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僕の部屋には座敷わらしが住んでいる  作者: 峠のシェルパ
第一章 座敷わらしと寮室争奪戦!?
12/75

ゆずのきその1

やっとマスターを出せた(苦節四十年感)

 レイピアとは難なく合流できたのは良かったのだけれど

彼女のあの姿は一体何なのだろう?

僕の見た幻覚か何かだったらば話は早いのだけれどそんな話では決してないんだろうな…

そうなるとレイピア自体が幻想だったり…しないよね?

まさかー、今此方に向かって静かに笑いかけてくる少女が僕の生み出した幻想だなんてまさか~

「ねぇレイピア…」

と軽く声を掛けたは良かったのだけれどその先に出てくることばがなくてなんとも尻窄みになってしまったのだった。

いやいや、別にレイピアが実在するかなんて考えてないし彼女はほら

ちゃんと僕の手が届く所にいるよ?


「なーーに? 呼んだかなー涼くん?」

ちょっと待ってなんで機嫌良くなってるの?

やっぱりさっきのあれってわざとなんだよね!?

僕にとってはあたまを混乱させる材料にしかならないのだけど?!

「えっと…レイピアには説明責任があると思います!

ので…さっきのあの現象? への説明をわたくし要求するのであります!」

一体何を焦っているんだ僕は、今日は色々ありすぎて頭の容量が足りなくなって来てるな…

ピタリと止んだ彼女の足は踵を返すように此方に向く

「うーん、それはちょっと後でも良いかな?

具体的に言うなら~喫茶店で?」

と返してきたレイピアは珍しいと言っては何だが目がまっすぐに此方を向いていることから

彼女も冗談を言っているわけではないというのは感じられたが

よほど話すのをためらうような秘密が彼女にはあるのだろうか?

僕の予想では…いや何も言うまい、ひみつは秘密にしてこそ意味があることも有る

結局僕は頷くしかなく溜め息を一つ相変わらず白い空へ吐いた。


「溜め息吐くなら思いきり息を吸って深呼吸にすればいいのに

幸せが逃げてくよ?」

幸せが逃げていく…ねぇ…。

そこで行くともう僕なんかは一生分の幸せを体外へ放出しているなーなんて思ったり思わなかったり

いや待てよ? 体外へ出て行った僕の幸せが他の人の幸せになってくれるならそれも有りなのかもしれないな…

 「レイピア、幸せの青い鳥って信じる?」

 幸せの青い鳥を見つけると幸せになれるなんて言う童話みたいな話を信じるか信じないかなんて子供じゃあるまいし「信じてるよ!」なんて目を輝かせて言うはずもなく、(そこまで精神的に幼いとは考えにくい)

レイピアは「う~ん」少しだけ思考する。

「幸せ」というワードから適当に思いついた質問だけど半分散歩がてら来ているので丁度いいんじゃないかな?

効果音をわざわざ口に出すところや少しだけ首をかしげるところが可愛いなんて思ってみたり…え、あざとい? そんなことあるかなぁ?

「わたしはね~どうかなぁ?

青い鳥が幸せを運ぶんじゃなくて、青い鳥を見つけたから幸せなんじゃかな?

幸せの青い鳥は信じるよ! 川蝉とかの事でしょ!

ほらさ、青い鳥が幸せの原因じゃなくて結果なんだよ、

青い鳥が見つかって幸せなんじゃない、青い鳥を見つけれたから幸せでこの先もきっと上手くいくって思えるんだよきっと!」


つまりは幸せだと思えるから幸せなんだと彼女は言いたいのだろうか?

幸せはいつもそこにあるけれどふとした瞬間に幸せと思えるならそれでいいんじゃないかと言いたいんじゃないかな?

軽々しく思い付きで質問をしてしまったことを後悔したけれど後悔は先に立たぬものと僕は何度経験するんだろうか…

「僕はね…」

レイピアがきちんとした解答をしてくれた以上はこちらもそれなりの解答を用意しなくてはいけないだろう、と思って僕の灰色(多分)で考えを練る

待っててね~今飛びっきり模範解答みたいな解答を快刀乱麻に回答しちゃうから!


「……………。」

とは大見得を張ってはは見たものの、答えが咄嗟に出てくるわけもなくすこしばかり考えこむ


「幸せは歩いてこない…だから歩いてゆく…?

し…幸せは掴もうとしないと掴めることはないし、ある程度妥協した結果が幸せってものなのかもしれない、人間の欲求なんて下手をしたら無限とも言えるから少しでもその人が満足すればいいからつまるところ…青い鳥は何処にでも居る?」

どんな結論だこれと自分の心のなかでツッコミを入れたくなったが此処では置いておこう、自虐なんてしたって、それで自分が変わる気がないならまるで意味なんて無い。


「うーん、ものは考えようってことで合ってる?」

わーい、三十秒ほど苦労してひねり出した五行分の答えが一行にまとめられた…。

「い、イグザクトリー」

もしかしてこの子頭良いのか…?

いやいや、舞い上がったり焦ったりすると的はずれな行動をするだけなんだよきっと

さてさて、青い鳥が実在するかどうかの問題を真剣に考えてくれた素直なレイピアには何かしてあげようかな?


最終的に不肖僕の思い付きの節のある論題における二人の答えとしては、

「青い鳥なんて目の錯覚か何かなんだからどっかに探しに行く暇があるならもっと有効な行動をせよ!」

との議論に落ち着いたのである。


ほら、何事も先ずは話し合わせなくては馬が合うかどうかなんて分からない、

成りゆきに流される僕の悪い癖で色々巻き込まれてしまってはいるけれど、流れに逆らわずに流され続けるわけではなくて

泳ぎやすい方向へその中でも自分の居場所を作ろうとはするのである。


「さてさて! 青い鳥は自分の目の前にいることに気づくか気づかないかってことに落ち着いたわけだけど、

もうそろそろゆずのきの黄色い実も見つかる頃だよ!!」


話し合っているうちに僕が全く知らないところへ迷い混んでしまってもうレイピアの行きつけの店へはたどり着かないんじゃないか? と少しだけ不安になってきた頃になってレイピアはそう言って駅周辺に広がる騒がしくも活気ある商店街から一本

路地裏へ入っていいくよう促された。


「え?本当にこっち?」

路地を裏へ入っていくと一気に商店街から喧騒からは離れられたけれど店の裏の顔、つまりは従業員入り口だったり換気扇が低い音を立てて回っていたりと少し寂れた淋しい雰囲気で

灰色のコンクリートばかりで何処にもそれらしきものは一見して1軒も見当たらない。

レイピア……君道とか間違えてない?

さっきの商店街のもう少し奥の方とかにさあるんじゃないの?

内心は嫌な予感とレイピアを怪しむ思いがポッと沸いてきたのだが、そこはもう少し彼女に着いていってみようじゃないか、

信用と信頼はまだないけれどここは自分勝手に信じさせてもらうことにする。


けれどレイピアは目的地に向かって迷っているような素振りは感じられないし…

と思った矢先

「もうそろそろ着きますよ、着きますよ!

裏路地に潜む隠れた名店!

流し流されわたし、レイピアが最初にお世話になっ…

まぁ、色々あって最近行きつけたりしちゃった純喫茶!

そ~の~名~も~「ゆずのき」なのさ!」

声も高らかに自信満々で紹介されたレイピアの指す手の先には確かに雑居ビルの一階と二階がひっそり自己の主張あまりすることなく、曇昔ながらの磨りガラスに黒い木材で改装され

こじんまりとした雰囲気を醸し出している改装されたお店がこじんまりと似つかわしくない場所に立っていた。

店の入り口にかかった小さな看板はそよ風にゆれているし

そこへは木を表す樹系図のような抽象化・簡略化された木に

薄黄色の丸い実が一つだけ描かれていた。


「雰囲気いいでしょ!?」 

お店を目の当たりにして事前情報が全くなかった僕にとっては必ずしも変な店とか美味しくなさそうと言ったようなマイナスのイメージはない、

むしろ裏路地にはおおよそ似つかわしくないしっかり喫茶店の雰囲気がして、「なぜこんなところにあるのだろう?」と思ってしまう。

もう少しすると住宅街に出るからそこにでも作れば良かったのでは? なんて疑問が湧くくらいだ。


「こんなところにわざわざお店構えるなんて結構な物好きだよね…」

とレイピアに返すと

「確かに~マスターは物好きかもしれない、後で話すけど結構ここのお店フリーダムな所あるからあんまり気にそいないほうがいいよ、

ますたーは世捨て人っぽくて怪しげでそれでいてしたしげなのさ!」

なんて自分の事でも無いのに楽しげに話すのを見て僕は不思議に思う。

入り口とおぼしき木製の年期の入った黒いドアには

       ~営業時間~

      午前中は大体居ます  

     午後から夜は休憩を挟みます

    今日の営業時間は店の店長(マスター)までどうぞ。


とこれまた手作りの案内書がドアに打ち付けられている、

「今日はおやつの時間寝てるかな…?」

曇りガラスの向こうを見透かそうと近づいて目を凝らすも成果は出るわけもなし、これはノックでもして確認するしかないのでは?

突っ込みどころは多々あるけれど一先ず今は前の看板の言う「午後から夜は休憩をとります」の時間なのかどうかはここからでは確認できな「カランカラン♪」

お店の前でうろうろしていたのは確かなので反論の余地は無いけれど、ゆずのきの店内から現れた本を抱えた僕らと同じくらい(つまりは高校生位)の眼鏡に銀髪の少女がこちらを警戒する様な避難するような目付きをしながら去っていったのは少し困った。

けれど彼女が店の中から出てきたお陰ではっきりしたことがある


「まーすたー! たのもー!」。

少なくても今の今まではこのお店はやっていたことだ、

レイピアが勢いそのままにお店に入っていったことを除けば上々だったのだが……やれやれ僕はあくまで控えめにお店に入るとするかな?

「お邪魔しまーす」 

 未知の店内へ入ってみると外のの雰囲気からして喫茶店だったが

テレビでたまに見るようなこれぞ昭和の時代の喫茶店という感じがする、

ここの場所だけ時代の流れから取り残されてしまったのではと思ってしまう、

照明の数も最低限にしてあったり、辺り一面の壁は暗い色の木材を使ってある。

外観よりも中は余裕をもって作られているようで奥の方とかまでは確認できないが、

近くの席には学生や老人などがちらほらと居ることから

ラストオーダーの時間と言うわけではなさそうだ。

レイピアがカウンターの席まで引っ張って行くのであまりチャンとは見られなかったけどかなり嗜好を凝らしてあるのは見てとれた。

レイピアが辺りを探し物をするかのように店の奥を見回すとそちらとは逆の方向から声がする、

僕らが今しがた通り過ぎたカウンターの入り口の方だ。


「おや? そろそろ来る頃ではと思っていましたがお連れ様が来るとは聞き及んでいなかったですよ?」

在庫の整理かはたまた道具の整理でもしていたのかゆっくりした動きでカウンターに姿を表したのはバーテンダーの格好を着こなす長身の男だった、

髪の毛は黒い髪にキチンと整えていて清潔感が漂っている。

レイピアがマスターと呼ぶ理由は定かではないけれどここはある程度警戒したほうがいいのかな…


「マスター! 此処に来たのはこれが何回目だっけ?」

カウンターの席にちょこんと座りながら(因みに椅子が高いのか足が宙ぶらりんになっている)マスターに尋ねる

「そうですね…今回で丁度七回ほどでしょうかね?」

よく見ると寝ているんだか起きているんだかわからないくらいの細い目をしてるなこの人

大体マンガとかだと何時もおっとり糸目キャラとかって怒ると目を見開いて暴れまくるとか考えられるよね?

店内と店主を観察していると不意にマスターと目が合う、

僕が言えた話じゃないけどこの人も他の人に対して無害そうな雰囲気だな…

「この子に知り合いがいたとは初耳でしたがなんとも頼りがいがありそうな方ですね」


そう言われる筋合いはないし僕はそんな出来た人でもない、僕は自分を上手いこと良く見せているだけだよ

そんなものは傲慢と欺瞞でしか無い、

さてさて、レイピアがマスターと呼んだいるこの人はなんだか静かな人を落ち着かせるようなそんな声を持った人だと感じた、この人には恐らく隠し事は出来ないだろうな

隠したそばから見透かされたような調子で話していって自分から悩み事だったりをこの人に向って吐露してしまうそんな怖さを持っている人だな…

僕の特技は人間観察だからこれくらいは朝飯前だけれどあくまで僕個人の主観でしか無いからなんとも言えない節は有るけどね。


「ますたー!! いつっもの!」

レイピア七回目にしては行きつけ感満載な注文の仕方なんだけれどとは思ったがこの子が家出少女だということを忘れていた、行く宛もなかったとしたらこういう隠れ家的な誰も行かなそうな(店内には僕達だけというわけでもないのであしからず)お店に転がり込んで時間をひたすらに潰していたのだろう、

マスターはレイピアの注文だけではなく僕にも「何かお飲み物でも?」と笑顔で聞かれたので断りづらく

メニューもないままに適当に思いついた飲み物を注文することにしよう何が出るかな何が出るかな…


「カフェオレで」


ひねり出した答えは単純なものだったがここで奇をてらって話の後半だからって受けを狙って

「麦茶!!」だとか「サーターアンダギー」なんて言ってみても良いのだけれどそんなものは此処で用意されているわけがないし加えてマスターの機嫌をを今は損ねたくないので無難なところをチョイスすることに

したのだ。

「ではしばらくお待ちください、準備いたします」

と言うと僕らに背中を向けてマスターはコーヒー豆やカップが並ぶ棚と向き合って彼の仕事を早速始めるのであった。

マスターって喫茶店の主人ってことか…何だか安心した、てっきり主従関係とか変な想像をしてしまった。

そんなこんなで内心ホッとしているのだけれど

「レイピア、この御店はどうやって見つけたの? まさか観光マップに載ってたなんてことはなさそうな

お店…あ、いえ流行ってないとかその手の意味ではなくてですね隠れ家的意味で雰囲気良いですよ!!

照明も仄かに揺らめいて不思議とゆったり出来るスペースになっているし!!

ええとですね…」

「ああ、私には構わなくていいですよ? 貴方にはどうにも他人の目を恐れているようですが向き合うべき人(娘)が隣りにいるのだからそちらとお話を続けて下さい、私の出来ることはそのくらいです。

後、ここは半分趣味が講じてやっているので儲けとかはあまり考えてませんからご安心を」

焦って失言をしたのをマスターにたしなめられたところで僕には取り付く暇もなしに

僕はレイピアと向き合うことにしたのだが、

「ますたー! お冷2つ! 氷マシマシで!!」

当のレイピアはここに来て緊張感を潰しにきたのだ、まさかこの子この雰囲気のまま何か逸らかすつもりだな?

そうは問屋が卸さない、折角良い雰囲気のお店にいるんだからそれなりの情報をもらおうじゃないかレイピア!! なんて次回に続けるためにいいところで区切りを入れておく僕なのであった。


以上

次回に続く…


レイピア「活動報告もチェックだよ!!」






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