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【毎日更新】魔法戦士のお仕事~とある画家の死にまつわるエトセトラ~【45話で完結】  作者: 鷹茄子おうぎ


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魔性の女

結局、午前中はいつも通りブラブラすることになった。いつものようにチケ屋のナザリトの所に行き、ジンジャーエールを堪能していると、今日も暇でいいよな…と言われてしまった。


シンザーはケラケラと笑うだけで、それを否定しなかった。今日は予定があるの!と声を大にして言いたいところだが、信じてもらえそうにないので、ウィズモアも何も言わなかった。


とは言え、いつもと違って予定があることは確かだ。なので、早めに昼ご飯を食べることになった。シンザーに連れられて、ウィズモアは『こむぎのキッチン』というパン屋に入った。


ここは普通のパンだけでなく、猫の形に焼かれた様々なパンが売りだ。猫パンのモデルになった猫は、このパン屋で飼われている茶トラ猫のこむぎちゃん。いつも店の前に設けられた樽椅子の上に座り、売り子をしている。それもあって、『こむぎのキッチン』は人気のパン屋さんだ。


シンザーはクリームパンと黒糖パンを、ウィズモアはクリームパンと苺ジャムパンを選び、席についた。黒糖パンはありふれたコッペパンだが、クリームパンと苺ジャムパンは『こむぎのキッチン』の売りの猫パンで、どちらも可愛い。


「可愛いネッコだよね…こんなに可愛いと食べれないよ」

クリームパンと苺ジャムパンを見つめながら、ウィズモアはこれ以上ないほどに満ち足りた表情を浮かべている。


「そうだな~」

一方でシンザーは、猫パンをパクパクと食べている。既にシンザーが購入した猫パンは、無惨な姿を晒していた。


「もうちょっとさあ!あるでしょ!!」

「でも、パンだし…美味しいぜ、ここの猫パン」

この惨状にウィズモアは涙目で抗議するが、シンザーはケラケラと笑いながら美味しそうに猫パンを食べた。


それを言われると、ウィズモアはぐうの音も出ない。ウィズモアもお腹は空いているし、何よりもこの後にノガラと会う約束がある。いつまでも猫パンを眺めている訳にはいかない。猫パンに謝りながら、ウィズモアは美味しそうにそれをいただいた。


「ここのようだな…ノガラのアトリエは」

昼食を済ませると、シンザーはランドルフに書いてもらった地図を頼りにノガラのアトリエを捜し当てた。


「魔性の女と言われているんだよ」

「魔性の女?」

芸術の分野に詳しいウィズモアからの思わぬ情報に、シンザーは思わず聞き返してしまった。


「ん…彼女もテネラニ・キリマベラジと同様に、恋愛には奔放なタイプなの。これまでに画壇の重鎮から気鋭の新人まで、多くの相手と浮名を流してきたのよ」

「なるほどね」

あのランドルフの従姉だからな…ノガラが魔性の女という二つ名で呼ばれていることに、たいして驚きはない。


「なんかこう…緊張してくるな」

間違いなくノガラはいい女だ。あのランドルフの後輩であるシンザーは、それを確信した。


「もしかして…ワクワクしてない?」

「してませんよ」

ジト目でシンザーの内心を推し量ってきたウィズモアに対して、シンザーはなぜか丁寧な言葉でこれを否定した。


シンザーが玄関の呼び鈴を鳴らすと、別の部屋で鈴が軽やかに鳴る音が聞こえた。こういう所にも魔法具を使っている辺りは、シックな家に相応しいな…ノガラが出てくるのを待ちながら、シンザーは値踏みするように玄関を見つめた。


「お待ちしてました」

玄関のドアが開き、シックな家に相応しいエレガントな女性が、少し鼻にかかった声で出迎えてくれた。


ランドルフから聞いた話によると、ここはノガラの住居兼アトリエで、ノガラはここで絵を描きながら1人で暮らしている。女性は事前にランドルフから見せてもらった写実画と瓜二つ。だから、この女性は間違いなくノガラだ。


ノガラは体のラインがはっきりと分かる黒いワンピースを着ていた。しかもただのワンピースではなく、所々で肌が透けて見えるワンピースだ。


出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。それはランドルフの姉リアルナを彷彿とさせるようなナイスバディだ。足元から胸元、そして顔。シンザーは上から下までじっくりとノガラの美しさを堪能した。


「…失礼します」

美しいものに罪はない。だから、これは仕方がないことだ。妙な間が空いたことに対して、心の中でそのような言い訳をしながらシンザーは一礼した。


「失礼します」

冷たい目でシンザーを一瞥したウィズモアも、ノガラの胸元に釘付けになっていた。


どうやったらあんなに大きくなるんだろう…彼我の差にショックを受けてしまうが、私は成長期だから大丈夫。ウィズモアは自分にそう言い聞かせながら一礼した。


「どうぞ」

下心満載の眼差しと、嫉妬と羨望の入り交じった眼差しを向けられるのはいつものこと。ノガラは満更でもない様子で2人に中に入るように促した。


或いはこの後の展開を有利にするために、このワンピースを選んだのかもしれない。これまでにその色気にほだされた男は数多くいただろう。その経験則から、ノガラがこの手を選んだのは十分に理解できる。俺には通用しないけどな…シンザーはそう思いながら、ノガラの住居兼アトリエに入っていった。

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