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愛でるホムンクルスちゃん

「──楽しそう」


 私がぷぅのいた培養槽のある部屋に何か残っていないかと、漁っていた。


 その間に、ぷぅはぴょんぴょんと自由気ままにそこら辺を跳ね回っている。

 ぷぅは、そのまるっこい体全体を使って跳ねているようだ。跳ねる直前に、その体表面がさざ波をうって、例の美しい色のグラデーションが出来ている。


 それはまるで、自分の体の使い方を覚えたてで、それを使うのが楽しくてたまらないといった様子。


「ぷぅも、私と一緒なのですか」

「ぷぅ?」

「……ふふ」


 ぴょんと私の頭の上に乗ってきたぷぅに、そんな事を聞いてみるも、どうもよくわかっていないようだ。


 ──ぷぅには少し、質問が難しかったようです。


「残っているのはこれだけです。あとは何だかよくわからないものばかりです」

「ぷぅぷぅ」


 そういって私は集めて来たものを床に並べる。一緒になってそれを覗き込んできたぷぅを、よしよしと撫でる。

 並んでいるのは、私の今着ているズタ袋に似た布切れ。それと、先ほどゴブリンが振り回していた鉄パイプ。


 それ以外にめぼしい物は見つからなかった。あっても、バラバラだったり、朽ちてしまったものばかり。


「あのゴブリン達みたいなのに、壊されてしまったみたいです。きっと、布切れには興味がなかったのでしょう。そういう意味ではあのパパの残したメッセージが無事だったのは、幸運だったのかもしれません」

「ぶーぶー」


 私の声に含まれる怒気に敏感に反応してなのか、ぷぅまで一緒に怒ってくれる。

 その様子にとたんにほっこりとした気分になりながら、私は布切れで手にいれたばかりのスキル・ラビッシュを包む。


「こう、ですね」


 知識を参照しながら、包んだ布切れ両端を結ぶようにして輪っか状にすると、首を通して背負ってみる。

 軽く、体を動かしてみる。


「大丈夫そうです」

「ぷぅぷぅ」


 ぷぅは、まるで似合っているよと言ってくれているようだ。


「これも、持っていきましょう」


 二本ある鉄パイプのうち、ましな方を手にすると軽く振り回してみる。

 拳を振るう時よりも、明らかに遠心力で体がぶれやすい。


 何度か振り回し、体を慣らしておく。


 最後にぷぅが入っていた培養槽を確認する。中の溶液は私が浸かっていた物と同じように見える。しかし、その中にはぷぅが入っていただけのようで、今はただ、溶液が静かな水面をたたえている。


「──行きましょう、ぷぅ」

「ぷぅぷぅ」


 頭の上に飛び乗ってきたぷぅを、少し場所を調整すると、私はその部屋をあとにした。



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