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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第一章 小谷荘の自称座敷わらしちゃん
2/75

出会いと話し合い1

 どこか気が抜けた感じでスーツケースを引きながら歩いている寝ぐせ付きの少年の僕の話をちょっとさせて欲しい。


 僕の名前はきたむらりょうっていいます。


年は今年で17才、誕生日は二月で身長も平均位です。


名前の漢字はですね。東西南北の最後の北、に村八分は怖いですねで村の字を書きまして、今年は涼しいですで「北村涼」と申します。




 どこかクセのある天然パーマに性格的に多少達観してるなーッて自分でも思うことはあるんです。


けど大丈夫、まだ青春に甘い幻想をいだいて人生に希望を持って前に進みたいって。




やったぜ、受験期間の背伸びして頑張った甲斐はどうやらあった。うんうん、僕ぐっじょぶ。


本当に普段の授業にやっとだった僕にしては勿体無いほどの学校に受かってしまった。最後まで試行錯誤して単語帳に齧り付いていた甲斐があったよね。




 さてこの物語はきっとこれから平和な学園ライフ日になっていく予定です。


それは宇宙からの侵略者と光線を放つ銃を片手に対峙したり、異次元の自分と世界をかけた戦いをしたり、哀愁とタバコの臭いを漂わせながら殺人事件をアンニュイに解決したりはしないよ。




平和で退屈そうな日常だって工夫をすれば楽しい筈だからね。


こんな具合に僕のこれからの寝食の面倒をみてくれるのが学生寮「小谷荘」いわゆる寮生活と言うわけだよ。やったね!




 さて、そこにつくまでは折角だからちょこちょこ僕の話からしていくことにしよう。


とはいえ、そんな達観して人生から解脱しているような人生観は持ちあわせてなんていない。


まだ中学校を出たばっかりの奴の経験なんてたかが知れてるし、そんな高校生の話なんて面白くもなんともないでしょ…?




僕に意外な一面なんて持ち合わせて無いからね。僕は平均で平凡で普通の高校生に過ぎないんだ、まぁ、変な葛藤が多いことだけ覚えてくれればいいと思う。




 しかしまぁ僕は高校に進学する時に僕にしては大きな挑戦をするんだけどそれが寮生活という訳なんだ。




色々込み入った事情はそれまでに有ったし、それが一番良い選択だったと思ったから…平凡な僕の唯一の非凡な選択だった。




 寮には管理する人がいるらしいけど、自分の出来る事は自分でしなくちゃならない。




日々をちゃんと過ごす為、僕は色んな今日まで練習してきた、家事スキルがある。


卵焼きを作ろうとしたってスクランブルエッグに!


洗濯機にポケットティッシュだって僕にかかれば爆発飛散するんだ!


失敗してないかって? 違うね!成功への必要経費を払っているだけだよ、失敗は成功の母だ。




 寮の最寄りの駅から少し歩くと目の前には単線の線路がすらっと伸びている。


踏切がなったので待っているとなんかカラフルな電車が走ってった…


 うーん都心から距離は離れていないはずなのに乗った電車二両しか無かったんだけど…




大丈夫だよね? なんかこの地域だけ田舎とかそんな事ないよね?寮の周りにコンビニ位はあるよね?




こういう不安なときはポジティブしんきんぐをするといたんだ。


 しんきんぐって意味も分からなかった訳なあっ!そっか「考える」って意味、よし思い出せた思い出せた。




学校のは一度行ったことがあるけど、寮へ直接行くのは初めてだから、自分の来た道が合っているかちょっとだけ自信が持てない…




 深く息を吸い込みながら上を見上げると六分咲き位まで春の風物詩が微風に揺れている。


それがこの先の踏み切りまで暫く続いていてまるで薄紅色の川みたいだ。僕はほおっと溜め息を吐いて目の前の桜並木に僕はふと足を止めて見入っている。




 なんでなんだろうね春先のこう…ほんわかした暖かい陽気に包まれながら桜の木を眺めちゃう。


日本人は綺麗で薄命なものが好きだよね、儚いものっえ感じのやつ。




「儚い」か…人の夢は所詮儚いのかな…だなんてキザな台詞を声に出してみる。誰もいないからこの瞬間だけはこの桜並木の景色は僕のものだ。

意識を少しの間自分から桜に移して途方もないことを考え始めると踏み切りが発する警告音で僕は空想から現実に引き戻された。



新生活に向けて期待もある一方で心配事ばかり…桜の花の隙間から見えるのはスカッとした青空ではなくて乳白色の曇り空でなんともスッキリしない。

そんなことマイナスなことなんて言っている暇なんてないない!


先ずは寮についたら荷解きをして…やる事は際限なく作れるからね。不安の種を芽生えさせてもしょうがない、楽しく考えよう。




 脳裏で電気が小さく弾け続けるような、アドレナリンとかポリプロピレンが僕を期待させる物質、初めてのことに対する緊張と期待感は僕ら若い人の特権だと思う。




それと同時に僕には不安要素が一つだけある…それが、寮の名前が「小谷荘」という名前である事だ。


こう…もう少し横文字を入れるべきだよね、




 なんとかヒルズとかパレスなんとかとか今風でハイカラな名前なかったの?


これからの三年間何もなければ「小谷荘」が僕のある意味での根城となるわけだ。


でも少なくとも高校の学生寮だし普通のアパートであって欲しい。




僕は高校から渡された地図を頼りに桜並木の線路脇から離れて川にかかった橋を渡って…道を進んで行く。多少入り組んではいるけど、僕は方向音痴では無いから案内通りにすぐ側までやって来れた。




でも木製二階建ての古屋が出てきたら困っちゃうよね…地図に載っている最後の曲がり角を僕は曲がる。




交差点を曲がった先に三階建ての割と新しめの灰色に近いような紫を混ぜたような色のタイル張りの建物がそこに立っていた。


うんうん、案内図通りに「小谷荘」到着っと。案外外装は…良かった、予想通りにならなくて…僕は安堵の声を漏らした。




表札が見えたし「小谷荘」で間違いないだろう、むしろこれで間違っていたら困るよ…。

もう既に同級生が何人かこの寮に居るのは分かっている。僕は引っ越しの日程がずれちゃったからね、それは仕方ない。 

後はどんな人達がここに住んでいるかだよね。他の学年の人だっているんだろうし…暗黙のルールとかあったらやだなぁ…




僕だって人並みには人見知りなので、他の人と上手くやっていけるかな…

それでもなんでも新しい事というのは淡い期待を抱かずにはいられない。僕なら多少上手くやれる…僕はそう信じる…膨らんだ期待と不安を抱えて、僕は小谷荘の敷居を跨いだ。


ま、そんな大した事じゃ無いんだけどさちょっと話は勿体ぶって話した方が面白くない?そんな事ないかな。敷地を跨いで建物を入ってすぐに管理人室と書かれた部屋が有る。学生だけでは寮として経営や問題が発生した際に大人の判断力が必要な時もあるからね。中立性をもった大人がいるっていうのは心強いよ。

電話口で話した時には穏やかそうな女の人の声だったけど、管理人さんも女の人なんだろうか…

因みに管理人の人とは5分後に寮の管理人室で待ち合わせると話をしてある。

部屋の番号が分かっていても、寮の部屋の鍵を管理人さん受け取らないと入れないからね。

この時間に来ますって言ってあったから管理人室にいるはずだけど…そこには薄い緑色のカーテンが掛かっていた。

窓には「外出中です御用の際はすみません」と管理人の不在を知らせる旨のラミネートされた紙がタコ紐を通されて窓につけられた吸盤を使ってぶらさがっている。


え…アレ?あの…すいませーん…


声はかけてみたものの返事がない…まさか…時間間違えた? 

いやいやいやいや、僕に限ってそんなヘマはやらかさないって…電話で連絡した時のメモも…14:00頃いらっしゃってくださいって書いてあるよ。

時間は間違っていないし、日にち自体がずれて書いてるなんてそんな凡ミスはしてない…んん? 自信が無くなって来たよ?もう一度声を大きくして呼びかけてみたけれど少し待っても反応が無い…


え?なんで?どうすればいいのこれ?

メモの時間が間違っている? 聞き間違えてた?でも、「14時です、午後二時」って確かに言ってメモしたんだけどな…

誰も知る人がいない見知らぬ土地でスーツケースを引き摺って一人…?こんな時に冷静でいられたらいいんだけど、僕はなんでって気持ちで一杯になった。




じっとしてもいられないけど何をしたら良いか分からない、焦りと自分への苛立ちが頭の中でくるくる…と回り始めた時だった。


「はーい?」


 半ば帰ろうかと思ったその時、管理人室と掲げられていた窓口には薄緑色のカーテンが掛かっていたその場所の奥から女の人の声が聞こえた。

「はいはーい、ごめんなさいねちょっと席を外していたものですから、今行きまーす!」

柔らかくゆっくりとした口調で管理人室の締め切られていたカーテンが音を立てて開く。


そこにいたのは僕らより一回り大人びた綺麗な女の人だった。

栗毛色の髪を肩にかからない程度に清潔に伸ばし先端にかけてウエーブをかけている。

印象としてはおっとりしていそうで、安心した僕は、お辞儀をしながら僕は自己紹介と腰を折って挨拶を交わす。


これからお世話になります、明後日から一年生になります北村涼と言います、よろしくお願いします!!

とか月並みな言葉を並べて自己紹介をする。

管理人室の女性は僕の話を聞きながら灰色の丈の短いニットを着て前屈みになりながらカーテンを全て開けていた。管理人さんはかなりはっきりとした体型をしている様で…

あ、いえ、なんでもないです。


 管理室の女性は少し困り顔をしたので更に続けようとすると僕を遮った。


「さ、どうぞこちらへお越し下さいませ〜鍵をお渡ししますよ〜?」


管理人は部屋の窓の脇にあるドアを開けて僕を手招きしている。 鬼も蛇も出てこないのは百も承知なんだけど、僕は少し身構えて部屋に入った。




次回へ続く

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