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天職に支配されたこの異世界で  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中


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第三十六話 昇級試験とその相手

 D-ランクになっても俺達の生活に大きな変化はなく、依頼をこなして金を稼ぎながら力を磨くという日々が二週間ほど続いた。


 そして俺は異世界人だから冒険者としてどころかこの世界の常識や基礎知識さえ欠けているところがあるのは否めなかったので、その依頼をこなしながら様々な知識を獲得していった。


 例えばレッドスライムというE+ランクの軟体生物のような魔獣は打撃と炎がほとんど効かないが、斬撃で体を削るか体の中心にある核を一突きにすれば簡単に仕留められるとか。


 その他にも様々な薬草や鉱石などのこの先で役に立ちそうな贋作をリストに加えることができたものだ。


 そうして順調に日々を過ごしていた俺達三人だったがここに来てとある問題にぶつかることとなった。


「うーん、どれも受けたことのある依頼ばっかりだな」


 ギルドに出されていた依頼を一日で何個も同時に受けては達成して……ということを繰り返した結果、受けたことない依頼がほとんどなくなってしまったのだ。


(魔獣の死体も一回の依頼で大量に贋作を作ってあるし、ぶっちゃけ何度も同じ依頼を受ける必要はないんだよなあ)


 だから出来れば新たな贋作を作り出せる依頼を受けたいと思っているのだが、ここに来てそれらが底をついてしまったのである。


「今は例の異変の調査のため迷宮も閉鎖されたままですからね。出せる依頼も限られてしまうんです」


 ギルドの受付嬢であるミズリーに相談してみても帰ってきた答えはこれだ。


 ならばランクを上げて受けられる範囲を広げようという考えもなくはないのだが、


「すみません、この辺りだとC-ランク以上の依頼が出ることはほとんどないんです。迷宮でさえそこまで凶暴な魔獣や魔物が現れることが滅多にないですから」


 と、またしてもミズリーの言葉で諦めるしかなかった。まあ出される依頼は周辺の環境に左右されるから仕方がないことなのだろうが。


「ちなみに迷宮の閉鎖が解かれるのはいつ頃とか分かるか?」

「今月中には解かれると思いますが、それ以上はなんとも……」


 時間や日数などは向こうの世界とほとんど一緒だから今月中だとあと最大で二週間くらい掛かる可能性もあるということか。今は月の中頃だし。


「C-ランク以上の昇級試験を受けたい場合やそういった依頼を受けたい場合はここではなくもっと強い魔獣がいる地域に行くことをお勧めします」

「まあそうなるよな」 


 高ランクの依頼を受けたいのならばそれに見合う場所に行かなければならないという訳だ。至極当然の話である。


「あ、そうだ。そう言えばギルドのランクアップってどうやるんだっけ? 確かD-までは一定数の依頼を達成すれば自動的に上がるって話だったけど、そこから先はまた別物なんだろ?」


 D-ランクになってからも下のランクから順に受けたことのない依頼を受けてばかりいたので昇給についての話を聞くのをすっかり忘れていた。しばらくはそっちの方に掛かりきりになるだろうと思って。


「依頼を一定数達成するところまでは同じです。ですがそこからギルドが用意した昇級試験を受けてもらう必要があります。えっと今のイチヤ様ですと……既に規定数の依頼は達成されていますのでいつでも昇級試験を受けられますよ」


 ちなみに一定数の依頼を達成しても昇級にはまだ早いと思えば試験を受けずにいても問題ないとのこと。


 そしてその昇級試験も場所によって受けられるランクに限りがあるらしい。その理由は試験官が判定できる限界があるからだと言う。


 だから本当に腕の立つ冒険者達は自然とそういった高ランクの依頼や昇級試験が行える場所に流れていくのだとか。そしてそういう場所は決まって危険な魔獣や魔物がウヨウヨしている危険地域らしい。


(まあ自然とそうなるわな。ここにC-ランク以上の冒険者が居たって意味がほとんどない訳だし)


 受けられる依頼がC-でも滅多にないとの事なのだから当然の話である。


「とりあえず他にやることもないし、その昇級試験とやらを受けてみようかな」

「畏まりました。イチヤ様の天職は『剣士』との事なのでそれに合った試験官は……この人ですね」


 そうして試験を担当する人物の名前を認識した時、思わず俺は笑ってしまった。そして面白いことになるかもしれないと意地の悪い考えを頭の中で思い浮かべる。


「ねえイチヤ」

「ん、何だ?」

「今のあなた、とんでもなく悪い顔してるわよ」


 どうやら表情には出していないつもりだったのだが、ロゼに指摘されたところからすると隠し切れていなかったらしい。

 ソラも遠慮がちながらロゼの言葉に頷いて同意を示しているし。


「別に悪巧みをしているわけじゃないさ」


 それに面白いとか抜きでもこの相手で良かったのかもしれない。

 何も知らない相手だと手加減とか色々と面倒だったろうし。それがないだけでも随分とマシな方だ。


「それでその試験はいつなら受けられるんだ?」

「そうですね、試験官の都合次第ですが早ければ明日にでも受けられると思います」


 そんなことを会話している俺の手元にはミズリーによって差し出されたとある書類があり、そこにはデュークという俺のよく知る人物の名が記されているのだった。

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