表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

しいたげられた男

作者: 太巻 太郎

ある課長が感情的に言う。


「おい!お前なんだこの資料!ここおかしいだろ!ふざけるな!」


部下があやまる。

「すみません!」


すると輪をかけて感情的に


「うるさい!あやまってすむか!全くお前の頭は飾り物か!

こんな馬鹿な部下がいるおかげで、俺は出世出来ないんだ!」

「お前のせいだ!このバカ!」


と言って頭を殴った。


この部下がしいたげられている男



周りからは、


「またやられてるよ~あいつバカだからしかないよな」


な感じである。


ちょっと定番の風物詩になっているもう見世物状態だ。


社内に味方するものも同情するものもいない。

まして助けようとするものもいない。



昼休みの社員食堂でも定食の品数が一品足りないので


「あのーきんぴらごぼうがないんですけど」

と正当なことを言っているのに



「なんだ!クレーマーか!嫌なら食うな!」

と言われる始末



会社の帰り道も知らない犬におしっこをかけられ

電車で座席に座っていると知らない人に


「何座ってんだ!立て!」


と言われ立たされる。


アパートに帰ると、知らない人が部屋にいて追い出される。


公園で寝て次の日会社でまた

怒鳴られて他の社員に白い目で見られて、

猫に引っかかれ

水をかけられてるのに

「じゃまだ!」と怒鳴られて


もうきりがない


しかし、本人はいたって冷静なのだ。

「まーみんながよければいいか」

って感じなのだ、鉄のハートである。


彼は、しいたげられたまま人生を終えた。


唯一の救いは。。。

理由は不明だが、彼が人を恨むことはなかったことだ。

普通はこんな人生なら憎悪に心を汚すものだが。。。。




山田 陽一 享年79歳


太陽の陽の字が名前に入ってるいるのが虚しく感じるのは、

私だけでしょうか?


もちろん兄弟とも絶縁、実父母は既に亡くなっている。


無縁仏となった。



気が付くと陽一は、ある巨大な寺院的な建築物の前にたっていた。


「おれ。。死んだんだよな。。」


とつぶやいていると



目の前に女性が笑顔をで立っていた。


「そうです。山田様あなたは亡くなったんですよ」


はっとし、その女性を見て言った。


「そしたらここはどこなんです」


女性は笑みを含めながら


「神殿の前です」


陽一は少し怒った感じで


「えっ神様っていたんですか?だったらなんで僕を助けてくれなかったんですか、

あんなひどい人生だったのに。。」


女性はニコッと笑い


「山田様のご苦労は私も拝見しておりました。」

「大事な役割を与えられる資格を得たようですね」


陽一は意味がわからず黙っていると女性が


「神様が山田様にお会いたいとおっしゃっておりますので、

神様のお部屋までご案内しながら、ご説明させていただきます」


陽一はとりあえず女性についていった。


すると女性はやさしく語りはじめた。


「まず、神様ご自身についてご説明する必要がございます。

神様は、全宇宙にいらっしゃいます。

そして、それぞれの星におひとり、

その星にとっては唯一無二の存在であらせられます。」


女性は話を続けた。陽一も興味深々になっていた。


「この太陽系で申しますと、恒星つまり太陽神様と他の惑星神様に分かれます。

太陽神様は、それぞれの惑星神様がその惑星に生命を与えるために

お力を与えるお役目をされております。」


「それぞれの惑星神様は、そのお力を使いご自分の星に

生命を与えるのがおつとめでございます。」

「現在では、この地球神様のみが生命を生み出し発展させておられる

太陽系唯一の神様でございます。」


陽一は話をここまで聞いて気になることがあったので質問した。


「あの〜衛星には神様はおられないのですか?」


女性は更に顔をほころばせ


「衛星には、巫女がおります。」

「地球には月の巫女がおり神様のお手伝いをさせていただいております」


女性は一旦間をおき満面の笑みで


「その月の巫女がわたくしでございます。」


陽一はハッとした顔で


「もしかして、あなたはかぐや姫。。。ですか?」


女性は笑顔のままで


「はい、地球の方々にはそう呼ばれております。」


ここで神様の部屋の前についたようだ。


月の巫女が手をさしのべて


「こちらがお部屋でございます。」

「おはいりください」


大きなきらびやかな扉が観音開きで開いた。

中から神々しい光が差し込み一瞬何も見えなくなった。


そして、陽一の目の前にからだ全体に柔らかい光を帯びている

老人が椅子に腰掛けていた。


「あなたが地球神様ですか?」

陽一が確認した。



「いかにも」

絵に描いたような定番の地球神の回答。。。


落ち着いたところで陽一から地球神に問いかけた。


「地球神様、私はご存知のようにしいたげられた人生を歩みそして死んで

いまここにいます。

こんなこと申し上げたらご気分をお悪くされるかも知れませんが、

私はそんなに悪いことして来たつもりはありません。

子供のときに宿題を忘れたとか0点のテストを親に見せずに捨てたとか

そんなもんです。

なのになんであんなしいたげられた人生を歩まなければいけなかったんですか?

神様などいないと思っていました。

でもここにいらっしゃる、なぜ私を救ってくれなかったんですか?」


なんとも凄い長台詞を陽一はいっきに話した。


しばらく間をおき地球神が口を開いた。


「それは、君が大切な役割を果せる可能性があるからじゃよ」


「えっ!さっきも月の巫女様がおしゃってましたが役割ってなんですか?」



地球神は噛んで含むように語りはじめた。


「私は、この太陽系で唯一惑星そう、この地球に命をもたらせた神だ。

しかも、それぞれの命を進化させてきた。

そして、人類と言う最高峰の命を誕生させた。

宇宙全体でもここまで完成された命はそうはいない。とても優秀で頭がいい

しかし、優秀が故にこの均衡のとれた宇宙の仕組みを知ろうとしてきた。

それは科学や宗教という形で解明をしてきた。

まだまだだが、確実に真実に近づいてきた。

進化という意味ではそれも良いことかもしれない。

だが、恐らく知ってしまったら。。。。」



「知ってしまったら?」


陽一が地球神の長台詞をさえぎった。


地球神は気にせず続けた。


「知ってしまったら、宇宙の均衡は崩れ全てが破滅するだろう」


「なぜなら、精神の進化が足りないからだ」


「人類は、いまだに他人に嫉妬し、じゃまなものは排除し、

権力を握ろうとする自分勝手な命だ」


「宇宙の仕組みがわかったら人類は自分の欲のために

それを使おうとして均衡が崩れ全宇宙が破滅する」



「・・・・・・・・・・」


陽一は話が壮大過ぎて声も出なかった。



地球神はまだ話を続けた。


「私の役わりは、命を生み出し進化させていくこと」


「なので、人類が宇宙の仕組みを知るほど進化するのは問題はない。

ただし、今のままでは精神と知能の均衡がとれていない。」


「そこで、指導者を生みそれで人類の精神を進化させようとしている」


「それで、その候補者を地球で修行させている」


「人種、性別、宗教の迫害、つまりしいたげられた人生をおくり、

どう精神が変わったかで本当の指導者か判断している」


陽一はやっと言葉を発する。


「僕は、人種や性別や宗教でしいたげられていませんでしたよ

まったく理由なくしいたげられて来たんです。」


地球神は目を閉じうなずきながら言った。


「記憶を消しているので君は覚えていないだろうが君はすでに

人種、性別、宗教によるしいたげられた人生は終えている。

つまりこの部分は合格している」


「最終試験は、何の意味もない迫害、何の理由もなく

しいたげられる人生を送ったときどう精神がかわるかだ」


「歴史的背景もない、仲間もいない迫害は一番つらいからな」


陽一はつばを呑み込んだそして言った。


「そしたら僕は最終段階を終了し、

ここで話を聞かせていただいてるってことは。。最終試験に合格なんですね?」


地球神は目を閉じたまま入った。


「君は、山田陽一としてしいたげられた人生を歩んだ

かなりのいじめや誹謗中傷のなか、誰を恨むこともなかった。」



陽一は目を輝かせていった。


「そしたら、合格ですね!」


しばらく間をおき地球神は言った。





「いや、不合格だ」


「実は、この神殿に来てからが本当に最後の試験なのだ。

神が本当にいると知ったとき精神がどう変わるか。。。。」


「君は私の存在を知ったとたん。私を恨んだであろう?」


陽一は汗が止まらなかった。確かに神を恨んだ、

なぜ助けてくれなかったのかと。。。。



地球神は穏やかな顔で言った。


「この試練は、途中で不合格すると最初からやり直しになる

今度は中東あたりからはじめることにするか」


陽一は薄れる意識の中で思った。


「かぐや姫は合格みたいなこと言ってたのに。。。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ