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第六話 持ってきた物

 家族を助けた報酬として今後の方針が決まるまでの間はデュークの家にお世話になることになった俺は用意された自分の部屋でリュックサックの中身を改めて確認していた。


(歯ブラシ、歯磨き粉、剃刀、入浴セット、水入りペットボトル、瓶入りの酒、何種類かのインスタントラーメン、やかん、鍋、フライパン、包丁、箸、タオル、バスタオル、ティッシュ、ハンカチ、衣服数種類、目薬、ノート、筆記用具、貯金箱、腕時計、手袋、マフラー、寝袋、鋏、ホッチキス、ピンセット、安全ピン、卓球のラケット、トランプ、輪ゴム、髪留め、マグネット、コンドーム、折り畳み傘、ビー玉、印鑑、画鋲、包帯、消毒液、ブラシ、化粧水、制汗剤、ボディシート、ビニール袋、ネックレス、ブレスレット、指輪。そして煙草とライターか)


 よくこれだけの量がリュックサック一つに入っていたものだ。


 そんなことを思いながら俺は大量の小物を見ながらこんなに挙げたかと頭を悩ませてもいた。例えばビー玉とか卓球のラケットとかコンなんちゃらとかの事である。


(……そう言えば却下されるのが多過ぎたから、だったら家にあるものを適当に、とか言ったかも?)


 うっすらとだがそんな事を言った気がしないでもない。その証拠にそれらの持ち物はどれも見覚えがあったし、中には俺が使っていた物もあるのだ。


 恐らくはあの爺さんが適当に一人暮らしをしていた家と実家にある持ち物の中から選んで送ってくれたのだろう。ネックレスやブレスレッドは女物のようだから母親だった人の持ち物だろうか。


(仮にも血の繋がった親の物かどうかも確信を持てないとは俺も大概だな)

「……まあ有って困るわけじゃないし有効利用させてもらうか」


 引っかかるものがない訳ではないが、かと言って捨てるのは勿体無い。この世界では二度と手に入らない可能性が高いのだし、しっかりと今の内に贋作を作っておくのが賢明というものだろう。


 そこで扉がノックされたので返事をすると、


「食事が出来たぞ」


 デュークが顔を出してそう言ってきた。ちなみにデュークの奥さんのフリージアと娘のメリージアは薬を飲んだ翌日には歩けるぐらいには回復し、一週間が経過した今ではすっかり元通りとなっているのだった。


 二人が罹っていたマスズ病とやらは特殊なものだったらしくて、特定の人にしかうつらないのだとか。しかも一度治れば抗体が出来るのか二度と罹ることはないらしい。


 何でもある特定の魔力にだけ反応して身体を蝕むとか何とか言っていたが、魔力についてはまだよく分かっていないので人を選ぶウイルスだという風に思うことにした。


 聞く限りではこの辺りでは滅多に現れる病気ではないそうなので誰かが持ち込んだのではないかという話だが、まあこうして治ったのだからそれは気にしないでもいいだろう。


 現に元気になったフリージアは今日もおいしいご飯を作ってくれているのだから。ここ数日の状況から言ってもまず間違いない。


「ご飯だよ!」


 そこでデュークの背後からひょっこりとメリージアが顔を出す。言動はともかくとして、十歳という割には相変わらず大人びた容姿の子だ。容姿が外人に近いからその所為もあるのだろうか。


(だとすると俺は幼く見られる可能性もあるかもしれないな)


 妙にメリージアに懐かれているのはその所為もあるのかもしれない。それを見たデュークの笑顔が日に日に強張って来ているのでそろそろ対処方法を考えた方がいいかもしれないが。


(十歳以上も歳の離れた子に手を出しはしないっての)


 現在二十一歳の氷室一夜という男は生憎とロリコンという性癖は持ち合わせていなかった。なのでフリージアはともかくメリージアは守備範囲外なのである。


 勿論他人の妻であるフリージアにも手を出す気がないのは言うまでもない事だ。


「ほらー早くー」

「分かったから引っ張るなって」


 楽しそうに俺の服を引っ張るメリージアとそれを引き攣った笑みで見ているデュークと共に俺はいい匂いがする階下へと向かうのだった。


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