイピア…

「幽閉された薄暗い古びた館に少女は暗がりに縮こまり寂しさをやり過ごす、人格は日々否定されて自分をじぶんたらしめるものはその細腕で大事に抱える物言わぬ刀のみ」

だなんて少し詩的過ぎたかな?

とは言ってもレイピアからの情報だけ信じる訳にもいかないし…僕の部屋の危険な隣人に少しでも情報を得たいところだけど、あの人一筋縄にも二筋縄にもいかないと思うのは僕の考え過ぎではきっとないはずだ。


「なんてね、正直に言うと涼くんみたいな気の合う人との信頼関係を気付いて「これぞ青春だぜ!!」みたいなことをしてみたかったっていうのは駄目かな?」

僕らはまだ思春期真っ盛りの少年時代であって、いままで閉鎖的な空間に文字通りの意味ではないが閉じ込められていたちょっと夢見がちな少女が何かの拍子に家から飛び出したって、親の神鳴りは落ちてくるかもしれないけれども、あながち罰当たりでは無いんじゃないか?

少なくとも親は神様でもないんだから反抗することだって良いと思う、それが親に迷惑をかける事になっても親にしか迷惑をかけてないからそれは当の本人達の話で僕にはあんまり関係ない…いや、あるか。


「私は「藍斬り」って勝手に読んでいるんだけど正式に名前があるくらいにこの刀は業物みたいなんだよね、私もあの人が言っているのを辛うじて聞いていただけなんだけど」


あの人とは…と少しだけ考えて察して察してしまったのだが

「わざもの」とは?


「まだまだ謎が多いんだよね~マスターが藍斬りを鞘から引き抜こうとしたけど固くて抜けませんって言われちゃったんだけどマスターがまさか私より力が弱いなんて思わなかったよー」


そんな謎が謎を呼ぶ結果となってしまったのだが僕はまるでお風呂のガスの事をまだ覚えていたと思うかい?

暖かい飲み物をもう一杯位飲んだ後でようやく気がついたんだ、やれやれやっぱり喧嘩なんて慣れないことはするもんじゃないなって思った瞬間だった。


以下続


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