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ショウスケが二人

この章でおわりです


 七、




 「 ふ 、 」


 ショウスケの指が、ひやりとした刃についた。だが、痛みもなにもなく、なにもおこらない。



「おう、無事にれられたか」

 

 坊主はわかっていたようにほほえむと、袖で刃をぬぐい小刀こがたなをしまい、つづいて二人の足元の数珠をつかむと念仏のようなものをつぶやきながら上へとひきあげた。



「じょ、ジョウカイさま?あ、あの、これは、どういう・・・・」

 妻が、くちをあけて二人の夫をみくらべた。



 うむ、と太い腕をくんだ坊主がこまったようにまゆをよせる。

「 これは、ふたりともショウスケどのだ。 まあ、バケモノでないかというと、すこしばかりそうもいいきれないが」



「そ、そんな!ばかな!」

「そうでございますよ!」

 ショウスケ二人のこえがそろった。

 先に刃物にふれたショウスケがまえにでる。

「わたくしは、こちらの者とちがって、うまれたところも日も覚えております。この家に越した日ももちろん、祝言の日まで覚えております」

 こぶしをふって、妻にうなずいてみせる。

「そ、そうでございますよ。だって、ジョウカイさまもこのひとが家のまえでむかえてくれたとき、いたじゃありませんか?あそこで、はっきりとこの人が本物だって、」


「わしが、本物だともうしたか?」


「・・・・え?」


「本物だとは言うてはおらぬ。だがあのとき、『旦那』としての役目をしっかりとつとめていたので、なにもいわなかったのだ」


 ジョウカイはしっかりと《覚えている》ほうのショウスケによると、にこりとわらいかけた。


「このごろ、酒を飲んで帰るようになったか?」


「はい?ええ、まあ、集まりにでて、そういう席で顔をおぼえられると、付き合いがひろがりますので」


「ついでに、あそびもおぼえたか?」


「えっ?いや、それは、まあ、すこしばかり」


「仕事はどうだ?」


「はい。このごろはずいぶんとやる気がみとめられ、ほめられることも増えました」


「人になってゆくのは楽しいか?」


「 ええ。 ―― この先もっと、働いて、妻といっしょに楽しく暮らしてゆければよいかと」


「思い出したか?」


「はい。 ・・・わたくしが、ショウスケであるのは、こちらのショウスケさんの『中身』をうばいとっているからです。 ―― バケモノは、わたくしでございました・・・」


 がっくりととなりのじぶんがうなだれたとき、声をあげたのは妻だった。


「いやだよ!」

 いうなりうなだれたショウスケにかけより手をとると、「これがあたしの旦那だよ」とはっきり告げた。





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