第1話
「――ただいま」
「あっ、先生が帰って来たよ!」
「先生!」
東城太助は、孤児院で暮らしている
そこで彼は、親を失ったあるいは捨てられた子供達の、父親代わりとして日々を過ごしていて、彼の帰宅を子供達は総出で喜んでのお出迎え。
「――ごめんね、疲れてるんだ」
「あっ、ごめんなさい」
「ううん、良いよ。話しは起きてからで……あれ? 裕香ちゃん」
子供たちの中に、久しぶりに見る顔が混ざっている事に気付いた。
かつてアンリマユ闘病生活時、同じ施設で療養していた友人の妹の姿を。
「こんにちは、東城先生」
「――お兄さん達、来てるの?」
「うん。先生に話があるって」
太助はわかったと頷いて、応接室に出向き――
「よっ、東城せんせ」
「待たせちゃったようだね、裕樹君に光一君」
アンリマユ闘病生活時、同じ施設で知り合った友人であり――同じ、異能力“悪意の祝福”に目覚めた者同士という側面も持っている。
アンリマユの闘病の果ての異能力発現は、実は知られていない。
発現する能力は、大抵が暴力性の高い物である場合が多く、更にはアンリマユの病状が重ければ重い程に強い能力が発現する為か、自身のその能力と後遺症として残る狂暴衝動を恐れ、ひた隠しにする者が多く、公に能力が使われる事はない。
例外としては、狂暴衝動をを経て悪意に目覚めた者が、能力による犯罪などを引き起こす事があるが、それらは隠蔽されている。
久遠光一。
“原子操作”の能力を得て、万物を原子レベルまで解析、操作し組み替え、物質を生成出来る能力を持つ。
体つきはインドア派の太助にも劣る、もやしと呼ばれる程の貧弱な体躯だが、それを補う様に頭の回転が速い頭脳派であり、技巧派である。
朝霧裕樹
“マグマ精製”の能力を得て、自然災害級の破壊力を出せる能力者。
左目をレザーの眼帯で覆い隠し、光一とは対照的に無駄が一切ない引きしまった体躯の持ち主である。
2人とも、太助と同じかそれ以上に重度のアンリマユを発症し、強力な能力を得た者である。