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【毎日更新】魔法戦士のお仕事~とある画家の死にまつわるエトセトラ~【45話で完結】  作者: 鷹茄子おうぎ


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暴落のカラクリ

「ねえねえ、これって事件の前触れなの?」

フィクションの物語でしか魔法戦士の仕事を知らないウィズモアが、目をキラキラさせながらシンザーに聞いてきた。


「どうだろうな…でも、何かおかしなことが起こっているのは間違いない」

まるで事件を楽しみにしているかのようなウィズモアに、シンザーは苦笑してしまった。


「ところで…私達はどこに向かっているの?」

ナザリトのチケ屋まではウィズモアがぐいぐい引っ張っていたが、今はシンザーが先導している。ウィズモアの疑問はもっともだ。


「一旦、拠点に戻る」

ファブロス隊の拠点に向かって歩きながら、シンザーは極々簡潔に答えてやった。


「テネラニ追悼展を主催しているのは誰か…それを調べるんだよね?」

「そうだ」

ウィズモアの見立てに、シンザーは満足げに頷いた。


シンザーが必要最低限のことしか答えないのは、ウィズモアに意地悪をしているから…ではない。ウィズモアを試しているのだ。


今はラヴァリーノ家の意向を汲む形でウィズモアのわがままに付き合っている。だが、いつまでも付き合える訳ではない。最終的にはこの仕事に向いているかどうかを判断しなければならない。向いていなければ…その時は仕方がない。それはウィズモアも受け入れてくれるだろう。


「ナザリトは何でも屋が関わっているような気がするって言ってたけど…」

ウィズモアは何か腑に落ちない感じだ。引っ掛かっていることがあるならそれは何か?シンザーは聞いてみることにした。


「何か気になっているのか?」

「ん…何でも屋っておカネ次第で何でもする人達って聞いてるけど、チケットを売り払うのはあまりにも小さな仕事だなあって」

これにはシンザーも思わず吹き出してしまった。


これまでに様々な事件に関わってきたシンザーは、ものの見方が魔法戦士の見方になってしまっている。そんなシンザーからすると、ウィズモアの見方はユニークで面白い。


「小遣い稼ぎには丁度いいかもしれないな」

「それから~!」

シンザーが吹き出したことに、ウィズモアは少しばかり気を悪くしたようだ。


「何でも屋の人達の依頼主は、チケットが暴落することで何のメリットがあるんだろう?」

「そうだな…そこがよく分からないところだ」

ウィズモアの抱いている疑問はもっともだ。これにはシンザーも満足げに頷いた。


とは言え、シンザーはこれまでの経験からある仮説を立てていた。だが、今の段階でそれを言う必要はないだろう…あれもこれも手取り足取り教えるのは、ウィズモアのためにならない。


ファブロス隊の拠点はライラリッジの街中にある。郊外にある軍の施設に戻る必要がないのはありがたいことだが、調べものがあまり好きではないシンザーは、少しばかりげんなりしてしまう。


上手い具合に該当する資料を見つけることができればいいんだけどな…そうじゃなければ様々な資料をあたることになる。拠点にこもることになっても仕方がないか…そう思い始めていたシンザーに、思わぬ朗報がもたらされた。


「追悼展を主催しているのは、ラグーザっていう資産家なんだって」

シンザーが今一番知りたいと思っていることを、ウィズモアが答えてくれたのだ。誰かに聞いたのか?そんな素振りは見えなかったが…。


「何で分かったんだ?」

「ん…ウィズに聞いた」

シンザーの疑問はもっともなことだが、ウィズモアは何でもないことのように答えた。もちろん、それはシンザーにとって何でもあることだ。


「ウィズ?」

ラヴァリーノ家にウィズという名の人物は、男だろうが女だろうがいない…それぐらいのことは、事前に頭に入れている。


「ウィズは私が作ったゴーレムだよ。主要な新聞は毎日読ませてるの。あとはジャンルを問わず色んな本を読ませてる」

「そんなことができるのか…」

これにはシンザーも驚きを隠せなかった。


高機能なゴーレムが開発されていることは知っていた。ウィズモアが優秀な魔法使いで、ゴーレムをはじめとした様々な魔法具を開発していることも知っている。それでもそんなゴーレムを作って、運用しているとは思わなかった。


たいしたもんだ…上からウィズモアと行動を共にするようにと言われた際に、シンザーは反発していなかった訳ではない。命令だから受け入れただけで、一位武官である自分の相棒には相応しくないと思っていた。これは考えを改めなければならないだろう…ウィズモアはそれだけの実力をもっている。


「ラグーザはテネラニだけじゃなく、多くの芸術家を支援しているんだって」

「そうか…」

ウィズモアは少し得意気にラグーザのことを話してくれた。その情報はありきたりと言えばありきたりだが、ここは得意になってもいいところだ。


「そうすると…チケットを配ったのはラグーザってこと?」

これには半信半疑なのだろう…ウィズモアも自信なさげだ。


「それは半分正解だ…たぶんな。チケットを配ったのはラグーザじゃない…ラグーザはチケットの配布を依頼しただけだろう」

シンザーの見立て、それはこれまでの知識と経験に裏打ちされたものだ。だから、ウィズモアも興味津々で聞いている。


「ところがこの仕事を受けたヤツは、何でも屋に配ってしまった。少し偏った見方になるが、何でも屋のヤツらがテネラニ追悼展なんかに行く訳がない。だから、ナザリトのところにあのチケットが集まった…そう考えると腑に落ちる」

この見立ては思いもよらないものだったようで、ウィズモアは驚きに満ちた表情を浮かべている。


「これからそいつを確かめに行く…ついてこい」

さすがは一位武官だよね!これまでに何度かシンザーの超人っぷりを見てきたウィズモアは、有無を言わさぬ様子のシンザーに、こくこくと頷きながら付き従った。

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