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23 妨害

 セイラたちはその後もポリウスの各地を周り、瘴気の強い場所を重点的に訪れて浄化を行なった。

 瘴気の少ない街で休息を取り、瘴気の強い場所の浄化を行う。それを何度か繰り返し、必要最低限の浄化を済ませて、セイラたちがいよいよレインダムへ帰る日になった。


 セイラとダリオスは馬車に乗り、レインダムへ向かっている。馬車の少し前をクレアは単身で馬を走らせていた。


「セイラ、よく頑張ったな。これでレインダムへ帰ることができる。あとは妹君の聖女の力が戻っていることを願おう」

「そうですね。私ができることはここまでです……あとはルシアに任せます」


(あの後、王城へ行くこともなくこのままレインダムへ帰ってしまうけれど……あんなことがあった以上、お父様にもルシアにも会いたいとは思えないわ)


 セイラが少し悲しげに微笑みながらそう言うと、むかえに座っているダリオスは、セイラの両手を自分の手で優しく包みこむ。


「セイラはよくやったよ、本当にすごい。行く先々で聖女セイラがポリウスの国民から愛されていることを知って、誇らしかった。そんなセイラをレインダムへ連れて行ってしまうのは、ポリウスの国民に申し訳ない気もしてしまうが……だが、レインダムにとってもセイラは大切な聖女だ。それに、何よりも俺が君を大切に思っている。何度だって言おう、君を手放したくない」


 ダリオスはセイラの両手を少しだけ強く握りしめながら、じっとセイラの瞳を見つめる。エメラルド色の瞳の奥底には熱い思いがほとばしっているかのようだ。


「ダリオス様……ありがとうございます。私の気持ちも変わることなく、ずっとダリオス様のそばにいたいと思っています」

「そうか……よかった」


 セイラの言葉を聞いて、ダリオスはほっとしたように微笑む。そんなダリオスの微笑みにセイラも優しく微笑み返したその時、馬車が急に停止して、窓がコンコンと叩かれた。


「どうした?」


 馬車のカーテンを開けると、窓の外には馬に乗ったクレアがいる。窓を少し開けて尋ねると、クレアは真剣な顔で口を開いた。


「前方に、ポリウス国の紋章が入った馬車が道を塞ぐようにして止まっています。その後ろにはポリウスの軍がおり、馬車の前にはセイラ様の妹君の姿が」

「……ルシアが!?」

「一体どういうつもりだ……?」


 セイラが驚いて声を上げると、ダリオスは顔をしかめて呟いた。


「どうなさいますか?」

「無理やり押し通るわけにもいかないだろう。近づいて、どうしてそこにいるのか聞くしかない」


 ダリオスがそう言うと、クレアは小さく頷いて馬を歩かせる。クレアの先導に続いて、馬車も動き出した。


(どうしてルシアがいるの……?まさか、私がレインダムへ帰るのを妨害しようとしている?)


 どこまでしつこいのだろう。王城で父親がダリオスたちに見逃してもらったことを忘れたのだろうか?セイラがダリオスに視線を向けると、ダリオスはそれに気付いて神妙な顔をした。


「セイラ、こんなことは言いたくないが、妹君はまだしつこくセイラを狙っているのかもしれない。手荒なことはしたくないが、妹君の出方によってはあまり良い対応はできないかもしれない。先に謝っておく」


 苦々しくそう言うダリオスに、セイラは胸が押しつぶされるような思いだ。


(王城でダリオス様たちの力を見ているはずなのに、どうして……ルシアの考えていることが全くわからないわ)


「ダリオス様が謝ることではありません。むしろ、私のほうこそ謝らなければ……ルシアが一体どういうつもりなのかわかりませんが、きっとまた失礼なことをしてしまうかもしれません」

「君が気にすることじゃないし、謝ることじゃない。むしろ、君の身に何か起こってしまうことの方が心配だ。絶対に、俺の側から離れないでくれ」


 ダリオスがそう言うと、セイラはしっかりと頷いた。その時、また馬車が停止した。


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