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天職に支配されたこの異世界で  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中


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第八十八話 大蛇の迷宮 最奥

 一つの胴体に対して八つの蛇の頭を持つその名もヤマタという魔物が「大蛇の迷宮」のダンジョンボス。つまりは最強の敵のはずなのだが、


「思ったよりも簡単に終わっちまったな」


 俺一人でも〈魔刃〉で強化した短刀で全ての首を刈ることで拍子抜けするほどあっさりと倒せてしまった。これならソラとロゼに任せても良かったのではないかと思うくらいである。


 だがそれに対しての二人の答えは違っていた。


「言っとくけど私達だとあの魔物は結構微妙なラインよ。勝ち目は十分にあるけどそれなりに危険でもあるでしょうし」

「それに倒せても時間も掛かっていたでしょうし、体力魔力の消費もかなりのものになったと思います」


 どうやらどこぞの『剣王』やら『蠱毒師』の引き連れたドラゴンとかを倒している内に俺は結構な力を手に入れてしまったようだ。微妙に俺との力の差を実感したのか落ち込んでいる二人を見てそれを改めて実感する。


(この件が片付いたらエストも加えて三人の特訓に時間を割くことにするか)


 パーティーで行動する以上は持ちつ持たれつの関係であるのが理想だろう。


 ただ一方的に頼ったり頼られたりする関係は短期的には問題ないかもしれないが、いつまでも続くものでもないだろうし、なにより二人が納得しないだろう。


 例え俺が戦闘以外で安らぎを与えてくれるだけで十分だと言ったとしてもだ。


「それでここが迷宮の最奥だと思うんだが、その真犯人とやらは一体どこに居るんだ?」


 ここは「大蛇の迷宮」の最下層である第七層の一番奥の部屋。つまりここがこの迷宮の最奥であり先に進む扉も存在しない行き止まりだ。


 だと言うのにこの部屋に居たのはヤマタというダンジョンボスの魔物だけであった。


「分かってるからそう睨むなって。嘘は言ってないからよ」


 こちらの疑念を感じ取ったのかマハエルはそう言いながら部屋の奥の方へと進んでその壁に手を当てる。そして懐から何か鍵のような物を取り出すとそれを壁に差し込んだ。


 すると、


「か、壁が動いた?」


 ソラの言葉は間違いではないが正解でもない。正確に言えばそれまでただの石の壁だった部分がパズルのように動いたと思ったら奥の方から扉が現れた、と言うべきだろう。


(まさかの隠しボスとか言う展開じゃないだろうな?)


 迷宮にはフロアボスとダンジョンボスが存在しているのは知っていたが、秘匿されていたもう一種類のそれらの存在がいるのか。そんなゲーム的な考えは幸いな事に続くマハエルの言葉で否定される。


「この先に有るのは「大蛇の迷宮」の心臓部にして通常では立ち入る事ができない特別な場所だ」

「それでどうしてそんな場所への行き方をお前は知ってるんだ?」

「行けば分かるさ。この先に居る人物がそれを教えてくれるだろうからな」


 こちらの疑問を上手い事はぐらかしながらマハエルは先に進むように促してくる。胡散臭いし、このまま言われるがままに行動していいのかとも思うが他に手掛かりも無い上にここまで来て引き返す訳にもいかない。


「二人共、警戒は怠るなよ」

「了解です」

「言われている通りいざとなったら全力で逃げるから安心して」


 そうして覚悟を決めて俺達は先へと歩き出す。


「だから俺は?」

「死ね」


 そんな先程と同じようなくだらない会話もこなしながら。


 そうして少し歩くとまた扉が有ったので俺達は警戒しながらもそれをゆっくりと開いていく。そして開かれた扉の先には奇妙な物体が存在していた。


 結晶と言うかクリスタルと言うべきか、透明な鉱石のようなものが身の丈ほどの大きさで綺麗にカットされた状態で部屋の中央の台座のような物の上に安置されており、仄かに青白い光を放っている。


 それだけ見れば何とも幻想的な光景だった。


 だがその光景に見惚れることは許されない事を示すようにその台座の前に一人の男が立っている。そしてその後ろ姿だけで俺はその男が誰だか理解できた。少し前に有ったばかりであったから。


「……こんなところで何をしているんですか?」


 その問いかけに男は振り返る。


「ユーグスタス・フーデリオ・ヴォルグスタイト伯爵」


 今回の娘の声を取り戻すという依頼を出した依頼主のはずのその人物が。


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