Grand King②
Top of Kingが閉幕し、校内敷地内の第三ステージを後にした友達と私は同じく校内のファストフード店へと向かった
入ったファストフード店で席に着くや否やカイト様推しの友達が口を開いた
「カイトくんヤバくなかった?」
彼女の名前は望月ララ
カイト様がTop of Kingの予選に出場してから、3年間単推しを貫いている。
「うん!ヤバかった・・・」
次に口を開いたのは私と同じくレン様推しの夏吉アキノだ。
「だよなだよなぁ!挨拶が終わったあとのピースめちゃめちゃメロかった~えへ……うへへへ……」
恍惚とした目のままニヤつくララの口からドバドバと滝の様にヨダレが垂れる。
「おいおいマーライオンみたいになってっぞ」
「それなんだっけ?東南区に千年前まであったライオンの銅像だっけ?」
「あれっ、この例えマニアック過ぎた?」
「マニアックだし、古くない?史学部じゃないとまず知らないワードでしょ、それ」
「でも伝わったじゃん」
「ナツミに聞いた事があったからね「千年前の東南区には口から水を吐き続けるライオンの像が置いてあった」ってね、確か吐いた水はそのまま水場に・・・ってめっちゃビショビショ!」
「うん、流石、毎度の事ながら「水」属性の水分量は凄いなー」
「言ってる場合じゃなくって!やだ!カイト様のバッグまで濡れちゃってる!ねぇ、ナツミ!お願い『クリーマ』かけてくれない?」
お店のテーブルと床をビショビショに濡らした状態のララが私へ清掃魔法の使用を求めた。
「え~『クリーマ』くらい自分でかけなよ」
「私の『クリーマ』はランクD-だから完了まで3分掛かるんだもん」
「5分ぐらい我慢しなよ」
「5分もカイトくんのカバンを汚したままにするなんて耐えられないよぉ!ナツミだってレン様のタオル濡れたままにしたくないでしょう?」
『クリーマ』とは、基礎魔法の一種だ。
誰でも体内の魔力を消費して発動自体は出来るが、速度とクオリティは個々のセンスにより左右される。
練習をすればある程度は伸ばせられるけど、限界はあるから、人によっては自分で『クリーマ』するより旧式機で掃除するか、己より『クリーマ』のランクが高い人間に代行出力して貰う人もいる、今のララの様に。
「今日奢るから!お願い!」
「わかったよ・・・はいっ『クリーマ』」
ララに手掌を指向しながら唱える、キラキラとララの周りに『魔法のエフェクト』が現れる。
私は渋々、頼まれた通り、1秒で多量の水分で濡れたララの身の回りを清掃して見せた。
「はい」
「あっありがとっ(軽)、はわあああんカイト様ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
ララは私に例を言うとカイト様のバッグを持ち上げ、それに向かって高速謝罪をした。
「でも、興奮するのもわかるよ、だって今日のカイトくんメロすぎたもん」
「でしょ!?いつもメロいけど今日は特に最後のピースで卒倒しかけたもん!というか!した!!あれで一度私死んでる!確実に!!」
「あれにはレン様担の俺も一瞬浮気しかけたよね」
「こらっ!この不届き者!貴様にカイトくんはやらんぞっ!!」
ララはバッグを守るように抱えながら、シッシッと手で「あっち行け」のジェスチャーして見せた。
「流石に冗談・・・というか、ララには悪いけど来月もGrand になればレン様5回連続制覇だもん5回連続でGrand入りを果たした生徒は前例が無いから史上初の記録になる、そんな時に浮気なんてしてる暇なんて無いっての」
「そっかぁ、じゃあ・・・その記録への王手、悪いけど阻ませて貰うね、次Grand入りするのはカイトくんだから」
「おほほっおとといきやがれですわ〜~・・・・・・って言いたい所だけど、カイトもカイトでGrandに成れるポテンシャル充分あるんだよな~くぅ〜~レン様担として負けらんないね!ナツミ!!」
「えっ?うん、そ・・・そうだね・・・」
「・・・・・・・・・アンタ、まさか本当にカイトに浮気して・・・・・・」
「ち・・・違うよ!!」
わたしは咄嗟にそれは絶対違うと首を大きく横に振って否定した。
「め・・・・・・めっちゃ全力で否定するのね・・・・・・」
「あっ・・・ごめん・・・・・・」
私は勢いあまってララの目の前で大きく「カイト様に推し変する可能性」を否定した事を謝った。
「なーんて。全然許す、寧ろ本当に推し変仕掛けてた方が絶交物だったよ」
「にしても、ちょっと反応薄くなかった?本当に負けられないって思ってるの?」
「思ってるよ!勿論!!だって、次で新記録樹立なんだから!」
とは、言ったものの・・・・・・
正直、一ファンが推しの新記録更新を祈る事自体に違和感を感じている。
ファンとして当然の行動だと思うけれど
私はレン様を知ってからずっとレン様自身が好きであって、TOPに立ち続けている事自体を重要視出来ていないのだ。これが、担当として間違っている事なのかもしれない。実際、彼女のように推しの制覇を心から望み応援の熱量を上げる事こそ、正しいファンであり、それが寧ろ存在意義なのだろう。
そうだと、頭ではわかっていても、私は心から推しに「勝ち続ける姿」を望めないでいる。
いや、その望みに対し、常に凝りを感じていると表現した方が良いかもしれない。




