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天職に支配されたこの異世界で  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中


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第二十七話 復讐の意味

 基本的に俺はやらないで後悔するよりはやって後悔した方が良いと思う方である。


 それもあって俺はその母子が復讐を望むのなら好きにさせるつもりでいた。

復讐なんて何も生まないなんて薄っぺらい言葉で説得できるとも思えなかったし、そうしたいとも思わなかったから。


 残念ながら世の中には死ぬまで、あるいは死んでも反省しない奴がいる。そういう屑や汚物はどうしようもないし、どうにかしたとも思わない。


 それが今の俺の基本的な考え方だった。


 だから俺達が訳あってここに救援に来た事などの説明を終えた後にあいつらをどうしたいかと聞いた時、彼女達が自分達の手で仇を取りたいと言ってもそれを否定したりしなかった。


 少なくとも父親や夫を奪われたという彼女達にはその資格があると思ったし。


 そうして聞きたい情報を全て白状させた後に立候補した数名によって復讐は実行された。


 と言っても子供にそんな事はさせられないと言ってやったのは全て母親達だったが、それでも文字通りその手を血で汚したのだ。


 それがこの先どういう意味を持つことになるかは俺には分からないし知る由もない。


 その後の事は簡単な話だ。デュークに預かっていた回復薬とやらの贋作を配って母と子の傷と体力を回復させ、そして俺が救出された時のように彼らを転移陣のある小部屋まで連れて行く。


「ここに入れば迷宮から脱出できる。それで転移先ではポロンとテリアって男女が待っているはずだから後の事は二人の指示に従ってくれ」


 解放されると聞いて喜ぶその人達の俺に対する反応は大きく分けると二通りだった。


 あの馬鹿げていると言える力を見た所為もあって恐怖を隠し切れていないものと、


「父ちゃんと母ちゃんの仇を取ってくれてありがとう。俺、兄ちゃんのこと忘れないから」


 こんな風な感謝しているというものだった。


 そうして助けた人達が無事にポロン達の待つ場所へと転移して行くのを俺達は見届けたところで、俺は改めて三人に謝罪することにした。


「すまない、さっきは怒りで我を忘れて勝手なことをしてしまった」


 本来するべき合図まで忘れていたのだから言い訳のしようもない。これは完全に俺の落ち度だ。


「構いやしねえよ。と言うかお前がやらなかったら俺がやってたしな」


 だがオグラーバは責めないどころかそうやってこちらを擁護してくれていた。


「二人も迷惑を掛けてすまなかった。それにあの人達のケアも任せきりになってしまったし」

「気にしないでください。私達はイチヤ様の役に立てれば満足なのですから」

「それにああいう境遇の人達の気持ちは嫌だってくらい私達は分かっちゃうし、そんなものでもこうして役に立つのならいくらでも使わせて。そうすれば少しは私達の過ごしてきた辛い日々でも報われるような気がするし」


 そういうロゼを見ながら、俺はデュークがこの二人を連れて行くように言ったのはこの為だったのかと思い至った。


 今回のように男の集団によって乱暴された女性や子供の中にはその所為で大人の男を本能的に怖がってしまう人も居たのだ。そしてそういう相手のケアを俺とオグラーバでやるのはかなり難しかったことだろう。


 そういう意味でロゼとソラは非常に役に立ってくれた。更にソラに至っては残念ながら既に死んでいて助けられなかった人達の遺体を供養のために焼いてくれたし。


 迷宮において生物の死体はある程度の時間の経過と共に消滅していく。なんでも詳しい原理までは分かっていないのだが迷宮がその死体を吸収すると考えられているらしい。


 そうなる前にせめてもの供養が出来ただけでも彼女達は幸運な方とオグラーバは言っていた。ましてやこうして救出されたのだから言う事はないだろうとも。


(この分だとメロディアの事も覚悟しておくべきなんだろうな)


 攫われた彼女が何もされずに無事でいる。そうであるならば最高なのだろうが現実はそう甘くはない。それを今回の事で思い知らされた。


「地獄を見る覚悟、か……」


 デュークの言っていた言葉の本当の意味がようやく今になって理解できた。あの汚物共から仕入れた情報ではまだ先に同じような盗賊団などが幾つか居るそうだし、ここ以上の光景がないとも限らない。


 そしてデュークはこうなることを半ば予想していたのだろう。そしてそれは冒険者として生きていくのなら避けて通れない道なのだと俺は思う。


「さてと、それじゃあ先に進もうか。俺達の目的はまだ達成してなんだからな」

「そうだな……進もう」


 例えこの先にどんな地獄が待っていたとしても。そしてその地獄を生み出した奴らを決して許しはしないという決意と共に。


 そうして先に進んだ俺達はそれから二度も同じような汚物共と遭遇し、そしてとある部屋で遂に目的の奴らと邂逅する事になる。


 そしてそれは皮肉にも初めて俺がメロディア達と出会ったあの場所だった。

感想お待ちしております。


それと申し訳ないですが誤字脱字を見つけたら指摘してもらえると助かります。

恐らくまだまだあるはずなので……(-_-;)

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