Grand King⑤
「それは・・・どうして・・・・・・」
「もう勝ちたくないんだ、次もGrandを取ったら、俺は確実に『大統領』にさせられる、嫌なんだ・・・国のリーダーになるなんて重荷を背負うのは 」
そうやって内情を吐露する姿は、私が見てきた王者としてのレン様の印象からあまりにもかけ離れている。
それでいて、あまりにも等身大の青年の姿がそこにはあった。
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【学園ランキング】が開催される意味。これは一学園の催しだけでは無い。
国のリーダーと代表達を選出する国家を上げた一大プロジェクトだ。
100年前、地球に超小型の隕石が落下した。
落下直後に変化は訪れた。世界中で人間が物理法則を無視した現象を起こしている。という体験談と目撃情報が散見された。そう、まるで魔法の様に・・・。
後にこの現象は隕石内部に含まれていた未確認の宇宙粒子が大気圏に突入した衝撃で光と同一の速度で世界中に拡散されたのだろうという見解が専門家から出された。
その後、未確認の粒子と科学技術の融合により、あらゆる分野の技術が目紛しく進歩し、かつ、人々の生活もより革新的な形へと変わった。
ワープバスが良い例だろう。100年前の人類の技術力で
はワープ移動を実現させるなど想像すらできなかった。
そして・・・人類は遂に【完全なる拡張現実の実現】を成功させたのだ。
これが成功した要因は【粒子変換】という新技術の誕生が大きい。簡単に言ってしまえば、夢、幻と言われていた、人間が仮想空間に肉体ごと移動する事】が可能になったのである。
厳密に言えば、肉体のミクロな粒子情報を仮想空間内で電子体として再構築する(構築速度は0.0001秒)為、科学的観点から見れば【細部まで同一の別物】であるが、広義的には「同じ」と言えよう。
こうして、仮想空間が【完全なる拡張現実】へと変わった事により、人々は次々に仮想空間へ居住区を広げ、企業も仮想空間内にも市場を広げて行った。
更に、世界では【武力と兵器を用いた争いは仮想空間でのみ行う】という世界共通条約が結ばれ、これにより世界中の軍事的代表、政治的代表は物事の吸収と思考速度が著しく速い10代後半20代前半までに選出する流れが生まれた。
これにより、【学園ランキング】が誕生した。
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私はてっきり、レン様自身が大統領を目指して学園ランキングを勝ち続けている物だと思っていた。
でも、本当は違ったみたいだ。
レン様は、本当は勝ち続けたくなかった。
なら、私は一体・・・今まで誰を想って票を入れていたのだろうか・・・・・・。
「それでも、ランキングに参加しているのはどうしてですか?」
「轟家の取り決めなんだ。これに俺は逆らえない」
「じゃあ、わざと点数を低く取って負けるのは?」
「それが出来たら既にやっているよ」
推しの意思は自分の意思、推しの幸せは自分の幸せ
これがレン様を推すと決めた時から私が抱いていたモットーだった。
このモットーに反する感情を私は今、抱いてしまった。
この感情が生まれてしまったことがショックで行き場の無い嫌悪感が湧き、抑えが効かなくなる。
そして
「アンタが俺の印象を下げてくれれば、偶像力のファン投票で他の候補者に票が行くから・・・・・・」
「ふざけないで・・・ください 」
「え・・・?」
「あなたが、レン様がファン投票で差を付けられたくらいで負けれる筈がないじゃないですか!!!」
私が抱き始めていた嫌悪感が、思わず発してしまった言葉と共に漏れ出てしまった。
あぁ、こんなの・・・ファン失格だ。
目の前のレン様は心底驚いた顔をしている。
「ご・・・ごめんなさい!他のファンの方をあたってください!」
これ以上私はレン様の前に立っている事が耐えられなくなり、お辞儀をしてから直ぐ様、レン様の呼び止める声も無視して広場を飛び出した。
レン様の前で黒い感情を抑える事が出来無かった自分が恥ずかしくて悔しくて、どうしようもないまま、ひたすら走った。
醜く歪んだ顔を悟られない様に。
これ以上、レン様のパーソナルに私という個のオタクが干渉しないように。




