むかいあう
六、
「 お待ちしておりました 」
そういってむかえた男がこちらと同じ顔をしていることの気味悪さよりも、座布団にすわり堂々とむかえた姿がやけに立派だと、ショウスケはおもった。
これがすべて、バケモノが憑りついた妻がしかけた罠なのだろうか?
ショウスケが身をかくしていた前に立つ坊主がわきにより、しっかりとむきあうことになる。
「ほお、これはたしかにそっくりだ」
《座布団にすわるショウスケ》がこちらをみあげ、あらためておどろいたような声を上げた。
「じぶんとおなじ『影』があらわれるなんて、《不思議ばなし》でしかきいたことはなかったが、お坊さま、こういうモノがあらわれるということは、わたくしは死期がすぐそこということなのでございますか?」
《座っているショウスケ》は、ショウスケの後ろに立つ坊主にたずねる。
ショウスケも坊主をふりむき、こたえをまった。
「ふうむ」坊主はおもしろそうにあごをなで、ふたりのショウスケをみくらべる。
「わしが知っておるのは、狐狸が化けたはなしのほうが多いがな。まあ、『影』として、他人がまちなかでみかけたり、疎遠だったものにあいさつに来た、などというものは、『死』にかんすることがあるらしいが、このお二人はすこし違うようだ」
「 ちょ、ちょっとお待ちください。あの、あそこに座るわたくしは、ほら、妻のバケモノの、」
ショウスケは坊主が思い出すように、あわてて妻をゆびさした。
すると、さされた妻がかみつきそうないきおいで「バケモノはそっちじゃないか!」とさけぶ。