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委ねるホムンクルスちゃん

 透明なゴブリン達が、次々とこちらへと駆け寄って来ている気配。


 ──複数の存在が動いているせいか、上手く捉えきれませんっ


 半ば勘で横薙ぎに振るった鉄パイプに、幸運な事に手応えがある。

 透明化が解けて飛んでいくゴブリンの体。それが、ちょうど他の透明化したゴブリンに当たったのだろう。数匹がまとめて地面に倒れ込むようにして、姿が現れる。


 しかし、それをのんびりと観察している余裕はなかった。

 再び、ぷぅからの警告音。


 私はとっさに、振り切った鉄パイプを力任せに逆方向へと再び振る。

 急制動からの渾身の力を込めた動き。その酷使された背中の筋肉から、みちみちと音がしたような気がする。


「ぐぅっ……っはぁ!」


 先程とは異なり、手応えが悪い。透明ゴブリンに接近を許しすぎていたようだ。

 鉄パイプの手元辺りで捉えたゴブリンの透明化は解けるも、そのまま踏みとどまられてしまう。


 目が、合う。


 半分顔面が歪みながらも、にやりと笑うゴブリンの顔。

 まるで私の事を嗤っているかのようなその顔。


 気がつけばその鼻っ柱に渾身の頭突きをしていた。

 白目をむいて、後ろ向きに倒れていくゴブリン。その体が地面へとつく前に、光へと化して消えていく。


 私は一度大きく後ろへと跳ぶ。

 背後、ギリギリには崩れた階段の瓦礫の山。

 しかし一瞬でもいいので冷静さを取り戻す時間を確保したかったのだ。


 深呼吸。


 ──あのまま、怒りに任せて動いていたら負けていた気がします。


 冷静な自己分析で、スーと頭に登った血が引く。

 私は今一度、呼吸を整え、意識を音と空気の流れに集中させ、部屋を流れる空気の流れを捉えようと試みる。


 ──やはり、捉えきれません。まだまだ敵が多すぎます。


 その時だった。私の焦りを感じたのか、ぷぅがそっと後頭部から私の頭を包み込むように覆い被さってくる。


「ぷぅ、どうしたの!?」


 薄く薄くなったぷぅ。

 その体が、私の耳を覆ったかと思うと、首へ。

 肩へ。

 腕へ。

 最終的には目や口を除いてほぼ上半身全てがぷぅに覆われてしまう。


 私は最初の驚きはあったものの、その暖かさにいつの間にか安心感すら覚えていた。


 その安心感の中、耳へと直接送られてくる振動。そして両腕へと伝わってくる、力。


 それはぷぅからの合図。

 私はそのぷぅからの合図に身を委ねるようにして、鉄パイプを動かしていく。


 それは私だけで先程までやっていたようなどこか力任せにの物とは明らかに違っていた。

 最小限の動きで、鉄パイプの先端が次々と透明ゴブリン達を捉えていく。

 縦横無尽に動き回る鉄パイプ。


 気がつけば、ゴブリン達の透明化は全て解け、すぐにその体は光へと化して消えていく。


 その光の向こうで、アラクネの慟哭のような叫びが部屋を揺らした。

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