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幽霊パーティー、初の戦い

《幽霊パーティー、初の戦い》


目が覚めると、石畳の天井が見えた。

冷えた床に手を付き体を起こす。

周りは石畳の壁に囲まれていた。


「ここ……どこだ?」


目覚める前のことを思い出そうとすると、頭に割れるように痛みが走った。少し呻き声をあげると、走馬灯のように事が思い起こされる。

家族とハワイへの旅行中、飛行機が異常を起こし、そして───急降下。


「父さんはどこだ…母さんや兄さんも」


周りを見渡すも人影は見えない。俺だけ生き残ったのか…別のところで生き残ってるのか、定かではないが、動かないことには始まらない。


「夢…にしてはリアルすぎるよな…

誰かいませんか〜!」


正面にあった通路に沿い進みながら声を出すが反応なく、時折カタカタと不気味な音が聞こえるのみだった。周りをしっかりと見ると、全面石畳の天井、壁、床。ところどころに動物の皮?のようなものが落ちていた。明かりのようなものは無いが、石畳が絶えることなく薄暗く光っていた。


「化け物でもなんでもいいから誰か返事してくれ〜!」


誰の声も聞こえず、自分の居場所がわかる試しもなく、痺れを切らし叫ぶと、人影が近づいてくるのが見えた。


「よかった!すみません〜!急にこんなとこに……いや、本当に、」

「何でも良かった訳じゃないんだけど……」


現れたのはボロボロの肩当を付けた骨、人体模型のような骨であった。


「ほ、骨ぇ!?一体どういうことだ…!?」


頭が回らず混乱していると、最近読んだ漫画のモンスターを思い出した。


「スケルトンってやつ……か?」


不気味に頭をカタカタと揺らすスケルトンに少し恐怖を覚えながらも、後ろを向き走り出した。


「なんだろうと逃げるしかないだろ!」


しかし、スケルトンは全力疾走で某世界記録保持者を思わせる様なフォームで突っ込んできた。

大体アンデッド系は遅いだろと悲痛な声を叫びながら更に速度を早める。こんな時に冷静な兄ならどうするだろうかと、考えを巡らせるが何も思いつかない。真似事は所詮本物では無い。冷静にはなれなかった。


「誰か助けてくれ〜!」


「助けてやれたらなぁ〜……」


「へっ!?」


突如した男の声に裏返った声で返事をしてしまった。


「う〜ん……ん?俺の声聞こえてんの?」


「そうだよ!誰だお前!てか助けて!」


「まじかぁ……じゃあちょっと魔力貰っていいか?」


「なんでもいいから!早く!」


そう言うと、任せろと声が聞こえた。その途端体の力が抜け、床にペタンと座り込んでしまった。力が入らない。


「ちょっ、なんで……」


迫ってくるスケルトンを見つめることしか出来ず、震える手を抑え死を感じていた。


「助けてくれるんじゃねぇのかよ!」


「ああ、もちろんだ」


突如として煙のような青い空気と共に男が現れ、背中からスラッと抜いた剣でスケルトンを首元から腰にかけて真っ二つにした。

ガシャガシャと崩れる音を立てスケルトンを背景に男がこちらを向く。


「大丈夫か?」


青髭を生やしたおっさんだったが、その瞬間だけはダンディなイケおじに見えた。こんな化け物を一発で切り伏せたおっさんは何者なんだ…?


「は、はい……」


「俺が見えるし、武器も持ってねぇし、不思議な格好だし、お前一体何もんだ?」


「おじさんこそ誰なんですか?剣なんか持って、西洋っぽい服と鎧までつけて」


「せいよう?なんだそりゃ。俺はアルダン・トーマス。双頭鷲の遺産のギルド員だ。ランクは…えっと…ほれ」


おじさんは腰のベルトについたレッグバックから金属製の札のようなものを取りだした。


「黒のD+だ。兄ちゃんも冒険者なら分かるだろ?」


「いや、冒険者じゃないしわかんないんですけど…」


「あぁ!?どういうことだ?冒険者じゃねぇのにこんなところに来たってのか」


意味がわからないとおじさんは頭を抱えていた。

しかし今まで何故思わなかったのか。

夢だと無意識に思っていたのか、1つの事実が頭に浮かぶ。


「え、いや、ちょっと待て!」


「なんだよ大声出して、また来るぞあいつらが」


スケルトンにギルド、剣が当たり前、まさか……


「トーマスさん、ここは……なんて言う国ですか?」


「はぁ?わざわざ聞くことか?聖国院の奴らでも知ってるぞ」


その口から日本という言葉が出てくるのを期待していたが、現実はあまりに残酷だった。


「ここはルーメサナ、オーロット大陸の国だろ」


どちらも聞いたことがない、まさかのまさかだ。

異世界転移……ってやつなのか…いや、夢だと願いたい。


「…異世界転移…って、よくあることですか」


「ん?あんた異世界からきたのか!道理で違和感しか無かったわけだ。」


「家族も…一緒に来てるはず…なんです」


「う〜ん…そこんとこはわかんねぇな、なんせ情報がねぇからなぁ、100年に1人とかは言われてるが」


家族がいないという現実が徐々に突きつけられる。この状況で考えたくもないが、否が応にも頭に浮かぶ、自分だけが生き残ったと。


「おい…兄ちゃん大丈夫か?息が荒いぞ、おい、おい!」


視界が狭い、上手く呼吸が出来ない。

涙があふれる。


「兄ちゃん!あぁくっそ!俺の体も…仕方ねぇ!」


頬に痛みが走る。鈍痛が響いている。

ビンタ…されたのか、この人に


「あんたは大丈夫だ!絶対に!俺が守る!

あんたが意識を失えば俺も消える!

頑張ってくれ!」


…そうだ、ここで死ぬ訳にはいかない。

まだ希望はある、家族だってこっちに来てるかもしれない。捜すんだ。


「もう…大丈夫です」


立ち上がり、トーマスの方を向く。その目には決意の色が浮かんでいた。


「ここを、出ましょう」


「ああ、もちろんだ。よかった、あんたが倒れなくて。」


とりあえず通路に沿いながら先へと進んでいく。出口の方に進んでいるかは分からないが歩くしかないだろう。


「ところで、トーマス…さんはなんでここに?」


「仲間と一緒に稼ぎに来たんだけどよぉ…まぁ一言で言うと"死んじまって"さ」


「死ん…はぁ!?」


確かに目の前にいるのは人間だ、亡霊の類では無いはず。でもよく見ると半透明だし青い空気を纏っている。


「そこにあんたが来て急に実体化してもらったって話だよ」


「あの魔力貰っていいか?って言ったやつですかね」


「そうそう、この世界はなんでも魔力使えばどうにかなるからな、」


でも自分が死者を甦らせる…一時的にだろうが、ことが出来たと仮定してもそれ以外が分からないとどうしようもない。


「なんだろう、ステータスオープン!みたいなのはないんですか?自分に何が出来るのかさっぱりなので」


「ステータス…あぁ、アビリティのことか?出来るぞ、開こうと思いながら軽く手を上に振ってみろ」


言われた通りに頭の中で「アビリティ開け!」と思いながら腕を前にだし、軽く手首を支店にてを振り上げてみる。


「おぉ…これがアビリティってやつですか?」


「その反応するってことはできてるんだろうな。

他人のアビリティは見ることできねぇからよ。覚えとけ」


出てきたウィンドウのようなものの中に幾らかの選択肢があり、ステータス、スキル、派生スキルなど、項目が何個かあった。


「自分の力みたいならステータスとスキルが1番手っ取り早いな」


早速ステータスから開いてみると、Lv、魔力、職業、称号と4つの項目があり、それぞれ4Lv、53/113、無職、【転生者】【亡霊の代弁者】【モンスタースレイヤー】となっており、まるでゲームの様だった。


「この称号ってのは?」


「来たばかりなのに持ってんのか、タップしてみろ」


すると説明が追加で出てきた。


【転生者】[転生者に与えられる称号。取得経験値15%上昇]

【亡霊の代弁者】[死者掌握を使用したものに与えられる称号。魔力5%上昇]

【モンスタースレイヤー】[初めてモンスターを倒したものに与えられる称号。全モンスターに対する恐怖耐性小上昇]


「おぉ…意外と優遇されている?転生者特典ってやつか」


上昇する数値が少ないということはこれから生活していけば増える可能性は十二分にあるということだろう。


「何個持ってんだ?」


「3個ですね」


「この世界に来て1時間足らずじゃ十分だろう。

俺たちが魔力以外を強化するには大体筋トレかスキルかその称号だからな、大事にしとけ」


「分かりました」


次はスキルだろう。と思い、スキルのところをタップしてみた。すると2つのスキルがでてきた。【亡霊の誓約】と【裏世界】の2つだ。

それぞれをタップしてみると同じように吹き出しのように説明がでてきた。


【亡霊の誓約】[亡霊の声を聞き、誓約を結ぶことで協力してもらうことが出来る。誓約を結ぶには"条件"がある。"詳細"]

【裏世界】[自身とスキル、【亡霊の誓約】で誓約した亡霊のみ入ることが出来る異空間。"詳細"]


【亡霊の誓約】はわかる。現在進行形でしているこれのことだろう。しかし【裏世界】が何かが分からない。まるで亡霊専用のセーフハウスのようだ。異空間…ちょっと興奮する。


「トーマスさん、【裏世界】ってスキルがあったんですけど…」


「裏世界?そんなスキル聞いたことがないな。

試してもいいがここではやめとけ。何が起きるか分からないからな。」


裏世界!と叫んで発動しそうになったところを抑えて次の欄を見ようとする。


「おい、あんまり止まってるとまたアイツらが来るぞ。確認は出てからだ。」


確かにそうだと、また歩き出した。自然とウィンドウは消え、動いたら消えるのだと自己解決した。

道中、何体かのスケルトンを倒して行くと、レベルが上がっていった。途中でとあるスキルを入手したがこれまた後でという話になり先へ進んでいった。


「う〜ん…」


「どうしたんですか?」


トーマスは先程から手をグーパーさせたり様々なところを伸ばしたりと様子が変であった。


「いやよぉ…なんかイマイチ体の調子が良くなくてよ。俺のスキルが使えないんだ。あんたに魔力貰ったから使えるはずなんだが…」


考えてみても手に入れたばかりのスキルについて知る訳もなく、お互い頭を悩ませていた。


「分かりませんね…とりあえず、スケルトンは倒せてますし、一気に出てこない限り大丈夫じゃないで…す…か」


「そうだな…ん?どうした?」


「あ…あれ…」


指さした先には一体の厚着をしたスケルトンがおり、その周りにはなにもつけていないスケルトンが7、8体ほど追従していた。


「厄介だな…スケルトンプリーストだ。普通のスケルトンを召喚してくる。」


「倒せそうですか?」


トーマスは背中から剣を抜きはするが、険しい表情を浮かべていた。


「いつもならまだしも…さっきも言った通り本調子じゃないんだ。一体一体なら倒せるが…ここはいったん隠れよう」


逃げようかと後ずさりをすると、パキっと音がし、骨を踏んでしまった。この石畳の密室では音がよく響く。


「やっば…」


遠くにいるスケルトン達が一斉にこちらを向き、走り込んできた。


「デジャブなんですけどぉ!」


「逃げるぞ!」


走り始めると、すぐ右側に別の部屋があるのに気づいてそこに駆け込んだ。

壁沿いにあった本棚を倒し、入口を塞ぐ。

すると間も無く本棚がドンドンと叩かれ始め、

スケルトン達がすぐそこにいるのだとわかった。


「どうする!?こんなボロの本棚、長くは持たねぇぞ!」


「どうするって言ったって…あっ!新しく手に入ったスキル!【魔力譲渡】!」


「それはなんだ!」


本棚に向けて剣を構えるトーマスと背中を合わせながらウィンドウを開き、スキルの詳細をみる。


【魔力譲渡】[誓約をあ結んだ亡霊に自身の魔力を譲渡する。譲渡された亡霊は譲渡された分の魔力だけ自由に魔力を使用することが出来る。"詳細"]


「──らしいです!」


「つまりあんたに貰った魔力は俺の実体化に使われてたからスキルは使えなかったってことか!

早速だ!手をかざして頭で唱えてみろ!」


言われた通りにトーマスさんに手をかざし、頭で唱えてみる。


──魔力譲渡──


──使用不可──


「え?使用不可…って…」


「はぁ?なんでだ!?」


「なんで…もしかして、トーマスさんに魔力を渡しただけだから誓約…は出来ていない?」


「ならそっちのスキルを先に試してみろ!」


言われた通りに【亡霊の誓約】を頭で唱え、使用してみる。


──亡霊の誓約──


──対象からの承認待機──


「うぉっ!なんかウィンドウが出てきたぞ!

なになに…[【亡霊の誓約】が使用されました。誓約を結びますか? "承認" "拒否"]」


「それ!承認してくれればできるっぽい!」


「あ〜まぁ悪いことにはならねぇだろ!承認!」


トーマスは承認の部分をタップした。すると、次はこちらにウィンドウが出現した。


──承認を確認しました──


どうやら、使用条件の1つは、相手の承諾だったようだ。こちらも強制的に誓約を結びたくは無い。そして、トーマスの頭の上に天使の輪のようなヘイローが出現した。鈍く光る鉄色で、円形の輪の四方が重く尖っていた。


「これなんだ…まぁいい!さっきのやつ!早く!」


ドンドンと叩く音はドンドン強くなっていき、メキメキという音は限界を悟らせた。

言われた通りに再び唱えた。


──魔力譲渡──


──譲渡する魔力を指定し「とりあえずできるだけ!」


手をかざしたところから魔法陣のようなものが出て来ると同時にどっと体の力が抜けた。

ステータスを見てみると、魔力が1/130となっていた。トーマスさんを実体化かした時もこの様に魔力を持っていかれて力が抜けたのだろう。

さっきは70ほどあったから、半分以上持っていかれたようだ。


「おぉ…魔力が戻ってきた気がする…

後は任せろ!」


トーマスさんは本棚を足で蹴破り、通路に出ると、吹っ飛ばされた大量のスケルトンに向けて剣を構えた。


──「加速」「鋭化」──


足元と剣の鍔の上に魔法陣が出てきたかと思えば、部屋から見えるトーマスさんの姿が消えた。

急いでズルズルと体を引きずりながら部屋から出てみると、ものすごい速度でスケルトン達に突っ込んで行っていた。


「おおお!!」


雄叫びを上げながら剣という金属の塊を持っているとは思えない速度で次々とスケルトンを切り伏せていっていた。いける!と思ったがスケルトンプリーストが魔法陣から黒い魔法の玉の様なものを形成していた。


「危な──え?」


──「瞬踏」──


その瞬間、魔法の玉がスケルトンプリーストから放たれる前にトーマスは一歩で10mはあろう距離を詰め、魔法の玉ごとプリーストを叩き切った。その勢いのままトーマスは一回転し、着地する。


「ふぅ…感覚は訛ってないな」


刀身についた骨の屑を払い、背中の鞘へ剣を戻した。


「怪我はなかった…か…何してんだ」


「ほんとにありがとう…てか凄すぎるなにあれ」


トーマスの前に正座し全力で感謝を伝えつつも、あまりの出来事に感動と興味を隠せず、同時に言ってしまった。


「あ〜えっと、確かに異世界人のおまえにとっては不思議なもんばかりだよな、ひとつずつ説明してやるから。」


トーマスは照れくさそうに少しパーマのかかった髪をくしゃくしゃとし、こちらと目を合わせずに行くぞと手を動かした。


「えっとなぁ、【加速】と【鋭化】が共通スキル、【剛踏】が固有スキルって呼ばれるやつだ。」


「それぞれ何が違うんですか?」


「共通スキルが、家系や種族、派生スキルに関わらず習得できるスキルだ。だからさっきのふたつはお前でも使えるぞ」


「ほんとですか!今度教えて貰えますか?」


「ああ、いいぞ、次は固有スキル。これは共通スキルの逆、家系や種族、派生スキルにより習得の不可が別れるスキルのことだ。つまり、【瞬踏】は派生によってはお前には習得不可ってことだ。」


「なるほど…前から思ってたんですけど、派生スキルって?」


「ああ、それは言うなれば魔法の進化だ。そこは難しいからここから出れたら教えてやるよ。今はtearによってわけられる魔法の進化や派生って覚えとけばいい」


トーマスさんは意外と説明が上手いのだと少し驚いた。


「トーマスさんの派生スキルは?」


「俺か?俺の派生スキルは【瞬昂】。瞬間的な肉体強化を主体とする派生スキルだ。最初は【速発】だったかな?」


「俺の亡霊魔法も進化するんですかね?」


「そりゃするさ。ワクワクするよな、どういう風に進化するか」


そのまま歩き続けていると、目の前に扉が見えた。


「お、出口じゃねぇか?随分ボロくなったな」


鉄でできたような赤錆色の扉はボロボロで、少し指でなぞるだけで赤黒くこびり付いた。


「やっと出れますね、トーマスは久しぶりの外じゃないですか?」


「何年ぶりだろうな、いつ亡霊になったかもわかんねぇし」


「陽の光浴びてギャッ!って消えないでくださいよ?」


すこし笑みを浮かべながらトーマスをからかう。

だいぶこの人と話すのは慣れてきた。


「馬鹿言え、アンデットじゃねぇんだよ」


扉を2人で開けると、そこには青い空、緑の草木、赤い小鳥。色鮮やかな世界が広がっていた。

日本ではあまり見ないほどの自然さに改めて異世界に来たのだと実感する。

おぉ…と世界の綺麗さに感心していると、トーマスが全く喋らなくなったことに気づいた。


「どうしたんですか?まさかほんとに陽の光に…」


トーマスは空を眺めながら呆然と涙を流していた。無意識に体が反応してしまったのだろう。


「あ、いや!なんでもねぇ!!とりあえず近くの村に行くぞ!」


気を取り直したトーマスは涙を拭い、恥ずかしそうな顔持ちをしながら声を上げる。


「俺の記憶じゃレストンって村があったはずだ」


「わかったよ。それじゃあ道なりに…」


「どうした?立ち止まって」


進もうとした森の中の道の先に若そうな男女二人がいるのに気づいた。2人とも皮装備で、いかにも初心者って感じだ。


「こんにちは…」


通り過ぎようとした2人をトーマスが止めた。


「ちょっと待て、そんな格好で初心者が行くつもりか?補助冒険者は?」


2人は気まずそうに目を逸らすと、言い訳を考えているのか、口篭り始めた。


「はぁ…そんな簡単に行く場所じゃねえんだぞ。

1回帰れ。」


「そ、そんなこと言うならあなただって…!」


男の方が指さしたのは俺で、気弱そうな女は男の後ろで目を泳がせながらずっと黙っている。


「そんな軽装で…しかも武器持たずに入ってたじゃないですか!」


あ〜確かに…来ている服は少しオーバーサイズの白シャツにダボッとしたデニムパンツ。なんなら少し汚れてさらにボロく見える。


「あ〜こいつは…俺が新人研修してんだ。ほらわかったか、言い訳すんじゃねぇやめとけ」


トーマスさんなりの善意だろうか。確かにスケルトンならまだしもさっきのプリーストに襲われたら一溜りもないだろう。


「…」


2人は少し黙りこくってから小声で話していた。


「分かりました、一旦帰ります。」


「わかればいいんだ──」


「そこまで言うならおじさんが補助してくれませんか?新人研修するくらいだから強いんでしょう?」


やられた、善意に漬け込んできやがったこいつら。さぁどうするトーマスさん


「あ〜…わかったよ、やってやるから。」


2人はパァッと明るい顔になり、分かりましたと元気に返事をした。

あの、一応誓約主の俺に聞かなくていいんですかねぇ…


「さ、行くぞ。あいつらについて行けば迷わないだろ。」


「分かりました、行きましょう。てか何勝手に決めてるんですか」


「しょうがないだろ」


村に戻る2人にそのままついて行った。


こんにちは、またはこんばんは、萎気 雨と言います。この作品を読んでくださってありがとうございます。私自身が現在学生なので投稿ペースは遅いですが、また読んでいただけると幸いです。改めて、よろしくお願い致します。そして主人公の名前は橘悠真です!何故かすっかり主人公の名前が頭から抜けていて…すみません!

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