序
その昔、天地造神によりひとつの世界が創造された。
蒼月と白月、二つの月を持つ双月界。
蒼月より月影、雫となりてこぼれ落ち、そこより出でるは天地守護、環姫。
魔界より双月界へと溢れ出でる妖魔を沈めるため、環姫は双月界の天脈地脈の力・彩波動を凝縮させ共に戦う士を創りだした。
それすなわち六種の民の祖である。珠織人、竜人族、渦氷民、草人、天翼族、斎一民。
彼らとともに妖魔を率いる妖魔六将を倒し、世界各地の彩波動の要となる位置へ封じた。封じた巨石は世界の平和を願い守護石と名付けられ、それぞれの地に住む民にその守りを命じたのである。
環姫は後のことを使徒たちに委ね、自らは双月界とひとつになり永き眠りについたと語り継がれている。
創世の時から三千年が過ぎた今。
再び魔界と双月界に由縁する戦いが起こっていた。
決戦の地。
赤土の荒野を乾いた風が吹き抜ける。
風は距離を置いて対峙するふたりの間をすり抜けた。どちらも譲らぬ攻防の余韻に乱れた吐息がさらわれていく。
ひとりは黒髪金眼、竜人族の少年。もうひとりは金髪紫眼、珠織人の少女。
生まれも違えば今置かれている立場も違う。
だが、ふたりには共通しているものもある。
手にしているのは一振りの刀のみ。
互いの血と己の血にまみれ、気力だけで立っている。
それぞれが背負っているものの重み。
こうして相まみえる道しか選べなかった。
そして
次が、最後の一太刀となるであろうこと。
呼吸が整いつつあるふたりは、どちらからともなく刀を構える。
彼女の紫水晶の瞳に。
彼の陽光色の瞳に。
迷いはない。
互いの隙を伺うように、間合いは保ったまま。
――強く願えば叶うというのならば
身が沈んだ刹那、一息に互いが眼前に迫る。
――どのような形でもかまわない
渾身の力を乗せた刃を振るう。
――どうかあの日かわした約束が果たされんことを――
白刃が交差する刹那。発した白くまばゆい光
にふたりの姿は包まれ見えなくなった。
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