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魔法戦士のお仕事~とある画家の死にまつわるエトセトラ~  作者: 鷹茄子おうぎ


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迷子猫の捜索

日が沈み、夜を迎えたライラリッジで、『風のささやき亭』はいつも通り賑やかだった。ここは朝から賑やかだが、本当に賑やかになるのはこれからだ。ここをよく知る者にとって、黄昏時の今はまだ序の口と言っても過言ではない。


この賑やかだが静かな一時に、ここで仕事を請け負った何でも屋の数人が仕事の経過を報告しに来る。デレインはそのうちの一人だ。


「俺がこんなことを言ったら、本当は駄目なんだがな…そんなに真面目にやらなくてもいいんだぜ」

『風のささやき亭』の主シンビネは、自身に仕事の経過を報告しに来たデレインを気遣うように助言した。


「そいつは本当にあんたが言ったら駄目なヤツだな」

これにはデレインも思わず苦笑してしまう。


もっともシンビネの言い分も分からなくはない。デレインが今やっている仕事は、迷子になった猫の捜索だ。見つけたのならともかく、今のところはさっぱりだ。シンビネの言う通り、少なくとも毎日報告をする必要はないように思える。


それでもシンビネに経過の報告をするのは必要なことだとデレインは思っている。確かに迷子猫の捜索は、たいした仕事ではない。でも、飼い主さんにとっては大事だ。気が気でないはずなんだ。それを考えると、報告をおろそかにはできない。


さて、どうしたものか…『風のささやき亭』を後にしたデレインは、明日以降の迷子猫の捜索のことを考えながら帰路についた。妙案は浮かばないが、この手の仕事は足で稼ぐ以外にない。気を取り直して、明日も地道に捜すことにした。


デレインは二位武官の地位にある魔法戦士だ。同じ地位にある者で、こんな地味な仕事をしているヤツはいない。それでもデレインは、今の自分が置かれた立場や仕事を気に入っていた。


ガラの悪そうな見た目を買われ、デレインは何でも屋を装い、『風のささやき亭』で簡単な仕事を請け負うように命じられている。最近は迷子になった愛猫の捜索が多い。それ以外では迷子になった愛犬の捜索だ。


自身が借りているアパートが見えたところで、デレインは思わず足を止めてしまった。自室に明かりがついているのだ。カーテンに映る人影には見覚えがある…デレインは苦笑しながら自室へと向かった。


「不法侵入だぞ…」

いつものように、デレインは事実を指摘してやった。事実を指摘されたシンザーは、特に気にも留めずにこくりと頷いた。


それを言ったところで、シンザーが気にしないことは分かっていた。デレインは潔く受け入れている。だから、気になっていることを尋ねてみることにした。


「今日は一人のようだな…何かあったのか?」

喧嘩でもしたのなら、仲裁してやろう…そう思っていたのだが、そんなことはなかった。


「大学の課題があるんだとよ」

シンザーはケラケラと笑っている。どうも信じていないようだ。


「信じてないのか?」

シンザーの相棒にはちょうどいいと思っていただけに、デレインは少し複雑な心境で尋ねた。


「ウィズモアは俺の外部協力者だ。そうなると決まった時に、大学の方に照会している…そしたら必要な単位はすべて取得していて、進級は問題ないんだとよ。あとは卒論だけって話だ」

「そうか…」

ウィズモアが嘘を吐いているのは確かだが、シンザーはそれを問題にしていない。むしろ好機と捉えているようだ。


「一人の方が気楽。そういう訳じゃあないよな…」

それならシンザーはここに来ないはずだ。


「どうしてここに来た?」

「今回の一件の結末をシンビネが知りたがっている。だから、あのおっさんとの仲介をしてほしい」

シンザーはデレインに、シンビネへの橋渡しを頼んだ。


「安くはないぞ」

シンザーは毎日のように不法侵入をしている。それをデレインはいつも見逃してやっている。だから、多少はふんだくっても問題はない。デレインは声を出さずにうっすらと笑みを浮かべた。


「そうだな…ところで、今は何をしているんだ?」

それに対して、シンザーはケラケラと笑いながら近況を尋ねた。話を逸らす意図があるのは明白だ。


「猫の捜索だ」

だが、デレインは敢えてそれに乗った。


「この前の黒猫、まだ見つかっていないのか?」

「その子は無事に見つかって、飼い主のもとに送り届けたよ。今、捜しているのはキジトラのマリンちゃんだ」

デレインは迷子になったキジトラの写実画をシンザーに見せた。それを見ながら、シンザーはこくこくと頷く。


「安くはないからな」

ここでデレインは念を押した。上手く話を逸らしてやったと思っているのかもしれないが、そうは問屋が卸さない。これにはシンザーも苦笑しながら頷くしかなかった。


そうしてシンザーとデレインは、取るに足らない話をしながら夜が更けるのを待つことにした。その頃になれば、朝から賑やかだった『風のささやき亭』にも静かな時間が訪れることになる。


「さてと…行くか」

十分に夜が更けたところでシンザーが切り出し、デレインもこくりと頷いた。そして、2人はアパートを後にした。

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