第32話 冬は風呂
山の冬ってのは、当たり前だが寒い。
うちの場合は雪女が屋敷の周りに雪を降らせてるから特に寒い。
人魂と鬼火も共存してるから雪深くはないんだが、それでも雪が積もっていれば、それなり以上に冷える。
うちの寺がある地域は、冬の間に二度三度雪が降る程度だ。
だから俺達の山だけが、とんでもなく雪化粧をしている。
周りから見たら不自然極まりないと思うかもしれないが、その辺は化け狐が上手くやっている。
こいつは人を化かすのが得意だから、見えない側の人間には雪の無い普通の山に見えているのだろうし、以前馬鹿息子が来た時も、この家は来たばかりの時にあった山小屋に見えていた筈だ。
俺の周りに集まっているあやかしの中で最も力を持っているので、いつも偉そうである。
『実際に我は偉いのだ』
そういう事だそうで。
話が逸れたが、畑の様子を見たり荷物を取りに行ったりで、外に出ると体が芯から冷えてしまう。
そんな時は、熱い風呂に入って体を温めるのが一番だ。
人魂と鬼火が気合いを入れて湯を温めておいてくれるので、いつでも熱い風呂に入る事が出来る。
『日本酒を用意しろ』
「はいはい」
言われるまでもなく、そのつもりだよ。
風呂場でしか使う機会の無い徳利を二つ用意したら、日本酒を移して桶に載せる。
おちょこも用意したら、桶を持って脱衣所で服を脱ぎ浴室に入る。
家鳴の作った浴槽は木で出来たシンプルなものだが、自宅の風呂にしては広々としていて十分すぎるぐらい快適だ。
浴室はポツポツと火の玉が浮かんでいるので室温も温かい。
化け狐は俺の横からさっさと湯船に浸かった。
俺は湯船に桶を浮かべてから、垢舐めが風呂掃除をしている横で体を洗う。
「入るー」
最近は五子も風呂に入るようになった。
その時の気分によるから特に声は掛けないんだが、入りたい時は俺の後に続いて入って来る感じだな。
因みにちゃんちゃんこを脱いで裸になるのだが、幼女の裸を見ても特には何も感じない。
もう殆んど娘か孫みたいな感覚だ。
石鹸で五子の体を洗ってやって、頭からシャワーを掛ける。
五子はお返しに背伸びして俺の背中を洗ってくれる。
俺は悲しいかな、頭も石鹸で洗うだけなので洗髪が無くて楽ではある。
『遅いぞ馬鹿者』
わざわざ待っていなくても良かったのに、化け狐は俺が湯船に浸かるのを待っていたらしい。
五子がザブンと湯船に入って、泳いで遊ぶんでいるのを横目に、おちょこに酒を注いでクイっと一杯やる。
風呂で酒を飲む場合、普段よりも血中のアルコール濃度が上がりやすいから体にはあまりよろしくないんだが。
『倒れたら我が引き摺り出してやるから安心しろ』
って感じで安心して飲める訳だ。
甘口の日本酒が風呂で火照った体に染み渡る。
あやかしとまったり風呂に入って酒を飲む。
俺にとっては最高に贅沢な時間だ。
こちらの小説はアルファポリスで開催中の【第7回キャラ文芸大賞】にエントリーしています。
アルファポリスでは既に完結済みですので、是非そちらもご覧頂き、面白いと思ったら【投票】をお願いします。




