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【毎日更新】魔法戦士のお仕事~とある画家の死にまつわるエトセトラ~【45話で完結】  作者: 鷹茄子おうぎ


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デレインが探る男

ここ数日、デレインはある男の観察をしている。男の名はモルヴェド。調べてみたところ、窃盗の前歴が数回あった。だが、前科はない。だから、軍の魔法戦士もノーマークだ。


モルヴェドがなぜテネラニ追悼展にいたのか?それはよく分からない。前歴があることから、ファブロス隊にはモルヴェドの資料がある。それによると、絵画鑑賞を趣味としている訳ではないようだ。


だからと言って、モルヴェドがテネラニ追悼展にいてはならないという訳ではない。それでもシンザーが目をつけた男だ。何かあるに違いない。だから、昼間はデレイン自身がモルヴェドの観察をし、夜は使い魔のフクロウに観察させている。それにより、幾つかのことが分かってきた。


モルヴェドはライラリッジ郊外の木工所で働いている。半年程前からここに勤めているらしい。


「真面目で筋がいい…アイツは掘り出しもんだよ」

木工所の支配人が、ほくほく顔で教えてくれた。モルヴェドには前歴があるが、今は真面目に働いているようだ。


シンザーがなぜモルヴェドに目をつけたのか?デレインにはそれが分からなかった。前歴があるとは言え、この件には何の関わりもないように思える。今日もモルヴェドがアパートに帰ったのを見届けると、デレインも帰宅することにした。


自身が借りているアパートが見えたところで、デレインは思わず足を止めてしまった。自室に明かりがついているのだ。カーテンに映る人影には見覚えがある…デレインは苦笑してしまった。


「よう、遅かったな」

「お、お邪魔してます…」

部屋に入ると、さも当たり前のようにシンザーが出迎えてくれた。一方で、ウィズモアは恐縮しきりである。


シンザーに関しては、こういう男だから仕方がない。デレインはもう諦めて、それを受け入れている。でも、ウィズモアにはまだ常識があるようだ。それが分かり、デレインはホッとした。


「不法侵入だぞ…」

苦笑しながら、デレインは事実を指摘してやった。


「そうだな。ところで、そっちはどうなっている?」

シンザーは不法侵入をあっさり認めたが、それをまったく気にしていない。それでこそシンザーだ…つき合いが長いデレインは、苦笑しながら頷いた。


「あ、あの…お茶を淹れますね」

よく言うと闊達自在なシンザーだが、とてもじゃないがウィズモアには同じようにできそうにない。だから、ペコペコしながら立ち上がった。


「おう、悪いな」

立ち上がったウィズモアに、さも当たり前のようにシンザーが答える。


それはお前が言うことではないだろう…デレインはそう思いながら苦笑した。それはあなたが言うことじゃあないでしょ…ウィズモアもそう思いながら呆れ顔だ。それでも2人は何も言わなかった。


「旨いな…」

ウィズモアの淹れた紅茶を飲みながら、シンザーは感慨深げに呟いた。デレインも同調するように、こくりと頷いた。


「ん…ありがと」

紅茶のいれ方は、その道のプロであるソムニアからしっかりと手ほどきを受けている。多少の贔屓目はあるだろうが、太鼓判も押されている。だから、ウィズモアは自信を持っていた。もっともそれをお披露目する機会はあまりないのだが。


「それで…そっちはどうなっている?」

シンザーは改めてデレインを問い質した。それを受け、デレインはここ数日で自身が掴んだ情報を簡潔に説明した。


「そうか…」

それを聞いたシンザーは、何やら得心が行ったようだ。でも、ウィズモアはいまいちよく理解できなかった。


「それで…このモルヴェドって人は何をしたの?」

モルヴェドに窃盗の前歴があるのは確かなようだ。でも、それは寄り添うツバキ切り裂き事件とは、あまり関係がないように思える。


「俺も知りたいところだな」

それについては、デレインも同感だった。自身が調べた情報では、モルヴェドが怪しいとは思えない。


「こいつがモルヴェドがしたことを明らかにしてくれるはずだ…」

シンザーは魔法の小瓶を取り出した。その中には光沢のある紺色の繊維片が入っていた。


魔法の小瓶は軍の魔法戦士がよく使う魔法具だ。ただの小瓶のように見えるが、不可視の盾で何重にも覆われているので、これを壊すのはかなり難しい。シンザーが小瓶を使う意味を、デレインはもちろん分かっている。


「わざわざ魔法の小瓶に入れてるってことは、そいつは大事な証拠ってことか?」

「もちろん」

それでもそれを初めて見たデレインの疑問に、シンザーは簡潔に答えた。


「それって…テネラニが使っていたアトリエで見つけたものだよね?」

「そうだ」

その繊維片に、ウィズモアは見覚えがあった。それに対して、シンザーは満足げに頷きながら答えた。


そして、自身の見立てをデレインとウィズモアに説明した。それは2人にとって、驚くべきものだった。


「事情は分かったが…腹が減ったな」

一通りの話が済んだところで、デレインが切り出した。この後の展開が何となく分かったウィズモアも、何かを期待するような目でシンザーを見ている。


「よしっ、今晩は俺のおごりだ!」

期待に胸を膨らませた笑みを浮かべるデレインとウィズモアに、シンザーはケラケラと笑いながら言った。


「やったー!」

この一言でウィズモアは小躍りしそうなほどに喜び、してやったりのデレインは満足げに頷いた。シンザーはそんな2人を引き連れ、デレインの部屋を後にした。

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