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魔法戦士のお仕事~とある画家の死にまつわるエトセトラ~  作者: 鷹茄子おうぎ


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その裏には…

「いくら芸術のためとは言え、自殺を心中事件に見せかけるなんて…」

事の顛末を知ったソムニアは、信じられないと言わんばかりだ。


「ねえ…ちょっと怖すぎだよね」

ウィズモアもそれに同調する。芸術の分野には詳しいと自負しているウィズモアにとっても、今回のような出来事は初耳だ。


「そうだな」

シンザーは2人に同調したが、実のところはそんなに怖いと思っている訳ではなかった。人の狂気というものは底が知れないものだ。もっとおぞましい事件を知っている。


「でも、ギャラリーの寄り添うツバキが贋作だって、よく分かったね。どうして分かったの?」

ウィズモアは感心したようにシンザーに尋ねた。


「初めてあの絵を見た時、上手く言えねえけど違和感を覚えたんだ。それまでの作品と比べて、奥深さに欠けているというか…でも、それはウィズモアも同じだろ?」

それはシンザーですら見抜けたことだ。ウィズモアに見抜けないはずがない。


「ん…そだね。でも、私の見る目の方に問題があるんだって思ってた」

作法としてウィズモアは謙遜したが、あの場に贋作があるなんて思いもよらなかった。だから、シンザーの見立ては当たっているとは言えない。


「そうだったのか…」

ウィズモアの告白は、シンザーにとっては意外なものだった。


「でも、シンザーが特に情熱は感じないって言ってたから。あまりにも率直な感想だったけど、私も先入観を捨てて見つめ直そうと思って」

ちょっとしたことで、ものの見え方が変わってくる。ウィズモアはそれを実感していた。


「それで贋作だと疑い始めたのですか?」

そんな些細なことがきっかけになるとは…ソムニアは驚きを隠せないでいた。


「ん…そだよ。芸術からは程遠いけど、それ故に自由なシンザーの審美眼のおかげだね」

ウィズモアの言い分は、褒めているのか貶しているのか…分からないものだった。


「それは…褒めているのか?それとも貶しているのか?」

「さあ…どっちだろうね」

だから、シンザーもそれを確認するが、ウィズモアは当然それをはぐらかす。


「褒めてます。これは間違いなく褒めてます」

「もちろんよ」

ここは危機を察知したソムニアが適切なフォローをし、ウィズモアもそれに乗っかった。この連携はさすがである。ここは分が悪い…そう判断したシンザーは、話題を変えることにした。


「それはそうと、テネラニはどうしてキリマベラジなんだろうな…セルヴェンカの方が良くないか?」

それはどうにも腑に落ちないことだった。


結婚に伴い、姓が変わるのはよくあることだ。そして、セルヴェンカ家は間違いなく名家…あの冴えない男がテネラニ・セルヴェンカの名で活動していたら、こんなことにはならなかったのではないか…そう思わずにはいられない。


「キリマベラジってね…ベラジ山っていう意味なんだよ。アルカザーマでは、山の神ダラカニの息子の一人とされているの。信仰の対象になっている霊峰だから、大レガルディアの時代にも登山は禁止されていたんだよ」

ウィズモアが明かしてくれた事実は、シンザーにとっては思いもよらないものだった。


「それを踏まえると、テネラニにとって姓を変えるなんてもってのほかだったんじゃないかな…」

ウィズモアはテネラニの心中を推し量りながら、シンザーの疑問に答えた。


「なるほどね…あの姓にそんな意味があったとはな」

それは答を見つけられなかった疑問だった。ウィズモアの仮説はおそらく正しいだろう…十分に納得できるものがある。


「テネラニの気持ちはよく分かりますが、何とかならなかったのでしょうか…」

それはソムニアだけでなく、誰もが思うことだ。そして、それには誰も答えることができないだろう。それとは別に、ウィズモアには新たな疑問が生じていた。


「ロマネラがテネラニという画家がいたことを大衆に示すために色々と画策したとして…あんなに上手くいくのかな?」

何か…よく分からないけど確かな違和感を覚え、ウィズモアは難しい顔で尋ねた。


「確かにそうですね…」

これにはソムニアも同調する。そんな2人のやり取りを見ながら、シンザーはまだまだ甘いな…と思ってしまう。


「ロマネラの…いや、セルヴェンカ家だけの力ではないだろうな」

明確な根拠がある訳ではないが、シンザーには自信があった。これにはウィズモアもソムニアも注目してしまう。


「おそらくラグーザが関与しているはずだ」

これにはウィズモアもソムニアも驚きを隠せないでいる。


「ラグーザはラザルト陛下のはとこ…そして、ラグーザの叔母は陛下の第3夫人だ」

シンザーは暗にこの件が王室が絡む案件であることを示唆した。


シンザーの見立てには、何の根拠もない。それでもウィズモアとソムニアは納得してしまった。この見立てが正しければ、杜撰な工作にも拘らず、画壇の評価が一変したのも納得できるからだ。それが逆にこの見立てが間違ってはいない証になっているように思える。


「もっとも証拠はないがな」

仮にそれを証明できたとしても、何らかの取引をされてそれで終わりだ。世の中そういうもんである。


「真実は闇の中…ですね」

これはソムニアの言う通り。誰にも証明はできないし、この程度の案件で危ない橋を渡ろうとするヤツはいない。


これって結構危ない話だよね…シンザーとソムニアのやり取りを聞きながら、こくこくと頷いているウィズモアはそう思う。


もっともこの離れでの会話は誰にも聞かれることはない。ここを造った時に、ウィズモアがそういう術式魔法を設置したのだ。今になって思うと、それは本当にいい判断だったと思う。こんな話をすることになるとは思わなかったけれど。

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