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天職に支配されたこの異世界で  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中


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第十八話 思わぬ再会

 ギルドに到着した俺達三人は依頼達成の報告をする為にカウンターへと向かう。そしてちょうどその内の一つであるミズリーのところが空いていたので行こうとしたところで、


「おっと、すまない」


 同じようにそこに入ろうとした人物と鉢合わせする形になり、お互いに一歩退くこととなった。


 そして俺もその謝罪にこちらこそという言葉を返そうとした次の瞬間、


「え!?」

「な!?」

「嘘!?」

「ふむ……」


 と、俺の顔を見た相手側の四人はそれぞれの反応を示す。それもそうだろう。何故ならその四人組は前に迷宮で見たあの四人組だったのだから。


 もっとも俺はその事に気付きながらも平静を装った。


「イチヤ、知り合いなの?」

「いいや、初対面だと思うが」


 それどころか平然とロゼの言葉に嘘を言う。実はこの世界に来て最初に会った人物だなんてことは欠片も表に出さずに。


 そしてその言葉を聞いたあちらの若い方の男が動揺を隠せずに問い掛けて来た。


「ほ、本気で言ってるのか?」

「本気だが、もしかしてどこかで会った事があったか? それなら申し訳ないが」

「いや、だって……」


 この返しに男は次の言葉を紡げなくなる。


 別人だとは思えない。だけどこの反応だとそう思わざるを得ないといったところだろうか。


 それにこいつらからしたらあの時の男が生きている事は都合が悪いのも影響しているだろう。


 仮に俺がここでその男だと暴露したら嘘をついていたこいつらの立場がない。それどころかデュークの話では虚偽の申告でギルドから何らかの罰が下る可能性も考えられるとのこと。


 そういう面もあってここで嘘を吐くなとは言わないし、言えないのである。


 と、そこで、


「本当にあなたはあの時の方ではないのですか?」


 水色の髪の女性はこちらの目をまっすぐに見つめて尋ねてきた。それに対しても俺は平静を装って答える。


「だから違うって言ってるだろ。そもそもあの時というのが何時なのかさえさっぱり何だが?」

「ですが!」

「そこまでにしておけ、メロディア」


 食い下がろうとしていた水色の髪の女性メロディアを唯一先程驚愕の声を上げなかった中年の男性が止める。


「オグラーバさん、どうして止めるのですか?」

「どうしてもこうしてもあるか。そいつが初対面だって言ってるんだ。ならこれ以上の質問は迷惑でしかないだろうが」

「でも信じられないくらいそっくりだよ? と言うか本人としか思えないし」

「俺もテリアの意見に賛成だ。余りに似過ぎているし無関係だとは思えない」


 これでこの四人の名前が判明した。水色の髪の彼女がメルディアでもう片方の女性がテリア。そして中年の彼がオグラーバとなればこの若いのが前に聞いたポロンなのだろう。


「だとしたらどうするつもりなんだ、お前らは?」

「そう言われると、その……」


 呆れ様子で問われたこの言葉にポロンとテリアが言葉を濁すのとは対照的に、


「きちんとギルドにその事を告げて事実を明らかにするべきです。そもそも私は仮にあの方がどうなっていようとそうするべきだと思っていました」


 メロディアははっきりと答える。しかしそれを予想していたのかオグラーバは簡単に返してみせたが。


「つまりメロディアは嘘を吐いたポロンとテリアが罰せられても構わないって事だな?」

「そ、それは……」

「それに事実はどうであれ、こいつ本人が違うと言い張っているんだ。それじゃあギルドだって納得しないのは判るだろ? つまりこのことはこいつが本人だと認めない限り騒いでも無駄なのさ」

「だから俺は違うって言ってるだろ。それを認めろとか無理に決まってる」

「そうだったな、すまない。ま、こういうことだ。お前達も分かったな?」


 これには反論できないのかメルディアは渋々と引き下がり、テリアとポロンはあからさまにホッとした様子で息を吐いていた。恐らくこの二人が手柄を横取りしようと言い出したのだろう。


 普通なら怒るところだが、今回はそれがこちらにとっても助かったのも事実なので見逃してやることにする。


「ほらほら、他のところも空いたし行くぞ」


 未だに納得がいかないのかメロディアはこちらをジッと睨むように見つめてくる。だがそれでも最終的にはオグラーバによって引き摺られるように去って行くことになった。


「で、本当のところはどうなの?」


 ミズリーのところで依頼達成の報告を終えて宿へと戻る道中にロゼがそんなことを尋ねてくる。


 どうやら気になっていたらしく、それは興味のない振りをしながらチラチラとこちらを見てくるソラも同じようだ。


「それに答える前に、ソラは腹が減ったなら食い物を買うか?」

「違います! ……あ、でも、買ってくれるのなら……」


 茶化すだけのつもりが本当にその場で食べられる物を買う事になるという余計な一幕の後、俺は答えを口にした。


「まあ、ご想像の通り俺だよ。ただ事情があるからその事は誰にも言わないように。これは命令だ」

「分かったわ。ご主人様の命令だしね」

「ふぁたしもも了解しました!」

「ソラ、分かったのは良いけど食べるか喋るかどちらかにしようか。てか、それだけ食ってこの後の晩飯を食えるのか?」

「大丈夫です。むしろ余裕と言えます」


 その言葉を証明するようにソラのお腹の虫がまたしても鳴る。食っている最中でもなるって一体どんな体の構造をしているのやら。


(本当に食料の調達に困らない天職で良かった)


 そうでなかったのなら一体どれだけの金を食費に費やしていたことか。想像するだけで恐ろしい。


 顔を赤らめて恥ずかしがっているソラの可愛らしい姿に若干の恐怖を感じざるを得ない俺だった。

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