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【毎日更新】魔法戦士のお仕事~とある画家の死にまつわるエトセトラ~【45話で完結】  作者: 鷹茄子おうぎ


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シンビネの狙い

「お前さん達も匿名の依頼がどんなものか…それは分かっているだろう?」

これにはシンザーもマドンも重々しく頷いた。それはシンザーの問いの答えになっていないが、それでもシンビネが伝えようとしていることに、シンザーは耳を傾けることにした。


「そこに載せられる依頼はとんでもないものばかりだ…例えば殺人。こいつは軍の魔法戦士にとっては看過できないものだ。だから、必ず暗号化された依頼で出される」

ここで話を切ったシンビネは、続きをシンザーに促した。


「それは誰が読んでもちんぷんかんぷんなものだ。分かっているのは依頼主とシンビネ…あんただけ。こんな依頼、まともなヤツはまず受けない」

上手く乗せられているのを承知の上で、シンザーは答えてやった。


「なぜそんなことをするのか?それはお偉いさんが関わっているからだ。もっともここでは必ず俺が仲介するからな…その時点で依頼を受けようとするヤツにも内容が明らかになる」

シンビネはこれまでにあった数多くのとんでもない依頼を思い出し、思わず苦笑してしまった。


ここまでのシンビネの話に、目新しいことは何もない。既知の事実の復習が続いている。話を聞いているのがマドンだったら、今頃テーブルが粉々になっていたかもしれないな…シンザーはそんなどうでもいいことを考えていた。


「明るみになった時点で、あんたは軍の魔法戦士…もっと言えばファブロス隊に通報する。そこから先はニャブリが判断することになる」

十分な根回しが行われていれば、殺人は実行されることになる。つまり俺達は間接的に関わっている訳だ…シンザーは自嘲気味に笑った。


「それでやられた者は、急な発作で亡くなったと発表される…そこに疑いを抱くものはいない。表向きはな。疑いを抱いて調べるヤツは、もれなく行方不明になる」

定かではないが、これには軍の魔法戦士が関わっていると言われている…シンビネは肩をすくめた。


「それで?」

匿名の依頼がどういうものなのか…そんなことは百も承知だ。そろそろ本題に入ってもいい頃だ。


「だが、コイツは匿名の依頼の常識をぶっ壊す依頼だった…依頼主が誰なのか?それはもちろん分からないが、分からないのはそれだけ。あとはすべて誰にでも分かるようになっていた」

これにはシンザーもマドンもあんぐりとしてしまった。確かにこれは常識外れの依頼だ。


「かなりおかしな依頼だったんでね…その真相が知りたくなった。そのためにはファブロス隊がピサロを確保する必要がある」

シンビネの語った経緯を聞いたシンザーは、こくりと頷いた。


「この件をシンザー、あんたが担当しているのは心強い。真相が分かったら教えてくれ…必要なら協力もする」

タレコミという形でファブロス隊に恩を売り、真相が分かればそれを教えてもらう。上手いこと考えたもんだ。とは言え、シンビネの気持ちはよく分かる。


「ああ…分かったよ。邪魔したな」

これは悪い取引ではない。だから、シンザーはそれを受け入れた。そして、手持ちの1万リガ札をテーブルに置いて席を立った。迷惑料みたいなもんだ。


再びミシミシという音を立てながら、マドンも立ち上がった。それがシンビネを苛立たせるが、問題は解決したし、どうやら椅子も無事のようだ。よしとすることにしよう。


「ああそうだ…領収書を貰えるか?」

先程の1万リガは経費で落としてもらえるはずだ。シンザーの思惑を察したマドンは、ガハハと笑った。


「待ってな」

シンビネは苦笑しながら領収書を書いてやった。それを受け取ったシンザーは、マドンと一緒に『風のささやき亭』を後にした。


店内にはシンビネだけが残され、『風のささやき亭』に再び静かな時間が訪れた。これからはいつものように誰を表舞台に出すか…裏の倉庫に行って、じっくりと吟味することにしよう。何か忘れているような気もするが、気のせいだと思うことにした。


もちろん、それは気のせいではなかった。ずっと奥で待機していたものの、シンビネはやって来ないし何も起こらない。いい加減に痺れを切らした優男の一人が、様子を見にきた。


「おやっさん…話はもう終わったのかい?」

優男は苦笑しながら尋ねた。そこにはニヤニヤとしながらボロい椅子を運ぶシンビネがいたからだ。


「ああ、終わったぞ。待たせてすまなかったな」

奥で待たせていたことをすっかり忘れていたが、さすがにそれは口に出せない。シンビネは苦笑しながら謝罪した。


「じゃあ、みんな帰しても構わないな?」

「そうしてくれ。明日はもてなしてやらないとな…」

優男に答えながら、シンビネはにんまりと笑みを浮かべていた。


今日はシンビネの都合でいつもより早く店を閉めることになった。にも拘わらず、アイツらには遅くまで残ってもらった。その借りはしっかりと返す…それがシンビネの流儀。


今日の果実を考えると安いもんだ。あの件の裏に何があるのか…シンザーならそれを明かしてくれるだろう。シンビネはそれを楽しみに待つことにした。

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