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プロローグ

 “アンリマユ”

 子供――それも、感受性の高い子供にのみに空気感染するそのウィルスは、発症した者は高熱の発症と、どんな正確だろうと理性を失う程の狂暴衝動を、1日ごとに交互に繰り返す事から、その名がついたと言われている。

 ――にも拘らず、症状こそ危険性の高い物ではあったが致死性がなく、流行から1年して尚、この“アンリマユ”で病死した事例は世界中で1つとしてない。

 ただ、そのウィルスが齎す高熱の発症、狂暴衝動は“悪意”と評される物……単なる特異なウィルス性の病症ではない事

――それを知るのは、発症から2年が経ってからの事。

 アンリマユはただ、悪意と評するに相応しい病症を齎しただけではなかった。

 それはあくまで経過――産みの苦しみ、試練の様な物である事は、すぐに証明された。

 高熱により弱り切った身体、程度の違いはあれど狂暴衝動が根強く残っている等、後遺症こそそれぞれだったが、回復した子供たちは次々と特異な能力に目覚めていくこととなる。


 それから10年――アンリマユの脅威は、未だに去ってはいない。

「――平和とは良心と救済か、差別と暴力か」

 東城太助。

 アンリマユの闘病生活の中で、自分を気遣いはげまし、看病してくれた人たちの姿と、その人達を狂暴衝動で傷つけてしまった、後悔の念。

 悪意と銘打たれた病症の中で、彼が見出したのは救済であり、彼は救済を成し成せる人間になりたいと願う様になる。

 しかしそんな願いとは裏腹に、彼がアンリマユとの闘病の果てに手に入れた能力は、魔獣“四凶”の召喚、使役だった。

『グフォウッ!!』

「――美味しかったかい? ……狂暴衝動に囚われた“フリ”をした、殺人犯は」

 人面羊身の魔獣、鼟餮にそう問いかけ、喰いかけに目を向け――

 表情こそ軽蔑が浮かんでいたが、その眼には涙が流れていた。

「――はぁっ……」

『グルル?』

「――ああいや、なんでもないよ」

 アンリマユの狂暴衝動は、強弱の差こそあれど人によっては根強く残っていた

 それが原因で悪意に駆られた者、狂暴衝動に囚われた者が災厄となり、悪意に駆られなかった者が恐怖に駆られ……。

「――苦しいなあ……そう、苦しいんだ。人を傷つけるのが苦しい……仕方がない? 罪を犯したから? ……そんなの、何の意味もない。なぜ、懺悔ではだめなんだろう? ……ああっ」


 ――“苦しい”


「……そう、苦しいんだ……苦しイ、苦シい、くルしい、クるしい、クるしイ……はははっ、ははははっ! ……あーっはっはっはっはっはっは!!」

 善であろうとする人間ですら、狂気に駆られる時代


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